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37・わたしのビキニ姿を見たいとか言って欲しい

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 37・わたしのビキニ姿を見たいとか言って欲しい


 夏、バカみたい! に暑い夏休みのある日、今日はシトシト雨降りな日だった。でもって印象的に重なったみたいにわたしのキブンも灰色。マリーに似合うオレンジ色に向かっていかない。

「あぁ、なんか憂鬱……」

 部屋の中で寝転がっていたら、どんどん憂鬱になって……その感情が光に向かっていった。

「えぇ……夏休みってあとどれだけある?」

 脱力中なので重たいと思うスマホの日付を見て、まだ日はあるけれど余裕があるわけじゃないぞ! とわたしは思わずにいられない。それは何の事とかいえば、光がわたしを泳ぎのデートに誘うってこと。

「わたしはビキニ姿やる気マンマンなのに……光にならしっかりビキニ姿も谷間も見せてあげたいのに……早く誘えってんだよ、なんで誘って来ないんだよぉ」

 そうなんだ、これは光が悪いって話なんだ。以前にわたしはビキニって水着をやってもいい? ってそれとなく伝えた。すると光はそのとき、マリーのビキニ姿を見たら自分のせつないって想像力が破壊されそうだから、見たいけれど……ものすごく見たいけれど……見たくないなんてマイナスに印象的な表現を使った。

 そのときは「え?」 とか思ったけれど、小説家志望の奴は言う事がちがうなぁって感心もした。しかし! しかし! いくらそうは言っても、わたしは彼女なのですよ? 中1でバスト92cmのブラはEカップって巨乳女子なのですよ? しかも光は五重丸レベルのおっぱい星人。だったら後からキモチが変わるはずだと思うのは当然じゃん。

 いくらなんでも夏休みの間には伝えてくるはず……わたしからつよく誘ってもいいけれど、やっぱりその、泳ぎのデートとかダメ? なんて誘われるカタチで物語を進めたい。

「ったく、常日頃わたしのおっぱいを恋しいって訴えるような目でチラチラ見るくせに、なんでこういう大事な話になると行動力が湧かないのだろう」

 わたしはだんだん水がお湯へ近づいていくようにだんだん腹が立ってきた。

「電話してやる」

 わたしは午後2時過ぎのいま、マイダーリンのスマホに電話してやった。するとものすごーく眠そうな声が出てきた。

「もしもし……」

「あ、光、昼寝してるの?」

「朝からずっと小説書きまくっていたから……眠くて……」

 光は早く電話を切りたいんですけれど……と、やる気まったくゼロな声を出す。いいんだけどさ……夢に向かって好きな事を一生懸命やるってステキだし、そういう光がわたしは大好きなんだけれどさ、もうちょっとその、わたしという彼女に熱を振り向けてくれないかなぁと思ったら、やっぱりまた少し腹が立つ。

「光さぁ、最近暑いと思わない?」

「ん……暑い……ん……」

「暑いといえば?」

「なに……冷ややっことか?」

「他には?」

「えぇ……アイス……クリームとか?」

「他には!?」

「え……あ、もしかしてゴキブリが出たとか?」

「光ぅ! バカなの? どうしてそんなにバカなの?」

「え、なんで?」

「プールとか海とか、そういうのを思わないの?」

「あ、そうか……ふわぁ……ん……忘れてた……」

 こいつ……わたしが大好きって、わたしの巨乳がものすごく気になってたまらないって、焼け焦げるように想いを伝えてくれるのに、すごいおっぱい星人なのに、それでも小説家としての能力を守るためにわたしのビキニ姿を……見たいけれど見たくないって姿勢を貫くの? すごいけれど、たしかにすごいのだけれど、わたし……かまって欲しいってわがままになりたくなってしまう。

「電話切ってもいい?」

「あ、待って最後にひとつだけ!」

「なに?」

「夏休みが終わるまでにさぁ、わたしに一花咲かさせてよね」

「へ、どういうこと?」

「自分で考えろバカ!」

「え、なに、なんだよ」

「いいよもう、好きなだけ寝ちゃえ!」

 勢いに任せて電話を切ってしまった。で、光の方からかけてきたらプールに誘おうかなと思っていたのだけれどかかってこない。

「くぅ……おっぱい星人のくせに!」

 鈍い、そして肝心なところでプライドが高くて臆病、それがわたしの彼氏だと改めて腹立たしく思い知らされた。
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