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62・男同士の会話
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「聞いて欲しい話があるんだ、男同士の会話がしたい」
燃得が望にそう言ったのは、午前中のちょっとした空き時間というスキマの事だった。男同士の会話というところに多少の疑りと同時に、期待感的なモノを抱かされた望、だったら学校が終わってから話をしようと取り決めた。
「で、なんだよ話って」
学校が終わった午後3時40分、質問する望はマックのイスに腰掛ける。Sサイズのコーラを白いテーブルの上に置くと、さぁ男同士の話というのをしようじゃないか! って顔を向かいのやつに見せつける。
実際のところ、望は燃得が何を言い出すのかちょっと興味があった。なぜなら現在の燃得という男子は、望の彼女である翠名の姉こと佐藤椎名に夢中となっている。ほんとうなら椎名に夢中で男なんてどうでもいいとなるはず。それからすると男同士の話を求めてくるのはよっぽどだと思うことはできた。だから望は自分の彼女とイチャラブするとか、家に帰ってゲーマーになるとかいう時間を燃得に譲ったのだ。
「いや、えっとだな……」
燃得、ガラにもなくえへえへとテレ笑いをする。そういう顔を見ると軽い突っ込みを入れたくなるが、それをせず燃得が言い出すのを待つ望。
「実はな、お姉さんの事を想って小説を書いたりしたんだ」
「小説? 燃得が? そんな立派な趣味があったのか!」
「悪かったな、立派な趣味が似合わないキャラクターで」
「いや、いいから話を続けろよ」
「お姉さんを想いながらエロ小説を書くと、マジで激熱となってめちゃくちゃオナれる。これはもうやめられない! と夢中になっていたら……」
「いたら?」
「エロ小説を書いているって事がお姉さんにバレた」
「ほぉ、それはそれは」
「なんだよ、その、あからさまに面白がっているような反応は」
「いいから話を続けろ」
「チッ……」
燃得、自分のコーラをグイグイっとストローで吸い上げて一息入れてから、お姉さんに提出せよと求められている現状を語りだす。
「提出?」
「へぇ、それはそれは」
「おもしろがってんじゃねぇよ望、こっちは大変なんだぞ」
「何が大変なんだよ」
「だ、だってさ、どんな小説を書いているの? って聞かれた時、ドエロ小説を書いてヌキまくっていますとか言いづらいじゃん」
「じゃぁなんと言ったんだ?」
「ちょいエロの小説を書いているって言った。そしたらお姉さんが、書いている小説を見せろと言ってきて断れない流れになった。ちょいエロくらいならかまわないから見せろって言うんだよ、お姉さんが」
「書けばいいじゃん、見せればいいじゃん」
「それが出来ないから苦労してるんだよ」
「なんでできないんだ?」
「そ、それはおまえ……」
燃得、少しイジけた感じになってネチネチ愚痴りだした。いとしい女子と愛し合うシーンを書くだけなら、要するに山場だけ書くならめっちゃ簡単だけれど、そこにストーリーを混ぜるとなればめちゃくちゃむずかしいんだとこぼす。
「ストーリーってそんなにむずかしいか?」
「はぁ? かんたんにできるっていうのかよ。だったら何か言ってみろよ望」
「いやまぁ、たとえば……幼馴染みで子ども扱いされている男子が、もうガマンできない! と暴走キャラになって、それが逆に女子の心をつかんで……みたいな話はどうなんだ?」
「で、でもよ、それって単純じゃん……」
「別に単純でもいいじゃんかよ。ってか燃得……いい格好しても報われないと思うぞ。こんな言い方をすると悪いかもしれないけれど、エロ小説に崇高な意識を持ち込む方が間違っているような気がする」
「く……」
燃得、いま非常にくやしいと思った。ゲーマーの望が小説の方をよく知っているみたいな感じになると、エロ小説を書きまくっている自分はどうすればいいんだ! 的な、言うなればライトなみじめ感に襲われてしまう。
「おれが思うに解決策というか……突破口はひとつ……」
「え、なんだよ、教えろよ、早く言えよ望」
「いっそ開き直れ。自分とお姉さんってキャラを出して、自分の素直な気持ちでドエロ小説を書いたらいいんだ」
「おまえ、他人事だと思って……」
「で、その小説を渡すとき、もしくは後で感想をもらうとき、どちらかの時に言えばいいんじゃないか? これがいまの自分の精一杯です。これしかできないから、その代わりに正直な自分を徹底的に詰め込みました! と」
望が言い終えると燃得はちょっと黙ってしまった。いつもなら望のくせにかっこういいこと言ってんじゃねぇよと跳ね返しそうなモノだが、ボディー攻撃を食らってお腹が痛くなってきたみたいに勢いが弱まる。
「望……」
「なんだ?」
「ドエロ小説に登場するのを望と翠名にしたら怒るか? 翠名はすごい巨乳で望は毎日パイズリして欲しいとせがんでいるみたいな内容」
燃得はここでちょっと息抜きをしたいと思っていた。望が顔を赤くして怒るだろうって事を期待しての発言だった。
「別にそれでもいいけどさ……それでだいじょうぶなのか、燃得」
「え?」
「ここまでの話からして……おれはこう思うんだ。少なくとも今の燃得は、自分とお姉さんをモデルにした一人称でエロいシーンを書く! って事しかできないんだろう。だからこそ、これがおれなんだ! と思いっきり燃えたらいいじゃんか。でも、キャラを望と翠名にしたら、多分……燃得のお姉さんに対する心とか勢いを100%詰め込むって事ができなくなるんじゃないかな」
「望……」
「なんだ?」
「おまえ、いつからそんな大人になったんだよ」
「いやまぁ、思った事を言っただけだ、別に大人じゃない」
「おまえ……佐藤と初体験しただろう。だから大人になったんだろう?」
「してないつーんだよ」
とまぁこんな会話をやったが、燃得にとっては思ったより充実した時間だった。コーラのSサイズ一杯で粘れる時間は短いが、それを有効に活用できたという気がしていた。
「望……」
マックを出てあっちとこっちで進行方向が別れたとき、立ち止まった燃得がかすかにテレながら言った。
「時間取らせて悪かったな、でも話を聞いてもらってよかった。おれはおれの精一杯でがんばる!」
ごくたまに発生するこの素直とかしおらしい感じ、それは以前から一部の女子たちから火高燃得がたまにかわいく思えると評価されているところだった。
「がんばれよ」
去り行く燃得の後ろ姿に声をかけると、燃得は振り返ることなく手を振って応えた。その姿からは、もしかすれば燃得とお姉さんってカップルが近いうちに誕生するかも! なんて思わせた。
「よし、おれもがんばろう!」
言った望だったが、そこでくぅーっと翠名の顔とかすごい巨乳って全体像が浮かんだりした。もちろんそれは大事なモノであるが、いま自分が思っているがんばろうとは少しちがうと顔を横に振って言い直した。
「よし、おれもゲームをがんばろう!」
燃得が望にそう言ったのは、午前中のちょっとした空き時間というスキマの事だった。男同士の会話というところに多少の疑りと同時に、期待感的なモノを抱かされた望、だったら学校が終わってから話をしようと取り決めた。
「で、なんだよ話って」
学校が終わった午後3時40分、質問する望はマックのイスに腰掛ける。Sサイズのコーラを白いテーブルの上に置くと、さぁ男同士の話というのをしようじゃないか! って顔を向かいのやつに見せつける。
実際のところ、望は燃得が何を言い出すのかちょっと興味があった。なぜなら現在の燃得という男子は、望の彼女である翠名の姉こと佐藤椎名に夢中となっている。ほんとうなら椎名に夢中で男なんてどうでもいいとなるはず。それからすると男同士の話を求めてくるのはよっぽどだと思うことはできた。だから望は自分の彼女とイチャラブするとか、家に帰ってゲーマーになるとかいう時間を燃得に譲ったのだ。
「いや、えっとだな……」
燃得、ガラにもなくえへえへとテレ笑いをする。そういう顔を見ると軽い突っ込みを入れたくなるが、それをせず燃得が言い出すのを待つ望。
「実はな、お姉さんの事を想って小説を書いたりしたんだ」
「小説? 燃得が? そんな立派な趣味があったのか!」
「悪かったな、立派な趣味が似合わないキャラクターで」
「いや、いいから話を続けろよ」
「お姉さんを想いながらエロ小説を書くと、マジで激熱となってめちゃくちゃオナれる。これはもうやめられない! と夢中になっていたら……」
「いたら?」
「エロ小説を書いているって事がお姉さんにバレた」
「ほぉ、それはそれは」
「なんだよ、その、あからさまに面白がっているような反応は」
「いいから話を続けろ」
「チッ……」
燃得、自分のコーラをグイグイっとストローで吸い上げて一息入れてから、お姉さんに提出せよと求められている現状を語りだす。
「提出?」
「へぇ、それはそれは」
「おもしろがってんじゃねぇよ望、こっちは大変なんだぞ」
「何が大変なんだよ」
「だ、だってさ、どんな小説を書いているの? って聞かれた時、ドエロ小説を書いてヌキまくっていますとか言いづらいじゃん」
「じゃぁなんと言ったんだ?」
「ちょいエロの小説を書いているって言った。そしたらお姉さんが、書いている小説を見せろと言ってきて断れない流れになった。ちょいエロくらいならかまわないから見せろって言うんだよ、お姉さんが」
「書けばいいじゃん、見せればいいじゃん」
「それが出来ないから苦労してるんだよ」
「なんでできないんだ?」
「そ、それはおまえ……」
燃得、少しイジけた感じになってネチネチ愚痴りだした。いとしい女子と愛し合うシーンを書くだけなら、要するに山場だけ書くならめっちゃ簡単だけれど、そこにストーリーを混ぜるとなればめちゃくちゃむずかしいんだとこぼす。
「ストーリーってそんなにむずかしいか?」
「はぁ? かんたんにできるっていうのかよ。だったら何か言ってみろよ望」
「いやまぁ、たとえば……幼馴染みで子ども扱いされている男子が、もうガマンできない! と暴走キャラになって、それが逆に女子の心をつかんで……みたいな話はどうなんだ?」
「で、でもよ、それって単純じゃん……」
「別に単純でもいいじゃんかよ。ってか燃得……いい格好しても報われないと思うぞ。こんな言い方をすると悪いかもしれないけれど、エロ小説に崇高な意識を持ち込む方が間違っているような気がする」
「く……」
燃得、いま非常にくやしいと思った。ゲーマーの望が小説の方をよく知っているみたいな感じになると、エロ小説を書きまくっている自分はどうすればいいんだ! 的な、言うなればライトなみじめ感に襲われてしまう。
「おれが思うに解決策というか……突破口はひとつ……」
「え、なんだよ、教えろよ、早く言えよ望」
「いっそ開き直れ。自分とお姉さんってキャラを出して、自分の素直な気持ちでドエロ小説を書いたらいいんだ」
「おまえ、他人事だと思って……」
「で、その小説を渡すとき、もしくは後で感想をもらうとき、どちらかの時に言えばいいんじゃないか? これがいまの自分の精一杯です。これしかできないから、その代わりに正直な自分を徹底的に詰め込みました! と」
望が言い終えると燃得はちょっと黙ってしまった。いつもなら望のくせにかっこういいこと言ってんじゃねぇよと跳ね返しそうなモノだが、ボディー攻撃を食らってお腹が痛くなってきたみたいに勢いが弱まる。
「望……」
「なんだ?」
「ドエロ小説に登場するのを望と翠名にしたら怒るか? 翠名はすごい巨乳で望は毎日パイズリして欲しいとせがんでいるみたいな内容」
燃得はここでちょっと息抜きをしたいと思っていた。望が顔を赤くして怒るだろうって事を期待しての発言だった。
「別にそれでもいいけどさ……それでだいじょうぶなのか、燃得」
「え?」
「ここまでの話からして……おれはこう思うんだ。少なくとも今の燃得は、自分とお姉さんをモデルにした一人称でエロいシーンを書く! って事しかできないんだろう。だからこそ、これがおれなんだ! と思いっきり燃えたらいいじゃんか。でも、キャラを望と翠名にしたら、多分……燃得のお姉さんに対する心とか勢いを100%詰め込むって事ができなくなるんじゃないかな」
「望……」
「なんだ?」
「おまえ、いつからそんな大人になったんだよ」
「いやまぁ、思った事を言っただけだ、別に大人じゃない」
「おまえ……佐藤と初体験しただろう。だから大人になったんだろう?」
「してないつーんだよ」
とまぁこんな会話をやったが、燃得にとっては思ったより充実した時間だった。コーラのSサイズ一杯で粘れる時間は短いが、それを有効に活用できたという気がしていた。
「望……」
マックを出てあっちとこっちで進行方向が別れたとき、立ち止まった燃得がかすかにテレながら言った。
「時間取らせて悪かったな、でも話を聞いてもらってよかった。おれはおれの精一杯でがんばる!」
ごくたまに発生するこの素直とかしおらしい感じ、それは以前から一部の女子たちから火高燃得がたまにかわいく思えると評価されているところだった。
「がんばれよ」
去り行く燃得の後ろ姿に声をかけると、燃得は振り返ることなく手を振って応えた。その姿からは、もしかすれば燃得とお姉さんってカップルが近いうちに誕生するかも! なんて思わせた。
「よし、おれもがんばろう!」
言った望だったが、そこでくぅーっと翠名の顔とかすごい巨乳って全体像が浮かんだりした。もちろんそれは大事なモノであるが、いま自分が思っているがんばろうとは少しちがうと顔を横に振って言い直した。
「よし、おれもゲームをがんばろう!」
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