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8・わたしは光を選ぶから1

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 8・わたしは光を選ぶから1


 わたしと光がお付き合いしているってことは、人前で大っぴらにイチャラブしなくても当然の事として知れ渡る。でもってわたしは知っている。最初こそ周囲はうるさいけれど、しばらくすればもう放っておこうと静かになるってことを。だから言いたい事は言わせておけばいいって話なんだよね。

 でも……人がお付き合いをしていると知っていて、逆にそれゆえに絡んでくるやつもいるからまいっちゃうね。しかもそれがヤンキー男子だったらさ、お願いだからあなた転校してくださいと言いたくなる。

「おまえ、三ツ井と付き合っているんだって?」

 昼休み、光はグランドでサッカーをやりに行っている。わたしは女同士の話をしていたのだけれど、急に割り込んできたヤンキー男子に言われ見つめられる。

「付き合っているけれど?」

「なぁ、あいつのどこがいいんだ?」

「全部」

「なんだよ、適当に流すみたいな言い方」

「いいでしょう、放っておいて」

 わたしが強引に話を終えようとしたら、勝手に話を切り上げるなよとか言って絡み続ける。そういうのは女に嫌われるよとは言わない。どうぞ勝手に嫌われてください! だから。

「おれさぁ、おまえみたいなかわいくて巨乳って好きなんだわ」

「言うのが遅いよ、わたしにはもう彼氏がいるし」

「おれに乗り換える気とかない?」

「ない」

「あぁもう、おれの方がいい男だろうが!」

「えぇ……」

「おれの方があいつより背が高い」

「だよね」

「おれの方があいつよりイケメン」

「自分で言うんだ?」

「おれの方があいつよりケンカがつよい」

「そういうの興味ない」

「おれの方が……」

 ヤンキーはあれこれ言ったけれど、どれもこれも大したことない。わたしの彼氏である光と比べたら何にもないやつでしかない。

「くっそぉ、腹が立つ!」

「他の女を探せばいいでしょう」

「うるせぇんだよボケ!」

 ヤンキーは立ち上がって空いている席を蹴ったりして、それから教室の外へと進んだ。わたしはそれで話は終わったなと思ったのだけれど、近くにいた友人が怖いことを言ってきたんだ。

「あれ危ないかもよ」

「危ない?」

「光に暴力振るうかもしれない」

「ウソでしょう、なんで」

「ヤンキーってそういう腐れな人種じゃん、思い通りにならなかったら暴力あり気なクズだよ」

「やめてよ、心配になるじゃんか」 

 わたしは居ても立ってもいられなくなり、友人といっしょに教室を出た。そして光がいるグランドにと向かう。 するとどうだろう、階段を下りた所で急に人だかりが出来ている。それは毎日当たり前に見る光景のひとつではない。突然、何かがあったからこそ出来た群れだとすぐにわかった。

「どうしたの?」

 わたしが聞くと女子のひとりがわたしを見ておどろく。そして腕をつかんで校舎の出入り口ではなく、水道のところへ引っ張って言ったんだ。彼氏が暴力を振るわれているよって。

「ちょっと!」

 わたしがグランドへ向かおうとしたら、行かない方がいいって友人からアドバイスが来る。

「なんで? 自分の彼氏がひどい目に遭ってジッとしていられる彼女っているの?」

「だから、マリーが行ったところで解決しないんだってば」

「はぁ? じゃぁわたしどうしたらいいわけ?」

「後で、彼氏を保健室のまで連れて行ってあげればいい」

 友人に言われたわたしは出入り口に近づいてグランドを見た。そうするとだだっ広いところで見物人の前でさっきのヤンキーが暴れていると目にした。
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