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29・夏休み、青春を描けるかどうか
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29・夏休み、青春を描けるかどうか
「えっと……」
今日で学校は一旦終了。帰宅したわたしはカベに貼ってあるカレンダーを真剣なキモチで見つめた。中1だと家族との付き合いっていうのがあって、もちろんイヤではないけれど、たまにちょっとだけうざいと思わなくもない。で、それがものすごい重力として働くんだよね。
父側の親戚、母側の親戚という2つのワールドがあって、そこに顔を出すのが当たり前とされる以上、だいたいトータルして14日くらいはその行事に時間を持っていかれる。
「えっと……夏休みって……だいたい5週間みたいな感じだけれど、そのうちの2週間は家族との過ごしに使わなきゃいけないか。まぁ、我が家だけでどこぞに行くって話も当然出てくるだろうなぁ。友だちとの付き合いもあるから、そう考えると彼氏と青春する時間って思ったより取れないかも」
実を言うとわたし、夏休みの間に一度光を家に誘ってみたいとか色々想っていた。プールでビキニ姿の披露って物語も当然思い描いている。
「あ、光、ちょっといい?」
同日夕方、わたしは光に電話して夏休みはどんな感じになりそう? と聞いてみたりした。
「家族との付き合いがあると思うけれど、それ以外ではどういう風に過ごすつもり?」
「小説を書きまくりたいと思っているんだ」
「いやまぁ……光らしくていいとは思うけど、わたしと過ごしたいと言って欲しかったかなって思ったりして」
「も、もちろんマリーとも過ごしたい、これほんとう。だって彼女といっぱい過ごせるなんて夏休みくらいしかないから」
「じゃぁ、さっそく明日は?」
「明日はちょっとムリかな、明後日ならなんとか……」
「いきなり否定かよ!」
「あ、ゴメン、だってその8月中に完成させないといけない小説が2本もあって大変なんだ。どっちも応募の締め切りが8月の終わりだから」
「むぅ……まぁ、がんばっている彼氏って大好きだから、光のそういう生き様にはキュウンとさせられるけれど」
「でも……」
「でも、なに?」
「さっきも言ったけれど、マリーといっしょにいっぱい過ごしたいって思っているのはほんとうだから」
「だいじょうぶ、光のキモチはちゃんと伝わっている」
「よかった、マリーに嫌われたら生きていけない」
「急にかわいいセリフを言うのは反則だぞ」
こんなやり取りを1時間くらいしてからわたしは電話を切った。そして、やっぱりがんばっている彼氏っていいものだなぁって思いをかみしめた。というのは、今日の学校である友だちに言われた事が胸の中に引っかかっていたから。
「マリーさぁ、光ってマリーにちゃんと優しくしてくれている?」
「え、急になに?」
「いや、2人がたのしく過ごしているって姿は見えているんだけどさ、なんかこうふつうはもっと深入りしてさ、狂ったように夢中となるんじゃないかなぁと思うんだ。ましてマリーだよ? かわいいし中1でEカップって巨乳。それと冷静に付き合える男子っておかしくない?」
「あ、それはちがうよ。光はちゃんとわたしに夢中ってキモチを伝えてくれている。それと並行して小説とかにがんばっているんだよ。そしてがんばる彼氏を応援するっていうのが胸キュンって思うから、ちょうどいい感じなんだよ、わたしたちって」
「小説とわたしのどっちが大事とか思わないの?」
「いや、たまにはかまって欲しいってうずくけれど、叶えたい夢と思ってがんばっているのをジャマするのはダメな彼女だよ」
「へぇ、マリーってしっかり者だなぁ。わたしだったら欲求不満になって別れるけどな」
わたしはこういう話をすると、自分の感情が乱れないようにちゃんと考えるんだ。四六時中ひたすらいっしょって付き合い方をすると、それはラブラブではあるけれど絶対にしんどくなる。もしかすると他にやる事ないの? なんてイラつくかもしれない。
それを考えたら光はステキなんだ。夢を叶えようって努力と、彼女であるわたいに想いを伝えるって事を両立させている。ずっとべったりより、絶対にこっちの方が健康的でいいのだと、わたしは自分に言い聞かせる。
とはいえ、もう少しくらいはかまってよぉって、たまには拗ねたくなる。だから夏休み中の光には、絶対わたしと青春する時間を作ってもらう。今までとあんまり代わり映えしない夏で終わるなんてイヤなんです!
「えっと……」
今日で学校は一旦終了。帰宅したわたしはカベに貼ってあるカレンダーを真剣なキモチで見つめた。中1だと家族との付き合いっていうのがあって、もちろんイヤではないけれど、たまにちょっとだけうざいと思わなくもない。で、それがものすごい重力として働くんだよね。
父側の親戚、母側の親戚という2つのワールドがあって、そこに顔を出すのが当たり前とされる以上、だいたいトータルして14日くらいはその行事に時間を持っていかれる。
「えっと……夏休みって……だいたい5週間みたいな感じだけれど、そのうちの2週間は家族との過ごしに使わなきゃいけないか。まぁ、我が家だけでどこぞに行くって話も当然出てくるだろうなぁ。友だちとの付き合いもあるから、そう考えると彼氏と青春する時間って思ったより取れないかも」
実を言うとわたし、夏休みの間に一度光を家に誘ってみたいとか色々想っていた。プールでビキニ姿の披露って物語も当然思い描いている。
「あ、光、ちょっといい?」
同日夕方、わたしは光に電話して夏休みはどんな感じになりそう? と聞いてみたりした。
「家族との付き合いがあると思うけれど、それ以外ではどういう風に過ごすつもり?」
「小説を書きまくりたいと思っているんだ」
「いやまぁ……光らしくていいとは思うけど、わたしと過ごしたいと言って欲しかったかなって思ったりして」
「も、もちろんマリーとも過ごしたい、これほんとう。だって彼女といっぱい過ごせるなんて夏休みくらいしかないから」
「じゃぁ、さっそく明日は?」
「明日はちょっとムリかな、明後日ならなんとか……」
「いきなり否定かよ!」
「あ、ゴメン、だってその8月中に完成させないといけない小説が2本もあって大変なんだ。どっちも応募の締め切りが8月の終わりだから」
「むぅ……まぁ、がんばっている彼氏って大好きだから、光のそういう生き様にはキュウンとさせられるけれど」
「でも……」
「でも、なに?」
「さっきも言ったけれど、マリーといっしょにいっぱい過ごしたいって思っているのはほんとうだから」
「だいじょうぶ、光のキモチはちゃんと伝わっている」
「よかった、マリーに嫌われたら生きていけない」
「急にかわいいセリフを言うのは反則だぞ」
こんなやり取りを1時間くらいしてからわたしは電話を切った。そして、やっぱりがんばっている彼氏っていいものだなぁって思いをかみしめた。というのは、今日の学校である友だちに言われた事が胸の中に引っかかっていたから。
「マリーさぁ、光ってマリーにちゃんと優しくしてくれている?」
「え、急になに?」
「いや、2人がたのしく過ごしているって姿は見えているんだけどさ、なんかこうふつうはもっと深入りしてさ、狂ったように夢中となるんじゃないかなぁと思うんだ。ましてマリーだよ? かわいいし中1でEカップって巨乳。それと冷静に付き合える男子っておかしくない?」
「あ、それはちがうよ。光はちゃんとわたしに夢中ってキモチを伝えてくれている。それと並行して小説とかにがんばっているんだよ。そしてがんばる彼氏を応援するっていうのが胸キュンって思うから、ちょうどいい感じなんだよ、わたしたちって」
「小説とわたしのどっちが大事とか思わないの?」
「いや、たまにはかまって欲しいってうずくけれど、叶えたい夢と思ってがんばっているのをジャマするのはダメな彼女だよ」
「へぇ、マリーってしっかり者だなぁ。わたしだったら欲求不満になって別れるけどな」
わたしはこういう話をすると、自分の感情が乱れないようにちゃんと考えるんだ。四六時中ひたすらいっしょって付き合い方をすると、それはラブラブではあるけれど絶対にしんどくなる。もしかすると他にやる事ないの? なんてイラつくかもしれない。
それを考えたら光はステキなんだ。夢を叶えようって努力と、彼女であるわたいに想いを伝えるって事を両立させている。ずっとべったりより、絶対にこっちの方が健康的でいいのだと、わたしは自分に言い聞かせる。
とはいえ、もう少しくらいはかまってよぉって、たまには拗ねたくなる。だから夏休み中の光には、絶対わたしと青春する時間を作ってもらう。今までとあんまり代わり映えしない夏で終わるなんてイヤなんです!
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