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3・さぁ、神さまからもらったチャンスを活かすって行動に出られるかどうか

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「ねぇ、翠名」

 制服姿の巨乳姉妹が学校へ向かっているとき、Dカップの姉がFカップの妹へ問うような声でつぶやいた。

「なに?」

「好きとか気になる男子とかいないんだよね?」

「いまのところはいないけれど?」

「じゃぁ、もし男子から付き合ってくださいって告白されたらどうする?」

「きらいって意識がなかったら、じゃぁ付き合ってみようかって思う」

「こら翠名!」

 姉は立ち止まって正面をふさぐようにして立ったら、妹の肩を肩をグッとつかみつよめの揺さぶりをかける。

「ちょ、揺らすな……」

 顔を赤くする翠名の制服に浮かぶ豊かでやわらかそうって部分が揺れ動く。それを見ながら椎名はしつけのきびしい母親みたいって口調で言い放つ。

「翠名、姉のわたしに隠れて男子と付き合うなんて絶対に許さないぞ! もし付き合うのだとすれば、その日の内にその男子をわたしの前に連れてくること」

「なんでお姉ちゃんに断りをつけないといけないの? って、揺らすなってば!」

「わたしはかわいくて巨乳って妹を心配しているんだよ。中1ならまだしも中2にもなれば男女の関係は乱れやすくなる。翠名の大きくてやわらかそうっておっぱい目当てで言い寄ってくる男子が増えても何ら不思議ではない。大事な妹がそんなゲスに食われるとか、考えただけで怒りが湧く」

「だ、だいじょうぶだってば!」

 いやらしい揺さぶりをかける姉の手を払いのけた翠名、男子が下品かどうかくらいは見抜けるとか、そもそもわたしみたいな女子が好きだとすればおっぱいを意識しないわけがないでしょうとか、立派になりつつある娘みたいに反論する。

「むぅ……妹のくせに姉に反抗するか……」

「もし恋愛するのだとすればちゃんと報告するよ。だからお姉ちゃんはお姉ちゃんで、自分の相手を見つけるって努力をして」

 翠名、我ながらけっこう偉い事を言ったと豊かな胸の中で自画自賛。しかし姉はそれを妹の反抗期とか表現して非常に納得出来ないと顔に示す。

 そうして2人は学校に到着。双子だったらずっといっしょだが、椎名ひとつ上の姉だから妹に付きっ切りができない。

「翠名、くれぐれも男には注意するように」

「あぁ、わかってるから、だいじょうぶだから」

 やっと小型の母親いたいってうるさい姉が離れホッとする翠名、友人たちといっしょに新しいクラスの名簿という張り紙を見に行った。

 さてそれから少しして、2人の男子こと望と燃得も学校に到着。中2でも同じクラスだったらいいのになとか言いながらお目当ての張り紙に目をやる。

「お、おれと望は同じクラスじゃん! これまさしく腐れ縁だな、ま、この1年間もよろしく頼むわ」

「あぁ、よろしく」

 ノリよい燃得と比べたら望は冷静だが、ぶっちゃけ男子はどうでもよかった。同じクラスだろうと他クラスだろうと、男の友情に影響を及ぼすとは思わないし、そんな物語には興味も湧かない。しかしどの女子と同じクラスになるか、それに関してはハート革命が成されるか否かの一大事とする。

(さ……とか……佐藤とか同じクラスだったら……)

 望はドキドキしながら女子の名前並びに目を向ける。それなりの数の名前がズラーっと並ぶが、気になるのはたったひとりの名前のみ。

(あった……あった!)

 佐藤翠名という名前が同じクラスにあるではないか! それを目にしたとき、くぅーっと恋心というナルト模様が動きだす。

「よっしゃぁ、あの巨乳と同じクラスだ!」

 動き出した恋心に浸る望のとなりで燃得が赤裸々な声を出してガッツポーズを取る。あの巨乳とは言うまでもなく佐藤翠名の事である。

「なに、佐藤と同じクラスになれたのがうれしいのか?」

 望、表面上は冷静を装って燃得に問う。

「だってあいつめっちゃ巨乳だし」

 それを聞いた望、だから? と切り込んでみた。たとえ自分がそんな風に興奮しても、だからって恋愛してもらえるわけじゃないだろうと大人な発言をかます。

「いや、わかんねぇぞ、告白したら意外とオーケーもらえるかも。やってみなきゃわからないだろう」

 燃得の恥知らず特攻隊! みたいな言い方に望はちょっと焦った。そうだ、もしかするとそういう事はありえるかもしれない。そしてそんな事が起こったら、自分にとっての理想女子が、もっとも似合わないと思う男子のモノになってしまう。それは悲劇、それなら人類滅亡した方がマシ! 言いたくなる。

「火高……おまえ、まさか本日にいきなり告白するのか?」

 望の心中はおだやかではない。もし燃得がそうだと言ったら、自分はいったいどうなるのだと絶叫ならぬ発狂したくなるから。

「いや、 さすがにいきなりは無いかな。だって佐藤ってすごい巨乳だけれど、なんか取っつきにくそうな感じがするじゃん。だから少ししてクラスメートとしてなじんでから告白する。そして彼女になってもらったら……」

「もらったら? なんだよ」

「パイズリとかお願いしようかなと思ったりして」

 ダメだ、これはいけない。火高燃得が佐藤翠名に告白するなどあってはならない。それなら自分は本日中に告白してしまえばいいのだ、そうすれば同じクラスにしてくれた神さまにちゃんとした生き様を示すことにつながる。

 が、しかし……なんせ熱く思い焦がれる女子である、学年で一番っていうか……全生徒の中で一番の巨乳であろうって特徴が目立つ女子である、そんな翠名に向かっていざ告白! というのは想像を絶する勇気を必要とする。

 言いたい……告白したい……と思ってグワーっと高ぶると、それを抑え込むマイナスの力が作用する。それはさしずめ核融合みたいなモノであり、幸せになりたいと願う自分と、幸せになれない自分が同力で殺し合いをするようなモノ。

 時間は流れる。佐藤翠名と同じクラスになったと、何度となくあの顔やあの豊満な胸を見ても、確実に時間は過ぎていく。学校が終わったらすぐ翠名を呼び止め告白しようとか思う望にとってみれば、時間の流れが早くてキモチの整理ができない。

(言わないと……だってそうしないと、同じクラスにしてくれた神さまに愛想を尽かされてしまう)

 しかし結局……望は言えなかった。学校が終わり生徒達が立ち上がった時、佐藤翠名を見るだけでなく歩み寄りたかった。それなのにできなかったから、気がつくとあこがれの巨乳女子はどこかに消えてしまって、自分は家にたどり着いていた。

「せっかく……せっかく神さまが味方してくれたのに……そのチャンスを活かすために動くことができないなんて……」

 帰宅した望、洗面所のミラーを見つめ、情けない男子こと自分を嘆く。そして時間を巻き戻して本日をやり直したい! などと思ったりもする。

「あたらしいクラスはどうだった?」

 洗面所から出たら居間にいる父が声をかけてきた。今日は仕事が休みであるから家にいて、デカいテレビをネットにつないで楽しんでいる最中だった。望は別に……と、中2の男子らしく不愛想に言いかけたが、いつもならそうするのだが、ここではちょっと違った。

「ねぇ、父さん……」

「ん? 学校で何かあったか?」

 父は息子が自分を頼るのか? と少しよろこびかけている。息子と腹を割った話をするなんていうのは、父親にとってはいつかはやりたい憧れのひとつなのだから。

「たとえばさぁ、勇気出して行動すれば……もしかすれば望みとか夢は叶うかも……という状況になったら、やっぱり行動するべきだよね?」

「そりゃそうだ、行動不足は人生の栄養不足につながるからな」

「その……行動したくてもできないっていうのは、やっぱり不幸になるのかな?」

「そうだなぁ、行動したい、踏み出したい! って思いながら動けないのは、まぁ猶予期間は3日くらいだろうな」

「3日?」

「3日以上考える奴は行動しないだろうし、神さまから与えてもらったチャンスも腐る。チャンスは生ものだから腐るのが早いんだ。逆に3日以内にズバ! っと切り込むように行動するやつは神さまの援護射撃をもらえるかもしれない」

「わかった……」

「おい、なんだよ、せっかくだから男同士でもっと話をしようぞ望」

「もういいよ、じゃぁ!」

 マイルームに戻った望、カバンを置いてドアに貼ってあるカレンダーを見る。そして父の教えをくり返すようにつぶやく。

「3日……猶予が3日だから、3日以内ならだいじょうぶってわけじゃなく、2日目にさっさと行動してしまえ! って……そういう事……」

 望はカレンダーの明日という日付に人差し指の腹をクッと押し付け、明日、明日が勝負だと自分に言い聞かせた。

「明日行動に出られなかったらダメなんだ。チャンスは生ものだから腐ってしまうんだ。そして行動できなかったら、チャンスを与えてくれた神さまに見捨てられてしまうんだ」
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