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第二章 魔力無し転生者は仲間を探す
第九十三話 遺跡探索 ①
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11月19日月曜日。
グリードお手製の朝食を食べた俺たちフリーダムメンバーは皇宮に来ていた。
基本フリーダムのルールでは土日の通常依頼を受けることは無しと決めている。
平日も毎日受ける必要は無く、1週間の内に2つ以上の依頼をこなせば、OKと決めている。
ただし休日に通常依頼を受けるのが禁止なだけで指名依頼があれば受けるようにしている。勿論用事がある場合は断る事もあるが基本指名依頼は受けるようにしている。
んで、俺たちは11月18日日曜日の午後3時過ぎに、ボルキュス陛下から指名依頼が冒険者組合を通じての正式な指名依頼がなされたのだ。
メールに届いた指名依頼内容には遺跡探索と書かれていただけで、詳細までは書かれてはいなかった。ま、受けるかどうか曖昧な状況で詳細を伝えるわけがない。それが顔見知りであろうとだ。
ま、そんなわけで俺たちは、ボルキュス陛下からの指名依頼を受けて、詳細を聞くべくこうして皇宮に来たわけだ。
いつも通り警備のおっちゃんに冒険者免許書、通称ギルドカードを見せ身元を確認をして貰った俺たちは中へと入る。
んで、これまた予想通りに入ったホールではイオが待ち構えており、そんなイオに案内されて俺たちは数える程度ではあるけど、何度も来た事がある応接室に通された。
ここに来るのはヘレンの問題を解決した時以来だ。だからその後に加入したグリード、アリサ、クレイヴの3人はボルキュス陛下と対面するどころか皇宮に入るのだって初めてだ。
ま、ボルキュス陛下から指名依頼が来たって事を影光たちに話したら、俺とボルキュス陛下の仲を知っている、影光、アイン、ヘレンの3人はまたかと言う表情をしたに対して、グリード、アリサ、クレイヴの3人は相当驚いていたな。
「ジンの旦那って何者なんだ?」
「ただの冒険者だが?」
「ただの冒険者が皇帝陛下と知り合いなわけがない」
「クレイヴさんの言うとおりです!」
とグリードたち3人に言われてしまった。
いったいお前たちは俺を何者だと思ってるんだ?
そんな疑問が頭に浮かんだが、聞いたら心の硝子玉にヒビが入りそうだったので止めておいた。
そんなわけで俺たちはボルキュス陛下と対面する形でソファーに座る。
俺が真ん中に座り、その両脇にヘレンと影光が座っている。で、ソファーの後ろにアインたちが立つ。
「会う度に君は仲間を増やしていて驚かされるな」
と、思った事を世間話の代わりとして口にするボルキュス陛下。
「今のところこれ以上増やすつもりはないから安心しろ」
いや、今後と言うべきか。増やしたとしてもあと、1人か2人だろうしな。
だってそれ以上増やしたら住める部屋が無いし、俺にそれだけの仲間の面倒が見れるとも思えないからな。ま、優秀な秘書でも居れば別なんだろうが。
それよりもボルキュス陛下はあんな事を口にしているが全然驚いているようには見えない。どうせ部下たちに俺のギルドの事を監視させているんだから知っているだろ。ま、なんで監視させているのかは分からないけど。
「それで、遺跡探索依頼って事だったけどその内容は?」
「イオ、例の物を」
「畏まりました」
ボルキュス陛下の指示でイオが俺たちの前に1つのアタッシュケースが置かれた。
まさかこの中全てにお金が!
そんなありもしない期待を少しだけ抱きながら俺は開かれたアタッシュケースの中を見る。
そこには右腕、いや、骨のような物で出来た不気味な籠手が入っていた。やっぱりお金じゃないのか、残念。
「それでこの腕がどうかしたのか?生憎と俺たちにこんな物を見せても欲しいって言うような物好きは居ないぞ」
「別にこの籠手を売るつもりをあげるつもりもない」
やっぱりこれは籠手なのか。
そう思いながら良く見てみると、甲のあたりに大きな目玉のような物が取り付けられていた。ほんと何度見ても不気味だな。中二病なら喜んで装着しそうだが。
「これは半年前に偶然発見された遺跡の調査で軍の1人が命からがら持ち帰った物だ」
「命からがら?」
俺はボルキュス陛下が言った単語に思わず眉を潜めた。
「最初はBランクの冒険者パーティーに依頼を出し調べて貰ったんだが、誰1人とて帰ってこなかった。そこで遺跡調査隊を編成し30名の軍人を向かわせたのだが、帰ってきたのがこれを持った軍人ただ1人だったと言う訳だ。で、そのあまりの危険性から一時調査は中止していたんだが……」
ボルキュス陛下はそこで思い悩んだ声音を発した口を閉ざした。
まったくそんな中途半端な所で黙り込まないで欲しい。良いところで終わって次回予告をするドラマやアニメじゃあるまいし。
俺はボルキュス陛下が待ち焦がれているであろう言葉を口にする。
「何か問題でもあったのか?」
「その通りだ」
だろうな。
そうで無かったら全員が帰るのが面倒で遺跡で寛いでるって事になるからな。
「死んだはずの軍人や冒険者たち数名がゾンビになって近くの村に出現したと言う報告が最近になって入ってきた。そこでその原因を調べるために――」
「俺たちが指名されたってわけか。だけどフリーダムは出来たばかりの弱小ギルドだぞ。ギルドランクだってDランク。ギルドランクを無視したとしても、話を聞く限りその依頼はどう考えても最低でAランク。最悪SSランクだってありえる依頼だ。冒険者ランクで言えばその依頼を受けられるのは影光とクレイヴだけだぞ」
「ま、それを言われると返す言葉も無いが、どうにかAランクの依頼として貰ったから安心しろ」
いや、それは安心出来ないから。
てか、いったいどんな手を使ったのか気になるところだが教えてくれるはずもないので聞くつもりはないが、冒険者の安全を第一に考えるはずの冒険者組合の連中は何を考えてるんだ。
危険度が高いと言う事はそれだけ達成率が低く、死傷率が高いって事だろ。
普通はそう言うのを考えて決めるはずなのに、ボルキュス陛下の言い回しから考えて最初に結論付けたランクを落としてるようじゃねぇか。もしもこれで何かあったら抗議してやる!
「確かにそれだと俺たちは請けられるようにはなったが、グリードだけ受けられないことになる。遺跡の話を聞く限り、フリーダム全員で行くべきだ。1人だけ置いていくわけにはいかない」
「ジンさん……」
そんな俺の言葉にグリードが掠れた声で俺の名を呼ぶ。別に泣くような事じゃないだろ。
そう思いながら俺はボルキュス陛下から視線を逸らさない。
「ま、なら依頼は1週間後でどうだ?それまでにグリード君をBランクにまで昇格させられるだろ」
「そ、そんな無理です!」
「分かった」
「ジ、ジンさん!」
困惑したように俺の名を叫ぶ。
ま、仕方が無いよな。
「ならまた1週間後に来てくれたまえ」
「分かった」
こうして話を終えた俺たちは皇宮を後にして、ホームがある48区へと戻ってきた。
ホームのリビングで温かいコーヒーを飲む。うん、やっぱりこの季節は温かい飲み物に限るな。
「む、無理です!たった1週間でBランクにまで昇格するなんて!それにBランクに上がるには昇格試験だって合格しないといけないんですよ!」
「大丈夫だ。お前の実力なら余裕で勝てる。な?」
「はい、グリードの実力なら昇格試験に合格する確立は97.57%です」
「100%じゃないんですね……」
きっと仲間なら自信を持たせるために100%と言って欲しかったんだろうが、サイボーグであり傲慢なアインに気遣いを求めるだけ無駄だぞ。
「未来の事象において100%と0%は存在しません」
「そ、そうなんですか」
アインの言葉に投げやりの返事をする。
そう落ち込むな。
「さて、問題は1週間でBランクの昇格試験が受けられるようにしないといけないことだ。いや、余裕を持って5日でどうにかするべきだな」
「たった5日でBランクまでなんて無理です!」
「因みにCランクまであとどれぐらいで昇格出来そうなんだ?」
「あと130ポイントほどですけど」
「Bランクの昇格試験を獲得するのには400ポイント+130ポイントって事か。つまりは」
「530ポイントですね」
アインが答える。さすがはサイボーグ計算も一瞬だ。ま、今の計算は俺でも分かったけど。
「5日で530ポイントとなると、1度に受けられる依頼の数は3つまで。午前と午後で2回受けるとして1日に6つの依頼が受けることができるわけだ。つまり5日で30個の依頼が受けられる。となると1つあたりの依頼達成ポイントは」
「四捨五入して18ポイントですね」
またしてもアインが答える。今のだってすぐに分かったさ!ほ、本当だからな!
「18ポイントってたしかEランクの依頼だよな?」
「そうですね」
と、肯定の言葉が返って来る。
「なんだ簡単じゃねぇか。最低でもEランクの依頼を30個達成すればすぐだな」
雑魚な魔物を倒す依頼を30個クリアするだけなんて予想以上に楽な内容だな。
ましてやEランクの場合だ。Dランクでソロで請けられる依頼があれば請ける数だって減るわけだからな。
「そんな簡単じゃないですよ!そんな事僕には無理です!」
「おい、グリード!」
「な、なんですか?」
弱気なグリードにアリサがガンを飛ばすようにして迫る。
傍から見ればグリードがアリサを襲っているようにしか見えないが、本当はその逆だ。
「さっきから無理無理無理無理ってお前はそんな気持ちで冒険者になったのかよ!」
「そ、それは……」
「ジンの旦那もアインの姉御もお前なら出来るって言ってるじゃねぇかよ!そんな2人の言葉が信じられないのか?あ"ぁ?」
アリサさんやなんで喧嘩腰なんだ。
傍から見れば無謀な挑発なんだろう。なんせ身長が倍も違うし、見た目の問題もあるからな。
だけどグリードの性格を知る俺たちから言わせればあんまりグリードを虐めないで上げて欲しいと思ってしまう。
「し、信じられないわけじゃありません。アインさんもジンさんも僕なんかよりずっと強いし経験だってあります。だけど、討伐依頼となるとまずは魔物を探すところから始まるんです。僕は魔力感知が苦手で見つけるのに時間が掛かるはずです。それなのに1日6つの依頼を達成するなんて事僕には……」
「あ、それに関しては問題ないぞ?」
討伐系の依頼となると、まずするのは討伐対象となる魔物を探すことからだ。それで時間を無駄にするのは勿体ない。だから既に俺には素晴らしい案があるのである。
「え?」
「依頼を受けて倒すのはグリードだけど魔物を探すのなら俺たちが代わりにするから安心しろ!」
と、自信満々に親指を立てて伝える。
「それって……」
そんな俺の言葉に対してグリードの顔が徐々に青ざめて行く。
高ランクの仲間が代わりに探してくれるって分かったら普通は安堵するところじゃいか?
「お前はウォーハンマーを持って待ち構えているだけで良い。そこに俺たちが魔物を誘導するからお前はそれを倒すだけで良いって事だ」
「そ、それって本当に良いんですか!?」
「冒険者規則には自分以外の者が倒した魔物を自分が倒したように偽装して提出する事が禁止されているだけで、魔物を依頼を受けた人物の許へ誘導してはならないとは書いてありませんから大丈夫です」
グリードの疑問にアインが答える。
さすがはサイボーグ。冒険者組合の規則を全て暗記しているのか。いや、この場合は記録していると言うべきだな。
「なら早速今から依頼を受けるとするか。よし、全員でグリードの許へ魔物を誘導するぞ!」
『おう!』
「か、勘弁してください!」
そんなグリードの心の底からの叫び声を無視して俺たちは森へと向かった。
その間にグリードに依頼を選ばせる。
11月24日土曜日。
俺たちはフリーダムメンバーは冒険者組合の訓練所に来ていた。
そう今からグリードのBランク昇格試験が行われるからだ。
フリーダムは人数は少ないし、設立したばかりの弱小ギルドだが、ギルドに加入しているメンバー全員が有名人であるため、訓練所には沢山の冒険者たちが見学のために集まっていた。ま、見学なのかは怪しいけど。
「それにしても4日でBランク依頼を受けられるようにするなんて流石はジンの旦那だぜ」
「ま、受けた依頼がDランクの依頼ばかりだったからな。結果的に依頼の数も時間も短縮される」
「それもそうか」
今から試験が行われようとしている最中に俺たちはそんな会話をしているが、周囲の冒険者たちの反応は違った。
「おい、今からBランクの昇格試験受ける奴って先日までEランクの冒険者じゃなかったか!」
「なんでもギルドマスターの命令で一日に6つの依頼を受けさせたらしいぜ」
「6つ!?おいおいそんなの命が幾つあっても足りないだろ。フリーダムのギルドマスターは鬼か!」
「それだけじゃないぜ。偶然依頼を請けた連中がグリードを見かけたらしいんだが、フリーダムメンバーの全員が魔物をグリードの方に誘導してグリード1人に戦わせていたらしい」
「もうそれはパワハラどころの話じゃないだろ。イジメだろ。いや、イジメどころじゃない。殺人未遂って言ってもおかしくないレベルだ」
失礼な!
俺たちは1日でも早くグリードをBランクに昇格させるために効率を優先で手伝っただけだ。
グリードが討伐依頼を請ける→討伐対象の魔物を俺たちが見つけてグリードの方に誘導する→グリードが倒す→依頼達成。
ほらみろ。これほど効率良いランクアップ方法なんてないぞ。
それにこれは効率良くランクアップさせるだけじゃなく、グリードも強くなれ、達成報酬と素材の買取代金の一部がギルドに入ると言う一石三鳥の方法なんだ。なんで他の冒険者がこの方法を使わないのか不思議なぐらいだ。
「お、どうやらそろそろ始まるみたいだな」
グリードと試験官が互いに武器を構える。
俺たちがここまで手伝ったんだ。負けたら承知しないぞ。
「始め!」
冒険者組合の職員の合図とともに試験が開始された。
それと同時にグリードは地面を蹴って試験官目掛けて突っ走る。
その巨体からは想像も出来ないスピードに試験官や周囲の冒険者たちは度肝を抜かれていた。
「ぅうおおおおおおおおおおおぉぉ!」
地面、空気を振動させるほどのグリードの咆哮は敵を萎縮させるのに十分だった。ま、観戦していた冒険者たちも萎縮しちまってるけど。
そのままグリードはウォーハンマーを振り下ろそうとする。
「ま、待った!俺の負けだ!」
しかしグリードの対戦相手である試験官が負けを認めたため試合はそこで終了した。
まさか一撃も与える事無く勝ってしまうとは予想外だったが、結果的にグリードがBランクの冒険者になった。
グリードお手製の朝食を食べた俺たちフリーダムメンバーは皇宮に来ていた。
基本フリーダムのルールでは土日の通常依頼を受けることは無しと決めている。
平日も毎日受ける必要は無く、1週間の内に2つ以上の依頼をこなせば、OKと決めている。
ただし休日に通常依頼を受けるのが禁止なだけで指名依頼があれば受けるようにしている。勿論用事がある場合は断る事もあるが基本指名依頼は受けるようにしている。
んで、俺たちは11月18日日曜日の午後3時過ぎに、ボルキュス陛下から指名依頼が冒険者組合を通じての正式な指名依頼がなされたのだ。
メールに届いた指名依頼内容には遺跡探索と書かれていただけで、詳細までは書かれてはいなかった。ま、受けるかどうか曖昧な状況で詳細を伝えるわけがない。それが顔見知りであろうとだ。
ま、そんなわけで俺たちは、ボルキュス陛下からの指名依頼を受けて、詳細を聞くべくこうして皇宮に来たわけだ。
いつも通り警備のおっちゃんに冒険者免許書、通称ギルドカードを見せ身元を確認をして貰った俺たちは中へと入る。
んで、これまた予想通りに入ったホールではイオが待ち構えており、そんなイオに案内されて俺たちは数える程度ではあるけど、何度も来た事がある応接室に通された。
ここに来るのはヘレンの問題を解決した時以来だ。だからその後に加入したグリード、アリサ、クレイヴの3人はボルキュス陛下と対面するどころか皇宮に入るのだって初めてだ。
ま、ボルキュス陛下から指名依頼が来たって事を影光たちに話したら、俺とボルキュス陛下の仲を知っている、影光、アイン、ヘレンの3人はまたかと言う表情をしたに対して、グリード、アリサ、クレイヴの3人は相当驚いていたな。
「ジンの旦那って何者なんだ?」
「ただの冒険者だが?」
「ただの冒険者が皇帝陛下と知り合いなわけがない」
「クレイヴさんの言うとおりです!」
とグリードたち3人に言われてしまった。
いったいお前たちは俺を何者だと思ってるんだ?
そんな疑問が頭に浮かんだが、聞いたら心の硝子玉にヒビが入りそうだったので止めておいた。
そんなわけで俺たちはボルキュス陛下と対面する形でソファーに座る。
俺が真ん中に座り、その両脇にヘレンと影光が座っている。で、ソファーの後ろにアインたちが立つ。
「会う度に君は仲間を増やしていて驚かされるな」
と、思った事を世間話の代わりとして口にするボルキュス陛下。
「今のところこれ以上増やすつもりはないから安心しろ」
いや、今後と言うべきか。増やしたとしてもあと、1人か2人だろうしな。
だってそれ以上増やしたら住める部屋が無いし、俺にそれだけの仲間の面倒が見れるとも思えないからな。ま、優秀な秘書でも居れば別なんだろうが。
それよりもボルキュス陛下はあんな事を口にしているが全然驚いているようには見えない。どうせ部下たちに俺のギルドの事を監視させているんだから知っているだろ。ま、なんで監視させているのかは分からないけど。
「それで、遺跡探索依頼って事だったけどその内容は?」
「イオ、例の物を」
「畏まりました」
ボルキュス陛下の指示でイオが俺たちの前に1つのアタッシュケースが置かれた。
まさかこの中全てにお金が!
そんなありもしない期待を少しだけ抱きながら俺は開かれたアタッシュケースの中を見る。
そこには右腕、いや、骨のような物で出来た不気味な籠手が入っていた。やっぱりお金じゃないのか、残念。
「それでこの腕がどうかしたのか?生憎と俺たちにこんな物を見せても欲しいって言うような物好きは居ないぞ」
「別にこの籠手を売るつもりをあげるつもりもない」
やっぱりこれは籠手なのか。
そう思いながら良く見てみると、甲のあたりに大きな目玉のような物が取り付けられていた。ほんと何度見ても不気味だな。中二病なら喜んで装着しそうだが。
「これは半年前に偶然発見された遺跡の調査で軍の1人が命からがら持ち帰った物だ」
「命からがら?」
俺はボルキュス陛下が言った単語に思わず眉を潜めた。
「最初はBランクの冒険者パーティーに依頼を出し調べて貰ったんだが、誰1人とて帰ってこなかった。そこで遺跡調査隊を編成し30名の軍人を向かわせたのだが、帰ってきたのがこれを持った軍人ただ1人だったと言う訳だ。で、そのあまりの危険性から一時調査は中止していたんだが……」
ボルキュス陛下はそこで思い悩んだ声音を発した口を閉ざした。
まったくそんな中途半端な所で黙り込まないで欲しい。良いところで終わって次回予告をするドラマやアニメじゃあるまいし。
俺はボルキュス陛下が待ち焦がれているであろう言葉を口にする。
「何か問題でもあったのか?」
「その通りだ」
だろうな。
そうで無かったら全員が帰るのが面倒で遺跡で寛いでるって事になるからな。
「死んだはずの軍人や冒険者たち数名がゾンビになって近くの村に出現したと言う報告が最近になって入ってきた。そこでその原因を調べるために――」
「俺たちが指名されたってわけか。だけどフリーダムは出来たばかりの弱小ギルドだぞ。ギルドランクだってDランク。ギルドランクを無視したとしても、話を聞く限りその依頼はどう考えても最低でAランク。最悪SSランクだってありえる依頼だ。冒険者ランクで言えばその依頼を受けられるのは影光とクレイヴだけだぞ」
「ま、それを言われると返す言葉も無いが、どうにかAランクの依頼として貰ったから安心しろ」
いや、それは安心出来ないから。
てか、いったいどんな手を使ったのか気になるところだが教えてくれるはずもないので聞くつもりはないが、冒険者の安全を第一に考えるはずの冒険者組合の連中は何を考えてるんだ。
危険度が高いと言う事はそれだけ達成率が低く、死傷率が高いって事だろ。
普通はそう言うのを考えて決めるはずなのに、ボルキュス陛下の言い回しから考えて最初に結論付けたランクを落としてるようじゃねぇか。もしもこれで何かあったら抗議してやる!
「確かにそれだと俺たちは請けられるようにはなったが、グリードだけ受けられないことになる。遺跡の話を聞く限り、フリーダム全員で行くべきだ。1人だけ置いていくわけにはいかない」
「ジンさん……」
そんな俺の言葉にグリードが掠れた声で俺の名を呼ぶ。別に泣くような事じゃないだろ。
そう思いながら俺はボルキュス陛下から視線を逸らさない。
「ま、なら依頼は1週間後でどうだ?それまでにグリード君をBランクにまで昇格させられるだろ」
「そ、そんな無理です!」
「分かった」
「ジ、ジンさん!」
困惑したように俺の名を叫ぶ。
ま、仕方が無いよな。
「ならまた1週間後に来てくれたまえ」
「分かった」
こうして話を終えた俺たちは皇宮を後にして、ホームがある48区へと戻ってきた。
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「む、無理です!たった1週間でBランクにまで昇格するなんて!それにBランクに上がるには昇格試験だって合格しないといけないんですよ!」
「大丈夫だ。お前の実力なら余裕で勝てる。な?」
「はい、グリードの実力なら昇格試験に合格する確立は97.57%です」
「100%じゃないんですね……」
きっと仲間なら自信を持たせるために100%と言って欲しかったんだろうが、サイボーグであり傲慢なアインに気遣いを求めるだけ無駄だぞ。
「未来の事象において100%と0%は存在しません」
「そ、そうなんですか」
アインの言葉に投げやりの返事をする。
そう落ち込むな。
「さて、問題は1週間でBランクの昇格試験が受けられるようにしないといけないことだ。いや、余裕を持って5日でどうにかするべきだな」
「たった5日でBランクまでなんて無理です!」
「因みにCランクまであとどれぐらいで昇格出来そうなんだ?」
「あと130ポイントほどですけど」
「Bランクの昇格試験を獲得するのには400ポイント+130ポイントって事か。つまりは」
「530ポイントですね」
アインが答える。さすがはサイボーグ計算も一瞬だ。ま、今の計算は俺でも分かったけど。
「5日で530ポイントとなると、1度に受けられる依頼の数は3つまで。午前と午後で2回受けるとして1日に6つの依頼が受けることができるわけだ。つまり5日で30個の依頼が受けられる。となると1つあたりの依頼達成ポイントは」
「四捨五入して18ポイントですね」
またしてもアインが答える。今のだってすぐに分かったさ!ほ、本当だからな!
「18ポイントってたしかEランクの依頼だよな?」
「そうですね」
と、肯定の言葉が返って来る。
「なんだ簡単じゃねぇか。最低でもEランクの依頼を30個達成すればすぐだな」
雑魚な魔物を倒す依頼を30個クリアするだけなんて予想以上に楽な内容だな。
ましてやEランクの場合だ。Dランクでソロで請けられる依頼があれば請ける数だって減るわけだからな。
「そんな簡単じゃないですよ!そんな事僕には無理です!」
「おい、グリード!」
「な、なんですか?」
弱気なグリードにアリサがガンを飛ばすようにして迫る。
傍から見ればグリードがアリサを襲っているようにしか見えないが、本当はその逆だ。
「さっきから無理無理無理無理ってお前はそんな気持ちで冒険者になったのかよ!」
「そ、それは……」
「ジンの旦那もアインの姉御もお前なら出来るって言ってるじゃねぇかよ!そんな2人の言葉が信じられないのか?あ"ぁ?」
アリサさんやなんで喧嘩腰なんだ。
傍から見れば無謀な挑発なんだろう。なんせ身長が倍も違うし、見た目の問題もあるからな。
だけどグリードの性格を知る俺たちから言わせればあんまりグリードを虐めないで上げて欲しいと思ってしまう。
「し、信じられないわけじゃありません。アインさんもジンさんも僕なんかよりずっと強いし経験だってあります。だけど、討伐依頼となるとまずは魔物を探すところから始まるんです。僕は魔力感知が苦手で見つけるのに時間が掛かるはずです。それなのに1日6つの依頼を達成するなんて事僕には……」
「あ、それに関しては問題ないぞ?」
討伐系の依頼となると、まずするのは討伐対象となる魔物を探すことからだ。それで時間を無駄にするのは勿体ない。だから既に俺には素晴らしい案があるのである。
「え?」
「依頼を受けて倒すのはグリードだけど魔物を探すのなら俺たちが代わりにするから安心しろ!」
と、自信満々に親指を立てて伝える。
「それって……」
そんな俺の言葉に対してグリードの顔が徐々に青ざめて行く。
高ランクの仲間が代わりに探してくれるって分かったら普通は安堵するところじゃいか?
「お前はウォーハンマーを持って待ち構えているだけで良い。そこに俺たちが魔物を誘導するからお前はそれを倒すだけで良いって事だ」
「そ、それって本当に良いんですか!?」
「冒険者規則には自分以外の者が倒した魔物を自分が倒したように偽装して提出する事が禁止されているだけで、魔物を依頼を受けた人物の許へ誘導してはならないとは書いてありませんから大丈夫です」
グリードの疑問にアインが答える。
さすがはサイボーグ。冒険者組合の規則を全て暗記しているのか。いや、この場合は記録していると言うべきだな。
「なら早速今から依頼を受けるとするか。よし、全員でグリードの許へ魔物を誘導するぞ!」
『おう!』
「か、勘弁してください!」
そんなグリードの心の底からの叫び声を無視して俺たちは森へと向かった。
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11月24日土曜日。
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そう今からグリードのBランク昇格試験が行われるからだ。
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「それにしても4日でBランク依頼を受けられるようにするなんて流石はジンの旦那だぜ」
「ま、受けた依頼がDランクの依頼ばかりだったからな。結果的に依頼の数も時間も短縮される」
「それもそうか」
今から試験が行われようとしている最中に俺たちはそんな会話をしているが、周囲の冒険者たちの反応は違った。
「おい、今からBランクの昇格試験受ける奴って先日までEランクの冒険者じゃなかったか!」
「なんでもギルドマスターの命令で一日に6つの依頼を受けさせたらしいぜ」
「6つ!?おいおいそんなの命が幾つあっても足りないだろ。フリーダムのギルドマスターは鬼か!」
「それだけじゃないぜ。偶然依頼を請けた連中がグリードを見かけたらしいんだが、フリーダムメンバーの全員が魔物をグリードの方に誘導してグリード1人に戦わせていたらしい」
「もうそれはパワハラどころの話じゃないだろ。イジメだろ。いや、イジメどころじゃない。殺人未遂って言ってもおかしくないレベルだ」
失礼な!
俺たちは1日でも早くグリードをBランクに昇格させるために効率を優先で手伝っただけだ。
グリードが討伐依頼を請ける→討伐対象の魔物を俺たちが見つけてグリードの方に誘導する→グリードが倒す→依頼達成。
ほらみろ。これほど効率良いランクアップ方法なんてないぞ。
それにこれは効率良くランクアップさせるだけじゃなく、グリードも強くなれ、達成報酬と素材の買取代金の一部がギルドに入ると言う一石三鳥の方法なんだ。なんで他の冒険者がこの方法を使わないのか不思議なぐらいだ。
「お、どうやらそろそろ始まるみたいだな」
グリードと試験官が互いに武器を構える。
俺たちがここまで手伝ったんだ。負けたら承知しないぞ。
「始め!」
冒険者組合の職員の合図とともに試験が開始された。
それと同時にグリードは地面を蹴って試験官目掛けて突っ走る。
その巨体からは想像も出来ないスピードに試験官や周囲の冒険者たちは度肝を抜かれていた。
「ぅうおおおおおおおおおおおぉぉ!」
地面、空気を振動させるほどのグリードの咆哮は敵を萎縮させるのに十分だった。ま、観戦していた冒険者たちも萎縮しちまってるけど。
そのままグリードはウォーハンマーを振り下ろそうとする。
「ま、待った!俺の負けだ!」
しかしグリードの対戦相手である試験官が負けを認めたため試合はそこで終了した。
まさか一撃も与える事無く勝ってしまうとは予想外だったが、結果的にグリードがBランクの冒険者になった。
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婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
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★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
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