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161・キャラクターの反乱バトル5
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161・キャラクターの反乱バトル5
「いやぁ、書矢……最近のおまえ小説いい感じじゃんかよ」
本日、午後の3時に無名作家の作品をホメたのは、ついちょっと前に同人の小説をきびしく批判した友人。
「あぁ……そう」
ホメられたというのに書矢の顔は浮かない。白いテーブルの上を見つめる目は、心ここにあらずそのもの。
「なんだよ、どうしたんだよ、前の批判を気にしているのか? でも、いまはちがう。おまえは進化したってホメるよ、おれは」
友人曰く、書矢の小説に劇的な展開が生じた事におどろいたという。どうせ他と同じような事ばかり書くのだろうと思いながらチラっと見てみたら、事もあろうに主人公のカルロスがバトルに敗れ意識不明となった。そうしてヒロインであるアデリーヌが現在は主役として大活躍中。
「いやいや、おれアデリーヌがめっちゃ好み。ああいう女子がいいんだって、だって他に似たようなキャラはいそうでいないから」
友人は惜しみなく褒め称える。しかし書矢の表情はとても疲れた感じで、この世の日陰から出られないみたいな感じですらある。
「どうしたんだよ、なんかあったか?」
「いや……何もない。ただ……」
「ただ?」
「売れる小説を目指していたのに、売れないであろう方向に舵を切った。もしかして人生失敗したんじゃないかって、最近は憂鬱で」
「いいじゃねぇか、今の方が絶対にいいって。友人であるおれは今の内容なら応援する。な? 友人が応援するって言ってるんだ、たった一人でも味方がいるなら、そいつのためにがんばろう! って思えばいいじゃないか」
書矢は話を聞いていて思った。友人の言っていること……正論。だけど、報われないと思うキモチは拭えず……と。
表向き、おれは他人と同じ事はしないんだ! なんて格好をつけている。でも心の中では、すごい損をしているような気がして憂鬱が友だちになってしまった。最近はもう準ノイローゼみたいな状態で小説を書いている。
「おいおい書矢……おまえだいじょうぶか?」
「あぁ……うん、だいじょうぶ」
「そんなにしんどいんだったらさ、ちょっと休載でもしたらどうだ? どうせ素人なんだし、サボっても罰は当たらないって」
「いや……そういうわけにはいかない」
「どうして?」
「早く読みたいと思って待ってくれている人がいる。その信頼を裏切ったらすぐ読者数などが減って二度と戻らない」
「読者数かぁ……いっそのこと……」
「うん?」
「すべての読者なんかいらないと思ってやってみたらどうだ? 0になったらガッツポーズを取ってみるとか」
「そういう考えもあるか……」
目が死んじゃっているという書矢、コーヒーを飲み終えたら友人とバイバイする。友人は遊びに出かけたいと思っていたようだが、この無名の小説家にはそんなエネルギーがまったくない。
「あぁ……見るのが怖い……」
家に帰りパソコンの電源を入れてアップしている小説の情報を開く。そうしてズーンと深く沈むってキブンを満喫。
ブックマークの大幅な減少止まらず。PV、ユニーク共に下降線大好きで上昇する兆し無し。レビューにはどぎつい批判が毎日てんこ盛り。やわな真剣たる無名作家の心はもうポッキーみたいにポキっとへし折られそう。
「このままじゃぁ……書籍化の夢が遠のく……なんだかんだ言っても、女を主人公にして暴れさせてもダメなのか。アデリーヌがかわいいとか言っていた読者の奴らにしたって、アデリーヌがメインで物語を書くと離れていく。なんだよ、おまえらってほんとうにワンパターンなモノばかり求めるんだな。おまえらがそんなだから、おまえらがそんなだから……」
悲しくなる、どんどん心の水分が抜けて落ちていく。このまま死なせてくださいなんて言い出しかねないほど気が滅入る。
「アデリーヌが主役で活躍するエピソードはいつか終わりにしてカルロスを復活させる。だけど早くそれをやりたいからって手抜きな事をするわけにもいかない。アデリーヌが主役で活躍するエピソードっていうのは……えっと、後70本くらいの予定。つまり後2ヵ月ちょいか。それまでに読者が全員消えてしまうかもしれないな」
ハハっと心が壊れたような顔で渇いた笑みを浮かべる。もうどうでもいい、今どきの世界で小説家なんて目指す方がまちがっていた……とつぶやきかけた時だった。ふっとひとつの考えが浮かぶ。
「待てよ……読者のやつらって男の主人公でなきゃイヤだというけれど硬派ってわけじゃない。こいつら絶対エロには弱いはず。そうだ、エロで釣ればいいんだ。文句抜かしているやつらもオナニーのネタを与えてやればシコシコ黙るはず、それどころかおれにひれ伏すんじゃないかな」
死人みたいな感じが少しだけ生き返ったようになって、書矢はイスに座って机上のノートパソコンをにらめっこ。
「アデリーヌが戦う相手にレイプされるっていうのは……これはまずいかなぁ。これをやると大切なモノが消えるって気がする。それに後でアデリーヌが怒り狂っておれの所にやってきそうで怖い」
無名作家は腕組みをして考えた。読者という連中を引き留めるために、どういう風にエロを混ぜ込もうかなと。
「あっと、閃いた!」
急に元気になってイスから立ち上がる。そして腕組みをやり直して天井を見上げて確認するようにつぶやく。
「小説に登場するのはアデリーヌとカルロスだけじゃない。そうだ、脇役がいた。忘れていた、脇役こそ捨て駒として重要な資源じゃないか。こいつらを汚そう。どうして気づかなかったのだろう、脇役の2人にドロを塗ればいいんだ。そうすれば読者もオナネタができたって喜ぶはず。
書矢、脇役数人のなから主役に近い2人をチョイス。まず女性の方はビアンカという。
「ビアンカ……」
ビアンカはアデリーヌより背が高く爆乳で力もつよい。そしてカルロスにひそかな想いを寄せているが、ただの脇役なのでアデリーヌより目立つ事はない。何よりプライドが高いので基本的にはつまらない女。だから逆にいえば、こういう女を汚せば盛り上がるんじゃないかと考えついた。
「いいねいいね!」
つぎに男はブルーノという。女にモテるって要素は主人公のカルロスに集中しているため、仲間想いのマジメくさった非モテの気の毒な男にとどまっている。これも使おうと思う。
「さて……だったら展開はどうするか」
作家は考えた。一応でいいからもっともらしい流れが欲しい。そうすれば後はネチネチドエロを書いて読者を喜ばせればいい。そうすれば読者数もブックマークもすべてが回復し書籍化の夢が再び近づくであろうと目論む。
「アデリーヌを助けようとしたブルーノが悪い魔法食らって頭がおかしくなり、仲間として安心しきっていたビアンカを殴り、気絶している間にそのイヤらしい体を食ってしまう……という流れがいいかな。それなら読者も納得。ビアンカは爆乳だからパイズリのシーンもたっぷり書いてやる。汚されるシーンだけで10万文字書いてやる」
フフフフフと怪しげに笑う書矢、心のすごい奥底でちょっとばかり罪悪感もある。そんなひどい事をしていいのか? そんなの人として許される事なのか? などと胸が痛まなくもない。でも彼はそういうモノを振り切るため、立ち上がって天井に向かって叫ぶ。
「ケッ、自分の作った架空キャラを汚して何が悪い。おれの小説に登場するビアンカって爆乳は現実に存在しない。作者であるおれが神、神は何をやっても許される。よし、やってやる、小説家になるためならなんだってやってやる」
こうして書矢はビアンカという爆乳キャラクターの体を、ブルーノってキャラに食わせる事にした。読者は大喜びするだろうと信じて疑わずに。
「いやぁ、書矢……最近のおまえ小説いい感じじゃんかよ」
本日、午後の3時に無名作家の作品をホメたのは、ついちょっと前に同人の小説をきびしく批判した友人。
「あぁ……そう」
ホメられたというのに書矢の顔は浮かない。白いテーブルの上を見つめる目は、心ここにあらずそのもの。
「なんだよ、どうしたんだよ、前の批判を気にしているのか? でも、いまはちがう。おまえは進化したってホメるよ、おれは」
友人曰く、書矢の小説に劇的な展開が生じた事におどろいたという。どうせ他と同じような事ばかり書くのだろうと思いながらチラっと見てみたら、事もあろうに主人公のカルロスがバトルに敗れ意識不明となった。そうしてヒロインであるアデリーヌが現在は主役として大活躍中。
「いやいや、おれアデリーヌがめっちゃ好み。ああいう女子がいいんだって、だって他に似たようなキャラはいそうでいないから」
友人は惜しみなく褒め称える。しかし書矢の表情はとても疲れた感じで、この世の日陰から出られないみたいな感じですらある。
「どうしたんだよ、なんかあったか?」
「いや……何もない。ただ……」
「ただ?」
「売れる小説を目指していたのに、売れないであろう方向に舵を切った。もしかして人生失敗したんじゃないかって、最近は憂鬱で」
「いいじゃねぇか、今の方が絶対にいいって。友人であるおれは今の内容なら応援する。な? 友人が応援するって言ってるんだ、たった一人でも味方がいるなら、そいつのためにがんばろう! って思えばいいじゃないか」
書矢は話を聞いていて思った。友人の言っていること……正論。だけど、報われないと思うキモチは拭えず……と。
表向き、おれは他人と同じ事はしないんだ! なんて格好をつけている。でも心の中では、すごい損をしているような気がして憂鬱が友だちになってしまった。最近はもう準ノイローゼみたいな状態で小説を書いている。
「おいおい書矢……おまえだいじょうぶか?」
「あぁ……うん、だいじょうぶ」
「そんなにしんどいんだったらさ、ちょっと休載でもしたらどうだ? どうせ素人なんだし、サボっても罰は当たらないって」
「いや……そういうわけにはいかない」
「どうして?」
「早く読みたいと思って待ってくれている人がいる。その信頼を裏切ったらすぐ読者数などが減って二度と戻らない」
「読者数かぁ……いっそのこと……」
「うん?」
「すべての読者なんかいらないと思ってやってみたらどうだ? 0になったらガッツポーズを取ってみるとか」
「そういう考えもあるか……」
目が死んじゃっているという書矢、コーヒーを飲み終えたら友人とバイバイする。友人は遊びに出かけたいと思っていたようだが、この無名の小説家にはそんなエネルギーがまったくない。
「あぁ……見るのが怖い……」
家に帰りパソコンの電源を入れてアップしている小説の情報を開く。そうしてズーンと深く沈むってキブンを満喫。
ブックマークの大幅な減少止まらず。PV、ユニーク共に下降線大好きで上昇する兆し無し。レビューにはどぎつい批判が毎日てんこ盛り。やわな真剣たる無名作家の心はもうポッキーみたいにポキっとへし折られそう。
「このままじゃぁ……書籍化の夢が遠のく……なんだかんだ言っても、女を主人公にして暴れさせてもダメなのか。アデリーヌがかわいいとか言っていた読者の奴らにしたって、アデリーヌがメインで物語を書くと離れていく。なんだよ、おまえらってほんとうにワンパターンなモノばかり求めるんだな。おまえらがそんなだから、おまえらがそんなだから……」
悲しくなる、どんどん心の水分が抜けて落ちていく。このまま死なせてくださいなんて言い出しかねないほど気が滅入る。
「アデリーヌが主役で活躍するエピソードはいつか終わりにしてカルロスを復活させる。だけど早くそれをやりたいからって手抜きな事をするわけにもいかない。アデリーヌが主役で活躍するエピソードっていうのは……えっと、後70本くらいの予定。つまり後2ヵ月ちょいか。それまでに読者が全員消えてしまうかもしれないな」
ハハっと心が壊れたような顔で渇いた笑みを浮かべる。もうどうでもいい、今どきの世界で小説家なんて目指す方がまちがっていた……とつぶやきかけた時だった。ふっとひとつの考えが浮かぶ。
「待てよ……読者のやつらって男の主人公でなきゃイヤだというけれど硬派ってわけじゃない。こいつら絶対エロには弱いはず。そうだ、エロで釣ればいいんだ。文句抜かしているやつらもオナニーのネタを与えてやればシコシコ黙るはず、それどころかおれにひれ伏すんじゃないかな」
死人みたいな感じが少しだけ生き返ったようになって、書矢はイスに座って机上のノートパソコンをにらめっこ。
「アデリーヌが戦う相手にレイプされるっていうのは……これはまずいかなぁ。これをやると大切なモノが消えるって気がする。それに後でアデリーヌが怒り狂っておれの所にやってきそうで怖い」
無名作家は腕組みをして考えた。読者という連中を引き留めるために、どういう風にエロを混ぜ込もうかなと。
「あっと、閃いた!」
急に元気になってイスから立ち上がる。そして腕組みをやり直して天井を見上げて確認するようにつぶやく。
「小説に登場するのはアデリーヌとカルロスだけじゃない。そうだ、脇役がいた。忘れていた、脇役こそ捨て駒として重要な資源じゃないか。こいつらを汚そう。どうして気づかなかったのだろう、脇役の2人にドロを塗ればいいんだ。そうすれば読者もオナネタができたって喜ぶはず。
書矢、脇役数人のなから主役に近い2人をチョイス。まず女性の方はビアンカという。
「ビアンカ……」
ビアンカはアデリーヌより背が高く爆乳で力もつよい。そしてカルロスにひそかな想いを寄せているが、ただの脇役なのでアデリーヌより目立つ事はない。何よりプライドが高いので基本的にはつまらない女。だから逆にいえば、こういう女を汚せば盛り上がるんじゃないかと考えついた。
「いいねいいね!」
つぎに男はブルーノという。女にモテるって要素は主人公のカルロスに集中しているため、仲間想いのマジメくさった非モテの気の毒な男にとどまっている。これも使おうと思う。
「さて……だったら展開はどうするか」
作家は考えた。一応でいいからもっともらしい流れが欲しい。そうすれば後はネチネチドエロを書いて読者を喜ばせればいい。そうすれば読者数もブックマークもすべてが回復し書籍化の夢が再び近づくであろうと目論む。
「アデリーヌを助けようとしたブルーノが悪い魔法食らって頭がおかしくなり、仲間として安心しきっていたビアンカを殴り、気絶している間にそのイヤらしい体を食ってしまう……という流れがいいかな。それなら読者も納得。ビアンカは爆乳だからパイズリのシーンもたっぷり書いてやる。汚されるシーンだけで10万文字書いてやる」
フフフフフと怪しげに笑う書矢、心のすごい奥底でちょっとばかり罪悪感もある。そんなひどい事をしていいのか? そんなの人として許される事なのか? などと胸が痛まなくもない。でも彼はそういうモノを振り切るため、立ち上がって天井に向かって叫ぶ。
「ケッ、自分の作った架空キャラを汚して何が悪い。おれの小説に登場するビアンカって爆乳は現実に存在しない。作者であるおれが神、神は何をやっても許される。よし、やってやる、小説家になるためならなんだってやってやる」
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