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40)学校という秘境へ
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イメージビデオの撮影の現場は異常だ。こんなに若くてかわいい女子が惜しみなく肌を曝す世界。
観ているほうだって、いつのまにかそれが当たり前のことに思えてくる。
ずっとこの世界で仕事をしている美咲ちゃんも、カメラの前で肌を見せることに抵抗感は薄いだろう。
そんな意識が作品にも現れていることがあるはずなんだ、当たり前のこと、普通のことを、ルーティンでやっているという意識。
それを揺り動かしたい。
君がやっていることはとんでもない特別なことであると、改めて美咲ちゃんにわかってもらう。
リセットするのだ。彼女をリフレッシュさせて生まれ変わらせて、この作品が初めてのような気分になってもらって。
それが上手くいけば美咲ちゃんはあの頃の瑞々しさを取り戻すだろう。
そのために必要なのが、ゆかりちゃんという刺激。何をするにも恥ずかしがる新人。
そのイノセントなライバルが美咲ちゃんを生き返らせる。
僕はそんなことも考えていた。
まだまだ若いけど、この業界ではベテランの美咲ちゃん、そんな彼女に同年代の新人を引き合わせ、一緒に一つの作品を撮る。
しかも清楚が売りの新人。そのとき何か意図せぬ化学反応が起きるのではないか。
そういう意図だったのだ。
しかし、やり過ぎてしまったかもしれない。
いや、やり過ぎというか、もはや意味不明。ただ単に二人の仲は悪くなっただけで・・・。
予想よりもゆかりちゃんのマネージャーさんがクレームを入れてくるのが早くて強烈だったのだ。それこそ、こっちの意図しない行動。
下手したら美咲ちゃんは不貞腐れてやる気をなくすかもしれない。
そもそも僕なんて女心をわかっていない人間で、そんな僕が何か余計な策を弄したこと自体が間違いで、彼女のメンタルをコントロールしようなんて大それたことを企てた自分が何だか恥ずかしくなってきて・・・。
さて結局、最後のほうはグダグダになって、公園のシーンの撮影は終了した。美咲ちゃんの屈辱の時間は終わったという感じか。我々はその公園でお昼休憩だ。昼食もそこで食べる。
しかし美咲ちゃんとゆかりちゃんは顔を合わせず別々に食事をしていた。
美咲ちゃんと彼女のマネージャーはロケバスの中で、ゆかりちゃんは公園のベンチで。
二人の間には気まずい空気が流れている。出来れば一緒に居たくないという空気。
それは主に美咲ちゃんが発しているのだけど、ゆかりちゃんもそのオーラを前にして、逃げるように顔を伏せている。
言うまでもなく、その空気はあの件が発生させたのだ。つまり、あれ。美咲ちゃんとゆかりちゃんとの扱われ方の違い。
こういうことになることは予想がついていたはずだ。
美咲ちゃんを傷つけて僕はあんなに喜びを覚えてしまったのだから、それと引き換えにこの作品は失敗に終わる運命かもしれない。
しかしあれだって作品のことを考えての行動でもあって。
ところで時間はかなり押していた。
公園のシーンを撮り終えたらお昼休憩というのは当初の予定であったのだけど、もう既に世間でいうところの昼休みの時間は終わっている。
「この調子でいけば予定通りには完成しませんね。ヤバいですよ」
担当者さんが言う。
「だからって昼ご飯抜きってわけにはいかない。そんなことをしたらスタッフは誰もついてこない」
担当者さんも白いご飯を口いっぱいに頬張っている。
「そういうわけで撮影のほうを巻き目でお願いします。全てを1テイクで撮り終えて、さっさと打ち上げましょう」
「はい、努力します。ゆかりちゃんも撮影に馴れてきたはずで。いや、ゆかりちゃんだけじゃない。僕もようやく仕事がわかってきました。これからはもっと上手くやれるはずです」
「こだわりも重要だけど、仕事はやはり完成させてこそでね」
「はいはい、その通りです」
とにかく今は撮影に集中しよう。
僕は落ち込んでもいるけど緊張もしている。次は学校のシーン、このシーンこそがこの作品のメインとなる現場。
ここでどれだけの結果を出すか、それが勝負となるのだ。
僕は自分で書いた企画書をさっきから何度も読み直している。
次のシーンで撮らなければいけない映像。そのイメージを頭の中で思い描いている。
食事なんて喉を通らない。
緊張感と期待感、何が何でも凄い仕事をしてやるって気合いで胸がいっぱいなのだ。
僕はここで制服姿、スクール水着、体操着というかブルマ、そんな映像をこれでもかと撮影しまくろう。
ここに全ての夢を詰め込んで。これまでの人生、僕が抱いた妄想全てを注ぎ込んで。
学校、そこはこの世で最もストレスフルな場所である。
実際のところはそうだろう。
しかし外部の人間にとって性の幻想蠢く秘境であって。
教室、窓から見える校庭と渡り廊下、階段と下駄箱と上靴。
渡り廊下には、彼女たちのスカートを揺らす風が吹き、階段の高低差は更にそのスカートの裾を危うくする。
下駄箱で上靴に履き替えるとき、靴を脱いだだけなのに、制服姿の彼女たちはもっと大切な何かを脱いでしまったかのようで、それを眺める僕たちは激しく心を動かされて。
観ているほうだって、いつのまにかそれが当たり前のことに思えてくる。
ずっとこの世界で仕事をしている美咲ちゃんも、カメラの前で肌を見せることに抵抗感は薄いだろう。
そんな意識が作品にも現れていることがあるはずなんだ、当たり前のこと、普通のことを、ルーティンでやっているという意識。
それを揺り動かしたい。
君がやっていることはとんでもない特別なことであると、改めて美咲ちゃんにわかってもらう。
リセットするのだ。彼女をリフレッシュさせて生まれ変わらせて、この作品が初めてのような気分になってもらって。
それが上手くいけば美咲ちゃんはあの頃の瑞々しさを取り戻すだろう。
そのために必要なのが、ゆかりちゃんという刺激。何をするにも恥ずかしがる新人。
そのイノセントなライバルが美咲ちゃんを生き返らせる。
僕はそんなことも考えていた。
まだまだ若いけど、この業界ではベテランの美咲ちゃん、そんな彼女に同年代の新人を引き合わせ、一緒に一つの作品を撮る。
しかも清楚が売りの新人。そのとき何か意図せぬ化学反応が起きるのではないか。
そういう意図だったのだ。
しかし、やり過ぎてしまったかもしれない。
いや、やり過ぎというか、もはや意味不明。ただ単に二人の仲は悪くなっただけで・・・。
予想よりもゆかりちゃんのマネージャーさんがクレームを入れてくるのが早くて強烈だったのだ。それこそ、こっちの意図しない行動。
下手したら美咲ちゃんは不貞腐れてやる気をなくすかもしれない。
そもそも僕なんて女心をわかっていない人間で、そんな僕が何か余計な策を弄したこと自体が間違いで、彼女のメンタルをコントロールしようなんて大それたことを企てた自分が何だか恥ずかしくなってきて・・・。
さて結局、最後のほうはグダグダになって、公園のシーンの撮影は終了した。美咲ちゃんの屈辱の時間は終わったという感じか。我々はその公園でお昼休憩だ。昼食もそこで食べる。
しかし美咲ちゃんとゆかりちゃんは顔を合わせず別々に食事をしていた。
美咲ちゃんと彼女のマネージャーはロケバスの中で、ゆかりちゃんは公園のベンチで。
二人の間には気まずい空気が流れている。出来れば一緒に居たくないという空気。
それは主に美咲ちゃんが発しているのだけど、ゆかりちゃんもそのオーラを前にして、逃げるように顔を伏せている。
言うまでもなく、その空気はあの件が発生させたのだ。つまり、あれ。美咲ちゃんとゆかりちゃんとの扱われ方の違い。
こういうことになることは予想がついていたはずだ。
美咲ちゃんを傷つけて僕はあんなに喜びを覚えてしまったのだから、それと引き換えにこの作品は失敗に終わる運命かもしれない。
しかしあれだって作品のことを考えての行動でもあって。
ところで時間はかなり押していた。
公園のシーンを撮り終えたらお昼休憩というのは当初の予定であったのだけど、もう既に世間でいうところの昼休みの時間は終わっている。
「この調子でいけば予定通りには完成しませんね。ヤバいですよ」
担当者さんが言う。
「だからって昼ご飯抜きってわけにはいかない。そんなことをしたらスタッフは誰もついてこない」
担当者さんも白いご飯を口いっぱいに頬張っている。
「そういうわけで撮影のほうを巻き目でお願いします。全てを1テイクで撮り終えて、さっさと打ち上げましょう」
「はい、努力します。ゆかりちゃんも撮影に馴れてきたはずで。いや、ゆかりちゃんだけじゃない。僕もようやく仕事がわかってきました。これからはもっと上手くやれるはずです」
「こだわりも重要だけど、仕事はやはり完成させてこそでね」
「はいはい、その通りです」
とにかく今は撮影に集中しよう。
僕は落ち込んでもいるけど緊張もしている。次は学校のシーン、このシーンこそがこの作品のメインとなる現場。
ここでどれだけの結果を出すか、それが勝負となるのだ。
僕は自分で書いた企画書をさっきから何度も読み直している。
次のシーンで撮らなければいけない映像。そのイメージを頭の中で思い描いている。
食事なんて喉を通らない。
緊張感と期待感、何が何でも凄い仕事をしてやるって気合いで胸がいっぱいなのだ。
僕はここで制服姿、スクール水着、体操着というかブルマ、そんな映像をこれでもかと撮影しまくろう。
ここに全ての夢を詰め込んで。これまでの人生、僕が抱いた妄想全てを注ぎ込んで。
学校、そこはこの世で最もストレスフルな場所である。
実際のところはそうだろう。
しかし外部の人間にとって性の幻想蠢く秘境であって。
教室、窓から見える校庭と渡り廊下、階段と下駄箱と上靴。
渡り廊下には、彼女たちのスカートを揺らす風が吹き、階段の高低差は更にそのスカートの裾を危うくする。
下駄箱で上靴に履き替えるとき、靴を脱いだだけなのに、制服姿の彼女たちはもっと大切な何かを脱いでしまったかのようで、それを眺める僕たちは激しく心を動かされて。
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