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165・キャラクターの反乱バトル9
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165・キャラクターの反乱バトル9
「よぉ、作者」
ドアを開けた書矢にカルロスが言った。
「う……」
マジでカルロスだ……などと思いながら書矢は部屋の床に座った。そうして自分が作った小説の主人公であるカルロスと向き合う。
「カルロスがなんの用だ?」
緊張しながらやってきた理由を問う書矢。
「いやぁ、不満なんだよ、もうあふれんばかりに不満だよ。このカルロス、欲求不満で死にそうだ。よって作者に物言いをしたくて出てきた」
言い終えるとスクっと立ち上がるカルロス、冒険者マントに身を包みながら作者を見下ろし、おのれが抱く不満をひとつずつ並べていく。
「作者よぉ、おれっていつまで意識不明でいればいいんだよ。ありえねぇだろう、だっておれ主人公なんだぜ? そのおれがバトルで敗北して意識不明とか、それは一般常識に対する挑戦みたいなモノだろう」
あ、やっぱりそれか……と思った書矢、本日アップするエピソードでカルロスは復活すると教えてやる。
「つまりさ、今日の分で復活するから明日からはまた以前のとおり強いカルロスとして活躍してもらうつもり」
これで話は無事に終わると書矢は思った。ところがカルロスの不満は続くらしい。
「復活するのはいいけどよぉ、おれのキャラとか設定とか変更してくれないかなぁ」
「変更? なんで!」
「なんでって……マジにクソにつまらねぇから。おれさぁ、設定では20歳なんだよなぁ。なのにどうよ、妙にマジメっぽくまっすぐな人間ってイメージを押し付けられたあげく、性欲と無縁の凛々しい男とかさせられる。ありえぇねんだよ、ハッキリ言ってこのキャラクターイヤなんだよ」
「え、えぇ……」
「だってよぉ、ヒロインのアデリーヌとかよぉ、なんか適度にかわいくて巨乳っぽい。それがおれにべったりしているんだぜ? ふつうなら食いたくなって当然だろう。なかなか旨そうな体とか思って見ているんだけど、性欲を持たない男みたいに演じさせられるから食えない……」
「何を言っている、カルロスはそんな男じゃないんだ!」
「それそれ、それがうざいんだよ。なんだよ、カルロスはそんな男じゃないんだ! って。おれにも射精させろよ、ハッキリ言うまでもなく溜まってるんだよ。いつになったら射精させてくれるんだと待ちわびているんだよ」
「か、カルロス、そんな事を言ったらおまえのイメージが崩壊するぞ」
「いいよ、人生たのしい方が得だ。イメージとやらのせいでつまらないのは窒息しそうだ。な、だからさ、アデリーヌかビアンカのどちらか、なんなら両方でもいい。おれとセックスするって展開を書けよ。ビアンカの場合だったらパイズリって描写も入れろよ? もちろんそのまま乳に発射させろよ? それで3Pとか出来れば、おれはごちそうにありつけて満足 。それこそ主人公の特権ってものだろう?」
なんという事だろう、かっこういい男としてイメージして書きまくっていたカルロスだというのに、作者もびっくりなゲスキャラとしてしゃべりまくるではないか。
「ふざけるな!」
バッと勢いよく立ち上がった書矢、おまえは何もわかっていない! と叫びカルロスをにらむ。
「いいか、カルロス。おまえはキャラ、おれは神。おまえの世界なんておれがおれのために使うただの背景。だからおまえはおれが思うように動くしかない。それがおまえのこなす役割。アデリーヌを食いたい? ビアンカでパイズリをしたい? ダメに決まっているだろう、なぜならおまえは主人公だから、だからダメ何だ」
「なんでだ、主人公だから特権で女を食いまくるんじゃないのか? 納得できないぞ」
「主人公は崇高であるべきなんだ。かっこうよく、そしてつよく、そしてやさしい。女に言い寄られてもゲスな感情を持たない聖人君子であるべきなんだ」
「いや、だからさぁ、作者……おまえの理想を押し付けんなよ。実際のおまえはどうなんだよ? 見た感じモテなさそうだから彼女とかいないんだろう? 女にモテるってありえないってやつだろう? でも男だから性欲はあるわけで、きっと何かで射精しまくりのはず。おまえだけそんな風にやりたい放題やって、なんでおれだけ聖人君子なんだよ」
「決まっている!」
「なんだ?」
「小説を成功させるためだ。おまえはそのために生まれた、だから神に歯向かうな、神に異論を唱えるな」
「成功って……おれが聖人君子でよろこんでいる奴がいるのか?」
「読者はおまえをかっこういいと思っている。特に女性読者はカルロスを男らしいと思っているんだ……多分」
「バカじゃねぇの、その女読者を連れて来いよ、おれの熱いダイナマイトをぶち込んでやるからさ」
「いい加減にしろ!」
叫びにぎった手でカベを叩きハァハァとやる書矢だった。そしてダメだ、絶対にダメだとくり返す。
「作者、おまえの名前は?」
「お、おれは書矢だ」
「だったら書矢、お互いの折り合いとかどうよ?」
少し後ずさりしたカルロス、突然に剣を出しそれの先を書矢の顔面に向ける。そしてわずかばかりの願いは聞いて欲しいなぁと声にする。
「なんだ、わずかばかりの願いって」
「おれが復活するとき、目覚めが悪くてちょっとトチ狂うって流れにしろ、そうしておれが暴れると書け」
「はぁ? なんのために」
「暴れているおれをアデリーヌが止めようとするが、暴走するおれはアデリーヌを押し倒し乳を揉んで服をやぶいて裸にし、挿入直前までいくと書け」
「な、なにを言っているんだ……」
「でな、そこにビアンカが駆けつけて言うんだ。カルロス、しっかりしろ! とか。そうしてビアンカはおれを落ち着かせるため、全裸になってあの爆乳におれを抱く。そうして少しの間、おれはビアンカに抱かれながら乳をねだってゆっくり落ち着くという描写を入れろ、たっぷりな、5000文字くらい使って」
「ダメに決まっているだろう……」
「なぜだ!」
「そ、そんな事をしたら……カルロスのイメージが全崩壊する」
「おれは誰にどう思われても気にしないぞ」
「作者であるおれが困るんだよ! おれは小説家になりたいんだ、だからこの作品を成功させたいんだ。文句あるか!」
「だが、このカルロスも欲求不満で苦しいんだよ!」
部屋の中にピリピリっと緊張感が漂う。カルロスはどうしても、まずは少しだけでもおいしい思いをさせろと引かない。
「おいしい思いとか言っても……セックスはダメだ」
「だったら折り合い。目覚めが悪くてアデリーヌを全裸にしてしまうくらいは、そのくらいはさせろ。ビアンカの乳に甘えるでもいいぞ」
「く……」
「どうなんだ書矢、ノーなら首を斬る」
「わ、わかった……許される範囲内で……やってみる」
「ほんとうだな? もし復活しても相変わらずだったらまた来るからな?」
「おれは作者で神だぞ、神を疑うな」
「わかった、この場はこれで引き下がろう」
こうしてカルロスは剣を下ろした。じゃぁな! とか言って、またパソコンの中に吸い込まれるようにして姿を消した。
「ハァハァ……くそ……どいつもこいつも、キャラクターの分際で作者にクレームばかり入れやがって! カルロス、おまえ見損なったぞ、おまえがそんなキャラだったなんてがっかりだ!」
なぜ神が苦悩せねばならないのだ! と思いつつ、首を斬られては敵わないってことで、また小説の改変をする事となる。だから嘆き色に満ちた声で愚痴らずにいられない。
「なんかもう……だんだん小説が壊れてきた……おれは小説家になりたいと思うだけなのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ」
「よぉ、作者」
ドアを開けた書矢にカルロスが言った。
「う……」
マジでカルロスだ……などと思いながら書矢は部屋の床に座った。そうして自分が作った小説の主人公であるカルロスと向き合う。
「カルロスがなんの用だ?」
緊張しながらやってきた理由を問う書矢。
「いやぁ、不満なんだよ、もうあふれんばかりに不満だよ。このカルロス、欲求不満で死にそうだ。よって作者に物言いをしたくて出てきた」
言い終えるとスクっと立ち上がるカルロス、冒険者マントに身を包みながら作者を見下ろし、おのれが抱く不満をひとつずつ並べていく。
「作者よぉ、おれっていつまで意識不明でいればいいんだよ。ありえねぇだろう、だっておれ主人公なんだぜ? そのおれがバトルで敗北して意識不明とか、それは一般常識に対する挑戦みたいなモノだろう」
あ、やっぱりそれか……と思った書矢、本日アップするエピソードでカルロスは復活すると教えてやる。
「つまりさ、今日の分で復活するから明日からはまた以前のとおり強いカルロスとして活躍してもらうつもり」
これで話は無事に終わると書矢は思った。ところがカルロスの不満は続くらしい。
「復活するのはいいけどよぉ、おれのキャラとか設定とか変更してくれないかなぁ」
「変更? なんで!」
「なんでって……マジにクソにつまらねぇから。おれさぁ、設定では20歳なんだよなぁ。なのにどうよ、妙にマジメっぽくまっすぐな人間ってイメージを押し付けられたあげく、性欲と無縁の凛々しい男とかさせられる。ありえぇねんだよ、ハッキリ言ってこのキャラクターイヤなんだよ」
「え、えぇ……」
「だってよぉ、ヒロインのアデリーヌとかよぉ、なんか適度にかわいくて巨乳っぽい。それがおれにべったりしているんだぜ? ふつうなら食いたくなって当然だろう。なかなか旨そうな体とか思って見ているんだけど、性欲を持たない男みたいに演じさせられるから食えない……」
「何を言っている、カルロスはそんな男じゃないんだ!」
「それそれ、それがうざいんだよ。なんだよ、カルロスはそんな男じゃないんだ! って。おれにも射精させろよ、ハッキリ言うまでもなく溜まってるんだよ。いつになったら射精させてくれるんだと待ちわびているんだよ」
「か、カルロス、そんな事を言ったらおまえのイメージが崩壊するぞ」
「いいよ、人生たのしい方が得だ。イメージとやらのせいでつまらないのは窒息しそうだ。な、だからさ、アデリーヌかビアンカのどちらか、なんなら両方でもいい。おれとセックスするって展開を書けよ。ビアンカの場合だったらパイズリって描写も入れろよ? もちろんそのまま乳に発射させろよ? それで3Pとか出来れば、おれはごちそうにありつけて満足 。それこそ主人公の特権ってものだろう?」
なんという事だろう、かっこういい男としてイメージして書きまくっていたカルロスだというのに、作者もびっくりなゲスキャラとしてしゃべりまくるではないか。
「ふざけるな!」
バッと勢いよく立ち上がった書矢、おまえは何もわかっていない! と叫びカルロスをにらむ。
「いいか、カルロス。おまえはキャラ、おれは神。おまえの世界なんておれがおれのために使うただの背景。だからおまえはおれが思うように動くしかない。それがおまえのこなす役割。アデリーヌを食いたい? ビアンカでパイズリをしたい? ダメに決まっているだろう、なぜならおまえは主人公だから、だからダメ何だ」
「なんでだ、主人公だから特権で女を食いまくるんじゃないのか? 納得できないぞ」
「主人公は崇高であるべきなんだ。かっこうよく、そしてつよく、そしてやさしい。女に言い寄られてもゲスな感情を持たない聖人君子であるべきなんだ」
「いや、だからさぁ、作者……おまえの理想を押し付けんなよ。実際のおまえはどうなんだよ? 見た感じモテなさそうだから彼女とかいないんだろう? 女にモテるってありえないってやつだろう? でも男だから性欲はあるわけで、きっと何かで射精しまくりのはず。おまえだけそんな風にやりたい放題やって、なんでおれだけ聖人君子なんだよ」
「決まっている!」
「なんだ?」
「小説を成功させるためだ。おまえはそのために生まれた、だから神に歯向かうな、神に異論を唱えるな」
「成功って……おれが聖人君子でよろこんでいる奴がいるのか?」
「読者はおまえをかっこういいと思っている。特に女性読者はカルロスを男らしいと思っているんだ……多分」
「バカじゃねぇの、その女読者を連れて来いよ、おれの熱いダイナマイトをぶち込んでやるからさ」
「いい加減にしろ!」
叫びにぎった手でカベを叩きハァハァとやる書矢だった。そしてダメだ、絶対にダメだとくり返す。
「作者、おまえの名前は?」
「お、おれは書矢だ」
「だったら書矢、お互いの折り合いとかどうよ?」
少し後ずさりしたカルロス、突然に剣を出しそれの先を書矢の顔面に向ける。そしてわずかばかりの願いは聞いて欲しいなぁと声にする。
「なんだ、わずかばかりの願いって」
「おれが復活するとき、目覚めが悪くてちょっとトチ狂うって流れにしろ、そうしておれが暴れると書け」
「はぁ? なんのために」
「暴れているおれをアデリーヌが止めようとするが、暴走するおれはアデリーヌを押し倒し乳を揉んで服をやぶいて裸にし、挿入直前までいくと書け」
「な、なにを言っているんだ……」
「でな、そこにビアンカが駆けつけて言うんだ。カルロス、しっかりしろ! とか。そうしてビアンカはおれを落ち着かせるため、全裸になってあの爆乳におれを抱く。そうして少しの間、おれはビアンカに抱かれながら乳をねだってゆっくり落ち着くという描写を入れろ、たっぷりな、5000文字くらい使って」
「ダメに決まっているだろう……」
「なぜだ!」
「そ、そんな事をしたら……カルロスのイメージが全崩壊する」
「おれは誰にどう思われても気にしないぞ」
「作者であるおれが困るんだよ! おれは小説家になりたいんだ、だからこの作品を成功させたいんだ。文句あるか!」
「だが、このカルロスも欲求不満で苦しいんだよ!」
部屋の中にピリピリっと緊張感が漂う。カルロスはどうしても、まずは少しだけでもおいしい思いをさせろと引かない。
「おいしい思いとか言っても……セックスはダメだ」
「だったら折り合い。目覚めが悪くてアデリーヌを全裸にしてしまうくらいは、そのくらいはさせろ。ビアンカの乳に甘えるでもいいぞ」
「く……」
「どうなんだ書矢、ノーなら首を斬る」
「わ、わかった……許される範囲内で……やってみる」
「ほんとうだな? もし復活しても相変わらずだったらまた来るからな?」
「おれは作者で神だぞ、神を疑うな」
「わかった、この場はこれで引き下がろう」
こうしてカルロスは剣を下ろした。じゃぁな! とか言って、またパソコンの中に吸い込まれるようにして姿を消した。
「ハァハァ……くそ……どいつもこいつも、キャラクターの分際で作者にクレームばかり入れやがって! カルロス、おまえ見損なったぞ、おまえがそんなキャラだったなんてがっかりだ!」
なぜ神が苦悩せねばならないのだ! と思いつつ、首を斬られては敵わないってことで、また小説の改変をする事となる。だから嘆き色に満ちた声で愚痴らずにいられない。
「なんかもう……だんだん小説が壊れてきた……おれは小説家になりたいと思うだけなのに、なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ」
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