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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。
第百五幕 短期訓練と下山
しおりを挟むシャイネを連れてコーランの許へやって来た千夜。
その事にコーランやシャイネは何がしたいのか理解していなかった。
「どうしたのじゃ?」
「この村には決闘があるそうだな」
「シャイネから聞いたようじゃの」
「ああ、そこでだ。クロエとシャイネで決闘させようと思っている」
「え!」
「ほう……」
「あんたも次期長となる者はやる気のある者のほうが良いだろ?」
「じゃが、やる気があろうと皆をまとめられる力がなければならん」
「だろうな。だからシャイネとクロエを闘わせる」
「なるほどの」
「長、センヤどういう事だ? 私にも解るように説明してくれ!」
いったい何を話しているのか混乱しているシャイネには理解できなかった。
「シャイネ。つまりはクロエに決闘で勝てばお前は長に成れるという事だ」
「本当か!」
「絶対にとは言いきれない。他にもなりたい奴がいるかもしれないからな。だが、最有力候補のクロエを倒せば。可能性は大幅に上昇する」
「確かにそうだが、私では……」
「さっきも言っただろ。俺が強くしてやると」
「っ!」
目の前に立つ男。その男こそ、クロエを強くした張本人であり、また、力も強くなるための知識も備えた男なのだ。その事にシャイネは嬉しさと希望の光が心に差し込むようだった。
「もう一度訊く。強くなりたいか」
「勿論だ!」
「なら、下山するから一時間以内に準備をして洞窟の入り口に集合だ」
「一時間後に!」
「俺たちも暇ではない。今から始めても間に合うか微妙なところだ。だが、準備は必要だ。だからさっさとしてこい」
「わ、分かった!」
シャイネは大急ぎで自分の家に向かった。
「さてと、エリーゼたちに言いに行かないとな」
「センヤよ」
「なんだ?」
コーランにひき止められた千夜は振り返る。
「お主はそこまでして、クロエを欲するか?」
「欲するとは違うな。純粋にクロエが愛しているんだよ。クロエの全てが愛らしく、手離したくない。お前たちは村のためにクロエが必要なのかもしれないが、俺はクロエ一個人が好きで、手放したくないだけだ。ま、ただの我侭だ」
「そうか……」
千夜の言葉は言い方を変えれば傲慢だ。しかし、それは純粋に物としてではなく一人の男が愛する女を手離したくないという気持ちに他ならなかった。
「戻ったぞ」
「旦那様、お帰りなさい」
「遅かったですね」
「ああ、ちょっとコーランの所に行っていたからな」
「何か用があったの?」
「ああ。それでなんだが、少し用事が出来てな。遅くても1週間ほど村を離れることになった」
「え、いつから?」
「今すぐだ」
「「「え!?」」」
千夜の言葉に驚きを隠せないエリーゼたち。
「安心しろ。用事があるのは俺だけだ」
「え? なら、私たちは?」
「お前たちはここで留守番だ。クロエの事もあるしな」
「え! そんな!」
「安心しろ。別に戦いに行くわけではない」
「本当に?」
「ああ。本当だ」
「ミレーネ。今すぐにでも下山したいだろうがもうしばらく我慢してくれ」
「大丈夫です。それにクロエが心配ですから」
「そうか。エルザみんなの事は任せたぞ」
「はい。センヤさんも早く帰って来て下さい」
「わかった」
こうして千夜は洞窟入り口で待っていたシャイネと共に下山を開始した。
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