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173・キャラクターの反乱バトル17
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173・キャラクターの反乱バトル17
「ここに来たばかりで事情などよくわからないが……自分は閻美殿のために戦うという事だ。負けても悪く思うべからず」
ドーン! と気合の足踏みをして両手をにぎるグラディアートル。
「こちらも自意識を失いたくないので容赦はしない。相手が男なら何の気兼ねもない」
ブルーノ、ぶっ太い剣を取り出し、そうして素手でかまえる相手に言った。何も武器を持たないのか? と。
「この佐藤グラディアートルは、武器を持たずとも戦える男だ」
ファイティングポーズで身構えるグラディアートル、遠慮せずに来い! と相手を煽る。
「では遠慮なく行かせてもらうぞ!」
言うが早いがブルーノが攻め込む。大柄な体格にぶっ太い剣という組み合わせに関わらず、キレのいい剣振りを舞うように続ける。
「む! なかなかの剣」
言いながらグラディアートル、軽快なステップで避ける。それまた見た目に反して意外な軽やかさ。しかしただ避けているだけではない、必殺の一発を放つ絶好のタイミングを辛抱強く待っている。佐藤グラディアートル曰く、戦いとは最高の瞬間を掴むためひたすら忍耐あるのみ。
「おのれ鈍足っぽい見た目に反してちょこまかと」
ブルーノ、少しイラ立った。だから剣を縦に振り下ろしたとき、動きが止まって無防備という一瞬が発生。
「勝機! 食らえ、飛翔体ストレート!」
グラディアートルが握った右手をブルーノの顔面に入れる。それは全身の力をこぶしに込めるはもちろん、得意技である衝撃波も混ぜ込んでの右ストレート。つまり大変に凶悪なストレートだってこと。
ガン! 鈍く痛そうな音が鳴った。そうしてとても重そうってブルーノがのけぞりひっくり返る。
「く、佐藤グラディアートル……」
すぐに立ち上がるブルーのだが、奥の歯が一本折れてしまったのでプッと吐き出す。
「このブルーノ、ビアンカを失い自意識まで失っては浮かばれない。だからこの勝負は絶対に負けられんのだ」
シュワっともう一本の剛剣が出た、つまり剛剣二刀流。
「こちらも閻美殿の見ている前で無様は晒せない。そういうわけで受けて立とう!」
ここでグラディアートルがグッとかがみ込む。そうして片足を伸ばすとコサックダンスでもやるようにして勢いよく、ほんとうかよ? って言いたくなるほどの高速スピンをやり始めた。
「出た、グラディアートルスピン」
息吹、思わず声を出してしまう。あのスピンはコロッセオで戦った時に見たが、よく目が回らないものだとつくづく感心させられる。
「うぁぁぁぁぁぁグラディアートルスピン!」
人間ゴマと化したグラディアートル、あまりの速さがため人としての姿が見えない。回転という渦巻き以外何も見えない。
「ふ、どれほど早く回転しようと所詮は人間が回っているだけ。剛剣二刀流にて葬ってくれる!」
回転してやって来るモノを見ながら、両手に剣を持ち構えるブルーノ。そうして大きく上半身をそらすと、その反動で思いっきり接近してきた回転物体に二本の剣を振り落とす。
―ガキーンー
鈍い音がした。そしてブルーノは青ざめた。グラディアートルの前進が止まらないあげく、より一層ギューイン危険な速度で回りだした事。それにより剣の一本がひび割れを起こす。
「い、いかん」
慌ててもう一本をグラディアートルから離し、自らもジャンプして一旦仕切りなおしとする。
「グラディアートル……貴様、物の怪か!」
爆走スピンを続けているグラディアートルにブルーノはあきれた。それで目が回らないのは特異体質だとかなんとかブツブツ言ってから、突然に両腕をバッと横伸ばしにした。そうして右手の剣もクイっと水平にする。
「グラディアートルのスピンを見てなるほどと思った。だったらそれ、この我も応用させてもらおう。多少目が回ったとしても、それでも戦いに負けない方をブルーノは選ぶ。ブルーノスピン!」
グワーッとブルーノが回転十字を始めた。ギュワァァァァとアスファルトが削られるような音が鳴りだす。
「スピンにはスピンだ、グラディアートル!」
2人の男がスピン同士でぶつかり合う。きれいな月の下、デカい渦巻きが何度もぶつかり合うという、奇妙な絵面が展開される。
(い、いかん……目が回りそうだ)
ブルーノ、この流れはちょっとまずいと思った。そこでこう考える。同じスピンでぶつかるなら、上から下に直撃というカタチを食わらせればいいのではないか? それであれば……上の方が勝つのではないか? と。
「よし、勝負だグラディアートル!」
言ったブルーノの回転が空に舞い上がり始めた。まるで天に召される渦巻きという感じであるが、ずいぶんとまぁ……ってくらい高くに位置したら、そこから勢いよく降下を開始。
「なんの、飛翔体アタック!」
グラディアートルの回転も下から上に勢いよく上がり始めた。
「な、なにぃ!」
この展開は予想していなかったブルーノ、しかし今さら進路変更も逃げもできない。出来るとすれば、敵より激しく回って勝利の粉砕をゲットするだけである。
「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
むさ苦しい男同士の声が落下と上昇で響き、そして夜空を一瞬変色させるくらいの激しい衝突を成す。
ハタ! っと回転を止めた2人が地面に着地。どっちだ、どっちが勝ったんだ! という空気が数秒流れた後、ブルーノが星空を見上げ悲し気な声でつぶやいた。
「あぁ……ビアンカ……」
ブルーノがばったりと地面に倒れる。口から血を流し、目からは涙を落とし、石板に刻まれるのだなと自分の終わりを想う。そこにグラディアートルがやってきて、かがんだのでブルーノは最後の力を振り絞って言う。
「グラディアートル……」
「なにか」
「よ、余計なお世話かもしれないが……お、おれからアドバイスを」
「なんだ」
「す、好きな女には……思いを寄せる女には熱く当たれ。自分という存在が消えない内に、後悔がないように……」
「あぁ……わかった、そのアドバイス、ありがたく頂こう」
「ぅ……」
こうして両目を閉じたブルーノの体が石板に吸収され、ブルーノという名前が刻まれるのであった。
「閻美殿、無事に戦いは終わりました」
立ち上がったグラディアートル、3人に目をやり、一人背中を向けている閻美に伝える。
「あ、あぁ、そうか」
閻美、カンベンしてくれよもうって顔で深いため息を。それを面白いと思ったのか、ニヤニヤ顔のかすみ、閻美の横に立ち言ってやる。
「閻美さん、ほら、旦那さんに振り向いてあげないと!」
するとウグァっと顔を赤くした閻美、情け容赦なくかすみの頬を両手で思いっきり、それこそピザのチーズを引き延ばすかのごとく引っ張る。
「誰が旦那だ! 余計なことを言うな!」
「あいたた、痛い、痛い、ほんとうに痛い……」
かくして息吹たちの対戦相手は残り一人となった。だからして当然、息吹が前に出る。
「さて、今度はおれの番だ」
一方、仲間全員が石板に刻まれ一人となったカルロスもまた、同じ事をつぶやいて前に進んだ。
「いよいよおれの出番かぁ」
「ここに来たばかりで事情などよくわからないが……自分は閻美殿のために戦うという事だ。負けても悪く思うべからず」
ドーン! と気合の足踏みをして両手をにぎるグラディアートル。
「こちらも自意識を失いたくないので容赦はしない。相手が男なら何の気兼ねもない」
ブルーノ、ぶっ太い剣を取り出し、そうして素手でかまえる相手に言った。何も武器を持たないのか? と。
「この佐藤グラディアートルは、武器を持たずとも戦える男だ」
ファイティングポーズで身構えるグラディアートル、遠慮せずに来い! と相手を煽る。
「では遠慮なく行かせてもらうぞ!」
言うが早いがブルーノが攻め込む。大柄な体格にぶっ太い剣という組み合わせに関わらず、キレのいい剣振りを舞うように続ける。
「む! なかなかの剣」
言いながらグラディアートル、軽快なステップで避ける。それまた見た目に反して意外な軽やかさ。しかしただ避けているだけではない、必殺の一発を放つ絶好のタイミングを辛抱強く待っている。佐藤グラディアートル曰く、戦いとは最高の瞬間を掴むためひたすら忍耐あるのみ。
「おのれ鈍足っぽい見た目に反してちょこまかと」
ブルーノ、少しイラ立った。だから剣を縦に振り下ろしたとき、動きが止まって無防備という一瞬が発生。
「勝機! 食らえ、飛翔体ストレート!」
グラディアートルが握った右手をブルーノの顔面に入れる。それは全身の力をこぶしに込めるはもちろん、得意技である衝撃波も混ぜ込んでの右ストレート。つまり大変に凶悪なストレートだってこと。
ガン! 鈍く痛そうな音が鳴った。そうしてとても重そうってブルーノがのけぞりひっくり返る。
「く、佐藤グラディアートル……」
すぐに立ち上がるブルーのだが、奥の歯が一本折れてしまったのでプッと吐き出す。
「このブルーノ、ビアンカを失い自意識まで失っては浮かばれない。だからこの勝負は絶対に負けられんのだ」
シュワっともう一本の剛剣が出た、つまり剛剣二刀流。
「こちらも閻美殿の見ている前で無様は晒せない。そういうわけで受けて立とう!」
ここでグラディアートルがグッとかがみ込む。そうして片足を伸ばすとコサックダンスでもやるようにして勢いよく、ほんとうかよ? って言いたくなるほどの高速スピンをやり始めた。
「出た、グラディアートルスピン」
息吹、思わず声を出してしまう。あのスピンはコロッセオで戦った時に見たが、よく目が回らないものだとつくづく感心させられる。
「うぁぁぁぁぁぁグラディアートルスピン!」
人間ゴマと化したグラディアートル、あまりの速さがため人としての姿が見えない。回転という渦巻き以外何も見えない。
「ふ、どれほど早く回転しようと所詮は人間が回っているだけ。剛剣二刀流にて葬ってくれる!」
回転してやって来るモノを見ながら、両手に剣を持ち構えるブルーノ。そうして大きく上半身をそらすと、その反動で思いっきり接近してきた回転物体に二本の剣を振り落とす。
―ガキーンー
鈍い音がした。そしてブルーノは青ざめた。グラディアートルの前進が止まらないあげく、より一層ギューイン危険な速度で回りだした事。それにより剣の一本がひび割れを起こす。
「い、いかん」
慌ててもう一本をグラディアートルから離し、自らもジャンプして一旦仕切りなおしとする。
「グラディアートル……貴様、物の怪か!」
爆走スピンを続けているグラディアートルにブルーノはあきれた。それで目が回らないのは特異体質だとかなんとかブツブツ言ってから、突然に両腕をバッと横伸ばしにした。そうして右手の剣もクイっと水平にする。
「グラディアートルのスピンを見てなるほどと思った。だったらそれ、この我も応用させてもらおう。多少目が回ったとしても、それでも戦いに負けない方をブルーノは選ぶ。ブルーノスピン!」
グワーッとブルーノが回転十字を始めた。ギュワァァァァとアスファルトが削られるような音が鳴りだす。
「スピンにはスピンだ、グラディアートル!」
2人の男がスピン同士でぶつかり合う。きれいな月の下、デカい渦巻きが何度もぶつかり合うという、奇妙な絵面が展開される。
(い、いかん……目が回りそうだ)
ブルーノ、この流れはちょっとまずいと思った。そこでこう考える。同じスピンでぶつかるなら、上から下に直撃というカタチを食わらせればいいのではないか? それであれば……上の方が勝つのではないか? と。
「よし、勝負だグラディアートル!」
言ったブルーノの回転が空に舞い上がり始めた。まるで天に召される渦巻きという感じであるが、ずいぶんとまぁ……ってくらい高くに位置したら、そこから勢いよく降下を開始。
「なんの、飛翔体アタック!」
グラディアートルの回転も下から上に勢いよく上がり始めた。
「な、なにぃ!」
この展開は予想していなかったブルーノ、しかし今さら進路変更も逃げもできない。出来るとすれば、敵より激しく回って勝利の粉砕をゲットするだけである。
「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
むさ苦しい男同士の声が落下と上昇で響き、そして夜空を一瞬変色させるくらいの激しい衝突を成す。
ハタ! っと回転を止めた2人が地面に着地。どっちだ、どっちが勝ったんだ! という空気が数秒流れた後、ブルーノが星空を見上げ悲し気な声でつぶやいた。
「あぁ……ビアンカ……」
ブルーノがばったりと地面に倒れる。口から血を流し、目からは涙を落とし、石板に刻まれるのだなと自分の終わりを想う。そこにグラディアートルがやってきて、かがんだのでブルーノは最後の力を振り絞って言う。
「グラディアートル……」
「なにか」
「よ、余計なお世話かもしれないが……お、おれからアドバイスを」
「なんだ」
「す、好きな女には……思いを寄せる女には熱く当たれ。自分という存在が消えない内に、後悔がないように……」
「あぁ……わかった、そのアドバイス、ありがたく頂こう」
「ぅ……」
こうして両目を閉じたブルーノの体が石板に吸収され、ブルーノという名前が刻まれるのであった。
「閻美殿、無事に戦いは終わりました」
立ち上がったグラディアートル、3人に目をやり、一人背中を向けている閻美に伝える。
「あ、あぁ、そうか」
閻美、カンベンしてくれよもうって顔で深いため息を。それを面白いと思ったのか、ニヤニヤ顔のかすみ、閻美の横に立ち言ってやる。
「閻美さん、ほら、旦那さんに振り向いてあげないと!」
するとウグァっと顔を赤くした閻美、情け容赦なくかすみの頬を両手で思いっきり、それこそピザのチーズを引き延ばすかのごとく引っ張る。
「誰が旦那だ! 余計なことを言うな!」
「あいたた、痛い、痛い、ほんとうに痛い……」
かくして息吹たちの対戦相手は残り一人となった。だからして当然、息吹が前に出る。
「さて、今度はおれの番だ」
一方、仲間全員が石板に刻まれ一人となったカルロスもまた、同じ事をつぶやいて前に進んだ。
「いよいよおれの出番かぁ」
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