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第五章 依頼が無いので、呆気なく新婚旅行に行く事になりました。

第九十五幕 亜人と人間

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 ギルマスの部屋へとやって来た千夜たち。
 バルディの部屋とは違い綺麗に整頓された部屋で千夜たちはサシャと対面する形でソファーに座って出された紅茶を堪能していた。

「それで、話とは?」
「センヤは世間話などするつもりはないの?」
「そんな事はないが、真面目な話がある雰囲気だったのでな。こういうのは早めに終わらした方が楽と言うものだ」
「そう。なら、単刀直入に言うね。貴女たち、存在進化したでしょ」
 その言葉に千夜以外驚きの表情を浮かべる。もちろん千夜も内心驚いてはいた。

「どうしてそう思う?」
「忘れたの? ギルドカードは依頼の記録だけじゃなくて個人のステータスも記録されていること」
「「「「「あ」」」」」
 全員が完全に忘れていた。

「忘れていたようね」
「ああ。で、この事を知っているのはサシャだけか?」
「後はアリスよ。あの子がカードの更新をしたんだから。でも安心してこの事は他言無用にして貰ったから」
「それは助かる。が、何故他言無用にする」
「センヤだって気づいているでしょ。存在進化の凄さと恐ろしさを」
 睨み付けるような鋭い視線が千夜に突き付けられる。

「そうだな。だが何故、存在進化の事を知っている?」
「それはギルドマスターだからよ」
「どういうことだ?」
「ギルドマスターになれば機密事項を教えられるの国からね」
「国からだと。だが、冒険者ギルドは」
「ええそうよ。けして国とは関わらない。中立な組織。だけど、存在進化のような一瞬で強大な力を手に入れられる力などは教えられるの。貴女たちのような存在が現れた時に国に報告するためにね」
「で、俺たちはどうなるんだ」
「どうもならないわ。確かに聞いた話では監禁や監視をつけようとしたこともあったけどギルドカードには犯罪履歴も残るから必要ないって事になったわ」
「それもそうだろう。存在進化に辿り着ける奴はそうそう居ない。居たとしても冒険者になるか後は騎士ぐらいだからな」
「そう。でも一応これだけは聞かないといけないから訊くわね。貴女たちはこれからどうするの?」
「別に変わらないわ。旦那様と平穏に過ごせればそれで良い。お金が必要なら冒険者として活動するだけよ」
「私もエリーゼお姉さまと同じ意見です」
「我もじゃ」
「私もです」
 全員が同じだと平穏に自由に生きると答えた。

「そう。なら問題はないわ」
「1ついいか?」
「なに?」
「ギルドマスターは知っていると言ったな」
「ええ」
「ならバルディも知っているのか?」
「バルディって帝都でギルドマスターを勤めている?」
「そうだ」
「流石にそこまでは分からないわ。さっきギルドマスタだからと言ったけど。私は女王様に教えて貰ったの」
「通りで」
「そう言えば女王様とは昔の友人だったらしいわね?」
「ああ……」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
「そう」
 千夜はある事を考えていた。
 それは起こりうる可能性が高くはないが低くもない可能性。

(もしかしたら戦争が早くも始まるかもしれないな)
 千夜は危惧する。それは魔国との戦争ではなく、

(亜人と人間の戦争………)
 
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