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香苗、巨乳になるためがんばります1

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 香苗、巨乳になるためがんばります1


 午後7時30分頃、一台の自転車がある場所の近くでストップした。その白い乗り物から降りたのは香苗であり、ふぅ……っとためいきを吐きながら正面入口へと回った。

「ここが巨乳神社かぁ……」

 出来て数年というこの神社は、ホイホイを狙ったような名前が最大のウリ。香苗の地区から少し離れたところにあって、自転車で20分くらいの移動を要求される。

「ついに来ちゃった……」

 夜のひっそり感に軽いドキドキを持ちながら、ザックザックと音を立てまっすぐ進んでいく。この巨乳神社にお参りすると、女子は巨乳になれるという。元より巨乳な女子は爆乳になることができるという。巨乳な彼女が欲しい男子は願いが叶うかも? って期待が持てるという。

「優子みたいな巨乳になりたい……ああいうおっぱいが欲しい……」

 暗い道を歩く香苗は思い出さずにいられない。本日の4時間目には体育があって、そこで毎度のように優子のブラ姿をしかとおがんだ。

 白いシャツをクッと左右に広げる優子。すると内側にある白いフルカップ(Eカップ)が、ボワンと揺れ動く。そして目線をたっぷり収納できそうな色白でやわらかそうな谷間。いつ何回目にしてもため息が漏れてしまう。そうして触りたくなるので、冗談装って揉ませてもらう。

 でも今日は優子の女神パイに対する焦がれが半端なかった。冗談を越えたようなキモチで、後ろから抱きつきてブラのふくらみを揉みまくってしまった。

「アホか!」

 今日はかなり本気で優子を怒らせてしまう。でもその代わり、いつもより深く多めに気持ち良さを味わえた。そして最後に……ドーン! とキブンが急降下してしまった。

「あれが自分のモノだったら……あれが自分の持ち物だったら……」

 夜風に髪の毛をサワサワされながら、左手を自分の胸に当てながら、お賽銭箱の前に到着。その箱は神々しさや古ぼけた感じではなく、軽いピンクで色っぽさをアピールしている。聞く話によると、投入する金額が多いほど巨乳や爆乳になれるらしい。男の場合はグラマーな彼女が得られるとからしい。世間ではぼったくり! とか詐欺! という声も多いらしいが。

「お金はないんだけど……巨乳になりたい」

 サイフから取り出す100円玉2枚。ほんとうは500円玉2枚を勢いよく投げ込みたいところだが、小6の財力ではそれは不可能。200円に女心をたっぷり注入して投げ込むだけ。

「優子みたいな巨乳になりたいです。よろしくおねがいします」

 クッと両手を合わせ真剣に祈りを捧げた。

「よし……これでわたしも……優子みたいになれる……はず」

 希望と納得を声にしてクルっと向きを返る香苗。するとどうだろう、夜の暗い空間にちょっとした光が発生。人の目をつぶすような輝度ではないが、それなりにまぶしく、キラーっときれいな白にちょっぴりピンク色が混じっている。

「な、なに……」

 右腕をあげ顔をしかめる香苗、得体のしれない状況に身動きを封じられる。それからちょっとしてまぶしさが消え失せていくと、ゆっくり夜の世界に目が慣れていく。そうして香苗の眼前にひとり、知らない誰かが立っている。

「や!」

 ニコっと笑ったのは巫女にしか見えない少女。自分と同じかちょっとだけ下か、そんな年齢と思われる少女が片手を小さく振って笑う。

「だ、誰?」

 ドキドキ、ドキドキ、香苗の心臓が感じる緊張は声に移される。

「わたしはここ巨乳神社の女神だよ」

「え……」

「あ、その顔! 信じてないでしょう」

「急に言われても困るっていうか……」

「わたしはミルフィーユ。巨乳神社の女神!」

 いきなり降って湧いたような展開に香苗は困ってしまった。ただの巫女じゃないの? とか、ただの中二病じゃないの? とか、どうしても相手を信じる気になれない。チンチクリンアニメキャラクターみたいな相手を信じ、巨乳になりたい願いをぶちまけるなんて恥のように思える。

「このミルフィーユはなんでもわかるんだよ。あなたの名前は香苗で、巨乳になりたいってお願いするためにここに来たんだよね? 自転車に乗ってさぁ、知っている人に見られたらどうしようって思いながら、ここまでやってきたんだよね。巨乳になったらビキニしたいとか、走りながらユッサユッサを見せびらかしたいとか、そういう事を思っているんだよね」

 そんな風に言い並べてから、えへ♪ とやるミルフィーユがいた。

「ぅ……」

 ビシ! っと言い当てられ香苗はまったく言い返せない。ゆえに相手の事をマジで女神なんだ……と思うわけだが、ひとつ言いたい事があった。

「あのさぁ、言ってもいい?」

「なに? なんでもミルフィーユに言ってごらんなさない」

「巨乳神社の女神とかいうわりには……巨乳じゃないよね」

 ふん! と腕組みをした香苗は冷ややかな目を向けてやった。巫女の衣装というのはふだん目にしないモノだ。だから事情というのはわからない。されど見た目で即判断するなら、ミルフィーユに豊かなふくらみがあるとは思えない。

「あぁ、この神社が出来てまだそんなに時間経ってないもん。いくら女神でも成長期間っていうのが必要なんだもん」

 そんな事を言いながらポッ! っと赤らむミルフィーユ。ギョッとする香苗に構わず、ちょいとばかり肌をさらけ出した。するとどうだろう、思いもしないやわらかそうな谷間が登場。

「た、谷間……」

 香苗はガクガク震え青ざめ、左の人差し指を伸ばしたまま身を固める。

「いやぁ、まだCカップかDカップって感じなんだけど、一応谷間はあるし、やわらかいし、将来はカンペキに約束されてるよ。どう? 香苗、わたしを敬う気になった?」

 ハハハハと上から目線で笑うミルフィーユ。うらうら! と挑発的なスマイルを向けられ、香苗は思わず言ってやろうかと思った。お前なんか優子に負けてるし! と。でも巨乳になるためにはネガティブな感情を捨てようと思い、ここは素直に一歩引く。

「でもミルフィーユ、なんで出てきたの?」

 2人しかいない神社をグルっと見渡し、まさかしょっちゅう出現しているわけ? と素朴な疑問を投げかけたりしてみた。

「香苗は特別なんだよ」

「特別? どうして?」

「香苗は10万人目の来訪者だから! 言うなれば記念パーソンだね」

「10万人? そんなにたくさんの人が訪れるの?」

「そりゃぁね。巨乳って言葉は女にとっても男にとってもファンタジーだから、みんなが心を捧げられる場所が必要。それがこの神社。言ってみればここは迷えるタマシイを休めるところかな」

「じゃ、じゃぁさ……いますぐわたしを巨乳にしてくれるの? 大きくてやわらかいおっぱいを与えてくれるの? EカップとかFカップとか谷間とか、そういうのをプレゼントしてくれるの?」

 一気に加速して膨大した香苗のテンション。白と赤の衣装って巫女にはげしく迫り、突進寸前の牛みたいに荒い鼻息をくり返す。

「いやぁ、それさがさぁ、そんな魔法使いみたいなことできないんだよ。もうちょい成長したらできるかもしれないけど、今は巨乳になるためのアドバイスができるってことくらいかな」

 えっへん! と高々にドヤ顔で誇るミルフィーユ。

「アドバイス? 女神が? たったそれだけ?」

 わけわかめ! とばかり、広げた両手でやれやれアクションをかます香苗だった。役に立たねぇなぁおまえは! と、口にはしないが表情で語る。

「あ、なにその顔。仮にも女神に向かって」

 くやしくて黙っていられない女神。ククっとしぶい顔をこしらえ腕組みをし、香苗は謙虚さがないねぇと、出来の悪い生徒を嘆くような声を発する。

「謙虚?」

「そーだよ、香苗はわたしのように豊かでやわらかい弾力持ってないし、谷間なんて無縁生物。それなのに女神をアドバイスを見下し、努力もせずおいしいモノだけ食べようとする。それは女のあるべき姿じゃない。そんなの傲慢で腹を空かせたメス狼みたいなモノよ」

 罵倒される香苗の頬に、さみしげな夜風が当たる。ミルフィーユの勝ち! とかいう感じの声が、どこからともなく聞こえてきそう。

「じゃ、じゃぁ教えてもらおうかな」

 素直な女の子って姿勢になったつもりの香苗。

「香苗、それって人に教えを乞う態度じゃない。もっと頭を下げて、先生お願いします! って顔で、教えてください! って尊敬の念を込めて口にするべきじゃないかなぁ」

 ケケケと笑うミルフィーユ、腕組みをし斜に構え香苗に謙虚な態度を示すよう促す。

「うぎぅ!」
 
「あ、なにその反抗的な顔。別にいいんだよ? わたし香苗がおっぱいに恵まれなくても知ったこっちゃないもん。わたしは香苗とちがって将来巨乳が約束されてる。わざわざ香苗のために苦労なんかしなくても、それでも十分シアワセになれるんだから」

 へへへ♪ とビクトリー笑顔を見せつけるミルフィーユ。なんてうざい女神だ! と思うものの、ふっくら豊かでやわらかい乳が欲しいので、ここはプライドを後ろに回す。

「ど、どうか教えてください。お願いします!」

 めちゃくそにムカムカしながらも、香苗は謙虚な態度で教えを乞うた。

「よろしい、苦しゅうない。気の毒な香苗のために、このミルフィーユが先生になって進ぜよう」

 おちゃらけ度いっぱいのミルフィーユは、では香苗の家に連れて行ってもらおうかなと言い出す。それを聞いて香苗は慌てて両手を否定振りする。

「ダメ、家は家族がいるし、みんな冗談通じないんだよ」

「だいじょうぶ! 手の平を出してみて」

「手のひら? こう?」

 香苗が左手の平を前に出す。するとボン! って効果音が発生してミルフィーユの姿が消えた。代わりにミルフィーユそのまんまってかわいいキーホルダーが手に乗っかっている。

「ね? かわいいでしょう? これならだいじょうぶだよ」

「かわいって……自分で言うか……バカ女神」

「香苗、なんか言った?」

「な、なにも言ってない!」

 こうして香苗はキーホルダーに化けた女神を持って自宅に戻って行った。ミルフィーユはうざいと内心思いつつ、これで巨乳になれるんだ! とワクワクドキドキしながら我が家へと返っていった。
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