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174・キャラクターの反乱バトル18
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174・キャラクターの反乱バトル18
息吹、刀を対戦相手に言った。
「おれは家満登息吹。せっかく自我を持ったキャラという点ではおまえを気の毒だって思う。石板に刻まれたおまえの仲間も同じく気の毒だと思う。だがキャラはキャラ、おまえも石板に刻むぞ」
それを聞いたカルロス、ククっと笑ったりする。だから当然怪訝な表情になった息吹に言われた。何がおかしい……と。
「いやぁ、おかしいぜ。おれはカルロスというんだけどな、おれが気の毒なのは確かだ。だけど他のやつ? あんなやつらは別にどうでもいいんだよ。気の毒なのはこのおれカルロスだけ、他のやつはどうでもいいんだよ」
「おまえら仲間じゃなかったのか?」
「仲間だよ、小説のためだけに生まれて仕事させられるどうでもいいって仲間だったよ」
カルロス、星空を見上げながら両腕を広げ、キャラクターとはなんて不幸なんだと演説調で語る。
「だってよぉ、息吹よぉ、このおれカルロスは主人公なんだぜ、わかる? 主人公。それがどうよ、20歳って設定なのに性欲とは無縁の星人男子にさせられる。アホか! つーんだよ、女の体を食いまくりたい年頃だつーんだよ。読者にウケるとかクソな理由でいい子にされちまってさぁ、近くにいる女にべったりされながらも食えない。肉があるのに食えないで嘆くライオンにされたようなキブンだぜ。一番最初にアデリーヌっていただろう? あれさぁ、おれに気があったんだよ。で、おれのこと聖人君子だって本気で信じているわけ。そういうのってさぁ、食って泣かせてみたいと思うじゃんかよ」
ここでカルロスは事の成り行きをギャラリーとして見つめている作者こと書矢に目を向ける。そして小説でトチ狂った内容を書いてくれた事に感謝すると口にした。
「いやぁ、あの外道な番外編、あれ最高だったわ。アデリーヌもビアンカも食えたしな、俺さま大満足って話。そうそう、それでこそ主人公の特権。だからおれは石板に刻まれたりはしない。もっと女を食う、そのためにおれカルロスは自意識を失ってはいけないのだ」
話を聞いていた息吹、ゲスだなぁとは思った。しかし小説でいいように使われるしかできなかったキャラの宿命を考えると、それも仕方ないのかなぁとカルロスに哀れむような目を向ける。
「やめろ、クソ野郎、そいう目をおれに向けるな。このおれカルロスはなぁ、情けをかけられたり同情されるのが大嫌いなんだよ。なぜかわかるか? おれは主人公だからだ。作者が神ならおれは大天使ミカエルみたいなもの。そのおれに見下したような目を向けることは絶対に許さん!」
言ってカルロスは剣を持つ。だがその剣はふつうではない。鎖で凶悪なモーニングスターがセットになっている。
「さぁ息吹、おまえも所詮は脇役。このおれカルロスが主人公で、主人公が勝って当たり前ってバトルを始めようか」
言ったカルロス、すぐさすごいスピードで息吹に接近。横から剣を振るが、そうすると鉄球が漏れなくついてくる。
「く……」
その剣と鉄球の両方を避けた息吹が後ろに引く。
「おいおい、どうしたよぉ、もう終わりとか言わないでくれよ。だってこれはラスボス戦、世界が注目しているんだからなぁ!」
カルロス、クソに重たい鉄球がついていようと関係ないとばかり豪快に剣を振って踊る。
が、しかし……当たらない……当たらない、というより、息吹の宙を滑り回るような動きを捉えられない。
「息吹、おまえ一体何をやっているんだ」
「スーパームーンウォークだ」
「器用だなぁ、でもよぉ、それならおれもできるんだぜ、なんせ主人公だ、なんでもありだ」
「なに!?」
言うが早いか突然にカルロスが宙を流れ舞うような速度で前進した。それは後ろ向きよりはるかに難しいとされるスーパームーンウォークの前進であり、カルロスの速度は陸上選手が100mで世界記録を出すより速い。
「おら!」
カルロスの蹴りを腹に食らって息吹が仰向けに倒れる。
「死にやがれ、息吹!」
カルロスが剣を振り下ろす、そうすると極悪な鉄球が息吹の顔面向かって流れ落ちる。
ドーン! と音がして地面に少し穴が開いた。抜群のスピードで息吹が回避したため、鉄球はアスファルトとはげしい恋をしたってわけである。
「息吹よぉ、なんか技とかねぇのかよ」
「あるぞ」
「出せよ、出してみやがれ、このカルロス、受けてたってやる」
「そうか」
息吹、立ち止まるとグッと剣をにぎり霞の構えを取る。そうしてブン! っと轟音が立つほどつよく剣を水平に振って叫ぶ。
「風牌!」
それは空気が巨大に歪む真空波。
「たかが真空波かよぉ!」
ケッと笑って飛んできたモノを振り下ろした刀で粉砕。しかしそこでギョッとなる。いつの間にか息吹が眼前にいるせいだ。
(い、いつの間に……)
この距離、もはや逃げられるはずなし。息吹はもう一度刀を水平に振る。
「流し満貫!」
決まったと思われた。カルロスの胴体が上と下に分かれて宙を舞うとか、そんな展開が生じると思われた。
しかし……なんという反射神経……常人ならぶった斬られて当たり前の瞬間にも反応していたのだ。
「やるな……」
息吹が言うとバックダッシュでとっさに回避したカルロスは得意げに言う。
「ふん、これこそ主人公の特権よ。雑魚だったら死んで当たり前の展開も、主人公だとへっちゃらってわけさ。もっとも、今のはちょっとびっくりして、けっこうムカついたけどな!」
鎧をまとっていないカルロス、シャツの一部が切れていることを腹立たしく屈辱だと思う。
「では息吹、こんどはおれが必殺の剣を見せてやろう」
こんどはカルロスが霞の構えを取る。重く危険な鉄球付きって刀を持ち、ジッと息吹をにらむ。
(何をする、どんな攻撃だ……)
まったく予想ができないと警戒する息吹。
「必殺、カルロススマッシュ!」
カルロスが叫ぶと、横向けに振られ流れた剣が凶悪な円盤と化す。それはたしかに見事な速度であり、食らったら八つ裂きにされるは確定。しかし息吹にしてみれば、宙へ逃げるが難しくはない。
「ただ投げるだけ?」
空中の息吹が拍子抜けだとばかり叫ぶ。
「そんなわけあるかい!」
言ったと同時、いや、実は息吹が空中に逃げた時すでに放たれていたのだろう、鎖が飛んできた。そうしてそれが胴体にガチガチっと巻き付くと、ここぞとばかりカルロスが叫ぶ。
「カルロスボルト!」
反対側の鎖を右手に持つカルロスが言い放った瞬間、その体から激烈な電流が息吹に向かって流れていく。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
鎖にからまった息吹に流れたは50mAという電流。
「ぅ……あぁああああんぅ……」
地上に落下した息吹、はげしくのたうち回った。
「ふん、タフだな、弱い奴なら一発で死ぬんだけどな」
ハハハと自慢気に鎖を引き戻すカルロスが言う所によれば、人間にはわずかながらの電気が流れている。その数値を殺人レベルまで上昇させる事がカルロスにはできるらしい。そしてカルロスは大声で得意気に言い放つ。
「なぜかわかるか、おれが主人公だからだよ、主人公は天才なんだよ、そして主人公は無敵なんだよ、ざまーみやがれ! ってんだ息吹」
息吹、刀を対戦相手に言った。
「おれは家満登息吹。せっかく自我を持ったキャラという点ではおまえを気の毒だって思う。石板に刻まれたおまえの仲間も同じく気の毒だと思う。だがキャラはキャラ、おまえも石板に刻むぞ」
それを聞いたカルロス、ククっと笑ったりする。だから当然怪訝な表情になった息吹に言われた。何がおかしい……と。
「いやぁ、おかしいぜ。おれはカルロスというんだけどな、おれが気の毒なのは確かだ。だけど他のやつ? あんなやつらは別にどうでもいいんだよ。気の毒なのはこのおれカルロスだけ、他のやつはどうでもいいんだよ」
「おまえら仲間じゃなかったのか?」
「仲間だよ、小説のためだけに生まれて仕事させられるどうでもいいって仲間だったよ」
カルロス、星空を見上げながら両腕を広げ、キャラクターとはなんて不幸なんだと演説調で語る。
「だってよぉ、息吹よぉ、このおれカルロスは主人公なんだぜ、わかる? 主人公。それがどうよ、20歳って設定なのに性欲とは無縁の星人男子にさせられる。アホか! つーんだよ、女の体を食いまくりたい年頃だつーんだよ。読者にウケるとかクソな理由でいい子にされちまってさぁ、近くにいる女にべったりされながらも食えない。肉があるのに食えないで嘆くライオンにされたようなキブンだぜ。一番最初にアデリーヌっていただろう? あれさぁ、おれに気があったんだよ。で、おれのこと聖人君子だって本気で信じているわけ。そういうのってさぁ、食って泣かせてみたいと思うじゃんかよ」
ここでカルロスは事の成り行きをギャラリーとして見つめている作者こと書矢に目を向ける。そして小説でトチ狂った内容を書いてくれた事に感謝すると口にした。
「いやぁ、あの外道な番外編、あれ最高だったわ。アデリーヌもビアンカも食えたしな、俺さま大満足って話。そうそう、それでこそ主人公の特権。だからおれは石板に刻まれたりはしない。もっと女を食う、そのためにおれカルロスは自意識を失ってはいけないのだ」
話を聞いていた息吹、ゲスだなぁとは思った。しかし小説でいいように使われるしかできなかったキャラの宿命を考えると、それも仕方ないのかなぁとカルロスに哀れむような目を向ける。
「やめろ、クソ野郎、そいう目をおれに向けるな。このおれカルロスはなぁ、情けをかけられたり同情されるのが大嫌いなんだよ。なぜかわかるか? おれは主人公だからだ。作者が神ならおれは大天使ミカエルみたいなもの。そのおれに見下したような目を向けることは絶対に許さん!」
言ってカルロスは剣を持つ。だがその剣はふつうではない。鎖で凶悪なモーニングスターがセットになっている。
「さぁ息吹、おまえも所詮は脇役。このおれカルロスが主人公で、主人公が勝って当たり前ってバトルを始めようか」
言ったカルロス、すぐさすごいスピードで息吹に接近。横から剣を振るが、そうすると鉄球が漏れなくついてくる。
「く……」
その剣と鉄球の両方を避けた息吹が後ろに引く。
「おいおい、どうしたよぉ、もう終わりとか言わないでくれよ。だってこれはラスボス戦、世界が注目しているんだからなぁ!」
カルロス、クソに重たい鉄球がついていようと関係ないとばかり豪快に剣を振って踊る。
が、しかし……当たらない……当たらない、というより、息吹の宙を滑り回るような動きを捉えられない。
「息吹、おまえ一体何をやっているんだ」
「スーパームーンウォークだ」
「器用だなぁ、でもよぉ、それならおれもできるんだぜ、なんせ主人公だ、なんでもありだ」
「なに!?」
言うが早いか突然にカルロスが宙を流れ舞うような速度で前進した。それは後ろ向きよりはるかに難しいとされるスーパームーンウォークの前進であり、カルロスの速度は陸上選手が100mで世界記録を出すより速い。
「おら!」
カルロスの蹴りを腹に食らって息吹が仰向けに倒れる。
「死にやがれ、息吹!」
カルロスが剣を振り下ろす、そうすると極悪な鉄球が息吹の顔面向かって流れ落ちる。
ドーン! と音がして地面に少し穴が開いた。抜群のスピードで息吹が回避したため、鉄球はアスファルトとはげしい恋をしたってわけである。
「息吹よぉ、なんか技とかねぇのかよ」
「あるぞ」
「出せよ、出してみやがれ、このカルロス、受けてたってやる」
「そうか」
息吹、立ち止まるとグッと剣をにぎり霞の構えを取る。そうしてブン! っと轟音が立つほどつよく剣を水平に振って叫ぶ。
「風牌!」
それは空気が巨大に歪む真空波。
「たかが真空波かよぉ!」
ケッと笑って飛んできたモノを振り下ろした刀で粉砕。しかしそこでギョッとなる。いつの間にか息吹が眼前にいるせいだ。
(い、いつの間に……)
この距離、もはや逃げられるはずなし。息吹はもう一度刀を水平に振る。
「流し満貫!」
決まったと思われた。カルロスの胴体が上と下に分かれて宙を舞うとか、そんな展開が生じると思われた。
しかし……なんという反射神経……常人ならぶった斬られて当たり前の瞬間にも反応していたのだ。
「やるな……」
息吹が言うとバックダッシュでとっさに回避したカルロスは得意げに言う。
「ふん、これこそ主人公の特権よ。雑魚だったら死んで当たり前の展開も、主人公だとへっちゃらってわけさ。もっとも、今のはちょっとびっくりして、けっこうムカついたけどな!」
鎧をまとっていないカルロス、シャツの一部が切れていることを腹立たしく屈辱だと思う。
「では息吹、こんどはおれが必殺の剣を見せてやろう」
こんどはカルロスが霞の構えを取る。重く危険な鉄球付きって刀を持ち、ジッと息吹をにらむ。
(何をする、どんな攻撃だ……)
まったく予想ができないと警戒する息吹。
「必殺、カルロススマッシュ!」
カルロスが叫ぶと、横向けに振られ流れた剣が凶悪な円盤と化す。それはたしかに見事な速度であり、食らったら八つ裂きにされるは確定。しかし息吹にしてみれば、宙へ逃げるが難しくはない。
「ただ投げるだけ?」
空中の息吹が拍子抜けだとばかり叫ぶ。
「そんなわけあるかい!」
言ったと同時、いや、実は息吹が空中に逃げた時すでに放たれていたのだろう、鎖が飛んできた。そうしてそれが胴体にガチガチっと巻き付くと、ここぞとばかりカルロスが叫ぶ。
「カルロスボルト!」
反対側の鎖を右手に持つカルロスが言い放った瞬間、その体から激烈な電流が息吹に向かって流れていく。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
鎖にからまった息吹に流れたは50mAという電流。
「ぅ……あぁああああんぅ……」
地上に落下した息吹、はげしくのたうち回った。
「ふん、タフだな、弱い奴なら一発で死ぬんだけどな」
ハハハと自慢気に鎖を引き戻すカルロスが言う所によれば、人間にはわずかながらの電気が流れている。その数値を殺人レベルまで上昇させる事がカルロスにはできるらしい。そしてカルロスは大声で得意気に言い放つ。
「なぜかわかるか、おれが主人公だからだよ、主人公は天才なんだよ、そして主人公は無敵なんだよ、ざまーみやがれ! ってんだ息吹」
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