翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)

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49・燃得、執筆の苦悩タイム

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「く……」

 燃得、午後8時にパソコンを前にはげしく苦悩していた。今から90分前には夕飯が終わっており、後はガシガシストーリーのあるエロ小説を書くのだと張り切っていた。その心意気にウソはなく、晩ごはんが終わるとすぐ歯磨きをしてパソコンに向き合っていた。しかしそれが長い苦悩の原因となる。

「やべぇ、もう8時じゃんかよ……1時間20分くらいこの状態だったって事か? 1時間20分って80分って事だよな……」

 燃得は見る、現実というのを見る、直視する。モニターに映るワード画面、そこは見事に真っ白であり文字というモノがまったく存在しない。1時間20分、別名80分もの間、書きたくても書けないというおそろしい縛りを食らった結果である。

「内容……内容ってなんだ、ちょいエロの小説を書くのに必要な内容ってなんだ、それっていったい何なんだ」

 ドエロシーンだけを書いてハァハァやって、その勢いでロケット発射に持ち込みたい燃得だが、それは許されない。なぜなら恋しいお姉さんこと椎名との約束があるからだ。書いた小説を見せねばならないという、まさに命がけミッションが存在する。それを達成するためには、ただぶち込んで終わりなんて低俗なモノは許されい。

「なんか書けよ……とにかく書いてみたら動くかもしれないだろう」

 燃得は自分に言い聞かせ、なんでもいいから書いてやる! と意気込み両手の10本指をキーボードの上に置く。だがしかし、何をどう書いたらいいのかさっぱりわからない。ドエロシーンは浮かぶが、それの前後に引っ付けるべく物語というのが神に見放されたかのごとく思い浮かばない。

「えっと……ピュアな性格の燃得という少年がいて、近所のお姉さんである椎名に恋をしていて、思いっきり勇気を出して告白したらフラれてしまって、あまりのショックに暴走して椎名とムリヤリ一発……というのではダメなのか? それではダメなのか?」

 燃得は開き直ろうとした。物語なんて御大層なモノを作る必要なんてないだろうとし、エロシーンだけ燃えればいいのだ! とし、それで書き進めようとする。だがストーリーのあるエロ作品を書かねばならないという使命感が、10本指にまったく仕事をさせない。なぜなら指がこう言って反抗するからだ。

―内容のないモノを書いていいのかよ、たんに男と女がいるだけで、後はベッドでギシギシアンアンやるだけなんて、そんな糞なモノを書いていいのかよー

 燃得の指が燃得の脳と心に反逆をする。だから時間だけが無情に過ぎていく。長い、遅い、そういう風に思わせて、気がつくとあっという間にたっぷり失うという悪い魔法みたいな流れにあらがえない。

「物語を思いつくってこんなにむずかしいのかよ、かんたんに出来ると思ったのに、余裕でやってのけると思っていたのに」

 もだえる燃得、そうなのだ、椎名に小説を見せねばならないと決まった日から今宵まで、ま、その気になれば楽勝だろうと高をくくっていた。1時間もあればできるだろうと余裕をかましていた。だが今、90分以上の時間をかけて一文字も書けない自分がいる。

「く……物語って必要なのかよ……男と女なんて愛し合うためだけに生きている生物。ベッドの上の時間だけが人生であり、日常なんてただのゴミだろう」

 暴言チックな事を言いながら燃得はたまらず立ち上がる。ずっと座りっ放しで体が痛くなっていた。そこに書きたくてかけないって苦悩が加算されると、体内の血すべてが紫色になったみたいで……こう言いたくなる。頼むからもう殺してくれよ……とか。

「くそ……早くオナりたいのに……早くエロいのを書いて崇高なオナタイムに突入したいのに、いつまでこんな糞な時間を過ごさなきゃいけないんだ」

 燃得、だんだんと腹が立ってきた。そこにオナりたい願望が混ざり合うと、椎名に読んでもらうという目標なんかどうでもよくなり、とにかくオナる事が大事なんだ! と心を燃やし始める。だから別人みたいな顔になってパソコンと向き合い、つぶやいている事をそのまま勢いよく入力し始める。

「燃得……抱いて……と、椎名はシャツのボタンを外しながらそう言った。そして上半身をすごくデカいブラジャーだけって姿にして、燃得に抱かれたいと訴える目をつくる。燃得は純情だから冷静を保とうと努力するが、だんだんまっすぐな思いが大きくなっていくのを抑えられなくなっていく。そして椎名がブラジャーを外して巨乳を外に出したとき、ついに燃得の純情がバクハツ。椎名! そう声にした燃得はついに椎名を白いベッドに押し倒してしまう」

 燃得、さっきまでの不調がウソみたいに絶好調。そうだよ、そうだよ、ストーリーなんでマジでうざいだけなんだよ、男と女なんて愛し合う姿だけ描けば十分なんだよ! と、ノリノリでエロシーンを書き進める。

「ハァハァ……」

 息がキレる、ズボンの中の分身が早くオナりたいとうずく、ちょっとばかり……いや、けっこうな量の透明精液、別名「ガマン汁」も出ていてトランクスを濡らしている。この苦しさ、まるで生殺しを食らっているようだが、でもこれがたまらない。ロケット発射に踏み切る前のこの燃料投下タイムこそ男子が得るリアルロマンス。

 そして勢いよく書いている小説の中では、ついに挿入して合体する瞬間が訪れた。そして作中の燃得は、燃料棒を椎名のやさしい温もりに押し進めた。そして2人の体がひとつになって刻の揺れを共有し始める。

「あ、やべ……」

 ここでハッとこらえきれなくなった燃得が立ち上がる。そう、燃得という名前のロケットが椎名という名前の月へ向かう時間がやってきたのだ。

「ぁんぅ……」

 すんごいドロドロって状態の分身をつかむと、お姉さん、お姉さんと何回も言いながら、佐藤椎名の顔とかフォルムを思い浮かべながら、人知越えの快感に我を忘れてゲキアツモードに突入。

「も、もっとゆっくり味わいたいのに……」

 月の魅力が大きすぎる、ロケットの燃料が多すぎる、だから燃得号はたったの数分で月面を見下ろすところまでやってきた。

「お、お姉さん……お姉さん……」

 グワーっと押しあがってくるモノ、それは燃得の中にある椎名への想い。痙攣によって縮まっていく狭い通路を、大量の思いが今まさに通り抜けようとしている。

「お、お姉……あんぅぐぅ!!!!」

 ロケットが……特別な痙攣タイムに入った。他では決して生じないその特殊な痙攣は、いとしい月への想いを勢いよく飛び出させることにつながる。

「ぁんぅく……ぅ!!!」

 燃得はその信じられない快感の中で必死に妄想した。いま、自分は椎名と結ばれている。いま、自分は椎名の温もりに包まれながら想いを伝えているのだと。

「あんぅう!!」

 ロケットが月に衝突。砕け散り大爆発。ロケットは跡形もなく宇宙空間に消えて、後は静寂という時間に塗り替えられるのを待つだけ。

「ハァハァ……すっげぇ、何このキモチよさ、エロ小説書きながらオナるって、ぜいたくな食事をしながら営むみたいなもんじゃん、最高だわ、これマジで最高だわ」

 大満足な燃得、ビクンビクンって余韻に顔を赤らめながら、床にあるすごい水たまりみたいなモノを見る。それはそれはすごい量であるが、それを椎名と愛し合った結果とかもうそうすると、男に生まれてよかったなぁって結ぶことが出来てしまう。

 が、しかし……すさまじい快感を得て、熱い余韻を通り抜けたら、男子は神のクリーニングを受けきれいに満たされる。そして脳みそが賢者タイムというクッソつまらないモノに支配される。

「ふぅ……」

 ソファーに寝転がる燃得、満たされた後にやってくるむなしさから逃げられず、うつろな目で天井を見上げる。

「やっちまった……ストーリーのあるエロ小説を書くつもりだったのに、またエロシーンだけ書いてオナってしまった」

 今なら書けるんじゃないか? 満たされたこの状態であれば、つまらないストーリー部分を一生懸命書けるのではないか? と思わなくない。だから起き上がってマジメに執筆しようと思う。

「く……しかし……」

 起き上がりかけた体が再び横になってしまった。なぜなら賢者タイムで冷静になると、つまらないストーリーを書こうと思ってもエネルギーが足りない。グワーっと勢いよく書くだけの燃え上りができない。だから燃得は見えない誰かに不満をぶちまけるようにぼやくのだった。

「くっそぉ……全然燃えない、まったくやる気が起こらない。なんだよ、エロ過ぎてもダメ、かしこくなってもダメなら、いったいどうやって生きていけっていうんだよ」
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