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36)友情という尊い感情
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美咲ちゃんとゆかりちゃんの会話をマイクで拾ってはいないけれど、楽しそうに会話する演技をしてもらっている。
あらかじめ話す内容を僕が決めておいた。何となく仲が良さそうに見える話題は何だろうか考えて、それについて会話してくれと頼んでいたのだ。つまり、好きな食べ物について語り合ってくれと指示をしている。
二人はほぼ初対面である。挨拶をした程度で、話したことはない。
美咲ちゃんもゆかりちゃんも極端に人見知りってタイプでもなさそうではあるけど、極端にフレンドリーなタイプでもなさそうである。
いはゆる普通。普通の日本人的な類型なのだ。だから、よそよそしく見えてしまう瞬間もある。
この二人を、「完璧なる親友」と見えるように演出をしなければいけない。それが僕の使命。
初対面であっても、食べ物の話しならきっと盛り上がるはずだと考えた。というわけで、その好きな食べ物を頭の中に思い浮かべながら話してくれというアドバイスをしてみたわけなのだけど、ちょうど、昼食前の最もお腹が空く時間帯だ。
的中。作戦は上手くいっていた。二人はよだれを垂らしそうな表情で、好きな食べ物について話している。
自然と口角が上がる。笑顔が増える。これはどこから見ても、心を許した親友同士が談笑している青春の光景。
メロン、アイスクリーム、ソフトクリーム、タピオカ。ふーん、なるほど、二人はそんなのが好きなのか。オーソドックスな好みだ。
何だって、美咲ちゃんはホルモンとコーヒーが好きだって!
それにしても僕はなかなかの演出家ではないだろうか。自惚れてしまいそうになるけれど、しかし二人の友情は別に演技ではないのでは? って気もしている。
僕がそれを上手く導き出したわけじゃない。どうやら、ガチのガチで、この二人の女子の間には、友情というあの尊い感情が芽生え始めているという予感がするのだ。
予感じゃない。確信だ。
女性同士に友情なんて存在しないぜ。女にあるのは競争意識と打算。それしかない。そういう意見を聞いたりもする。だけどそんなのは大いなる偏見だっていう、それに対する反証を僕たちは今、目の当たりにしているのではないだろうか。
どうやら後輩で年下のゆかりちゃんが、完璧に美咲ちゃんに心を許し、頼り切り、信頼を寄せているようなのだ。
ゆかりちゃんには毒っ気が一切ない。赤子に近い。いわば、賢い赤子のようなの。それはちょっと正確な言い方ではないかもしれないが、そうやって評したくなるくらいに無垢なる何者かであるようだ。
そんなゆかりちゃんに心を開かれた美咲ちゃんも、誠実にそれに応えている。ゆかりちゃんを馬鹿にしたり、軽んじたりすることなく、同じくらいに無垢なる心を動員して、彼女の相手をしようとしている。
これ以上に美しい光景があるだろうか。可愛い女子が二人、本当に心を開いて,会話に興じているという光景。
いや、忘れてはいけない。犬もおられる。まあ、本当はいないけれど。犬に見立てたカメラがあるだけだけど。
でも僕には見えるのだ。だからきっとこの作品を観る人にも見えるはず。ゆかりちゃん、美咲ちゃん、そして犬で形成される三角形が。
僕は本来のこの作品の趣旨を忘れてしまっているのだろうか。この作品の趣旨、つまり煽情! エロスだ。男たちを欲情させて、獣に落とす。そのための作品。
それなのに人の心の美しさ、友情とかを、カメラで捉えようとしている。
でもそれも間違いではないはずで、心の美しさとか友情が見事に捉えられている作品として楽しんでくれるファンだっている。それくらいに日本のイメージビデオ市場は成熟しているはずだ。多分、きっと。
もちろん、本来の趣旨も忘れはしないけど。僕が作りたいのは煽情的な作品。それだって今、ちゃんと撮影出来ている。
制服姿の美少女が座った姿勢で、体重を右に移したり左に移したりして、太ももやスカートの中の下着(実は水着だけど)をチラつかせて、我々の理性をかき乱しに乱している。
友情になど興味がないという人は、そこだけを観察してくれればいい。
しかしどうだろうか、この女子二人は友情に激しく心を動かされる主体であるという事実、それが更にこの光景をエロく見せはしないだろうか。
イメージビデオにありきたりな風景に、何か特別なものを付け加えているってこととなって。
さて、僕がこの作品に手応えをビンビンと感じて、とても良い仕事が出来ていると悦に入っていたら、突然、ゆかりちゃんのマネージャーさんが声を上げた。
「ゆかり、あなたはずっと足を閉じてなさい。そんなことする必要はないわ。契約にないもの」
冷たい声。それでいて確信に満ちた指令。
そんな言葉が、それほど静かなわけでもない公演に、鋭く響き渡った。
「もう足を動かさないでいいわよ。スカートを押さえてなさい」
あらかじめ話す内容を僕が決めておいた。何となく仲が良さそうに見える話題は何だろうか考えて、それについて会話してくれと頼んでいたのだ。つまり、好きな食べ物について語り合ってくれと指示をしている。
二人はほぼ初対面である。挨拶をした程度で、話したことはない。
美咲ちゃんもゆかりちゃんも極端に人見知りってタイプでもなさそうではあるけど、極端にフレンドリーなタイプでもなさそうである。
いはゆる普通。普通の日本人的な類型なのだ。だから、よそよそしく見えてしまう瞬間もある。
この二人を、「完璧なる親友」と見えるように演出をしなければいけない。それが僕の使命。
初対面であっても、食べ物の話しならきっと盛り上がるはずだと考えた。というわけで、その好きな食べ物を頭の中に思い浮かべながら話してくれというアドバイスをしてみたわけなのだけど、ちょうど、昼食前の最もお腹が空く時間帯だ。
的中。作戦は上手くいっていた。二人はよだれを垂らしそうな表情で、好きな食べ物について話している。
自然と口角が上がる。笑顔が増える。これはどこから見ても、心を許した親友同士が談笑している青春の光景。
メロン、アイスクリーム、ソフトクリーム、タピオカ。ふーん、なるほど、二人はそんなのが好きなのか。オーソドックスな好みだ。
何だって、美咲ちゃんはホルモンとコーヒーが好きだって!
それにしても僕はなかなかの演出家ではないだろうか。自惚れてしまいそうになるけれど、しかし二人の友情は別に演技ではないのでは? って気もしている。
僕がそれを上手く導き出したわけじゃない。どうやら、ガチのガチで、この二人の女子の間には、友情というあの尊い感情が芽生え始めているという予感がするのだ。
予感じゃない。確信だ。
女性同士に友情なんて存在しないぜ。女にあるのは競争意識と打算。それしかない。そういう意見を聞いたりもする。だけどそんなのは大いなる偏見だっていう、それに対する反証を僕たちは今、目の当たりにしているのではないだろうか。
どうやら後輩で年下のゆかりちゃんが、完璧に美咲ちゃんに心を許し、頼り切り、信頼を寄せているようなのだ。
ゆかりちゃんには毒っ気が一切ない。赤子に近い。いわば、賢い赤子のようなの。それはちょっと正確な言い方ではないかもしれないが、そうやって評したくなるくらいに無垢なる何者かであるようだ。
そんなゆかりちゃんに心を開かれた美咲ちゃんも、誠実にそれに応えている。ゆかりちゃんを馬鹿にしたり、軽んじたりすることなく、同じくらいに無垢なる心を動員して、彼女の相手をしようとしている。
これ以上に美しい光景があるだろうか。可愛い女子が二人、本当に心を開いて,会話に興じているという光景。
いや、忘れてはいけない。犬もおられる。まあ、本当はいないけれど。犬に見立てたカメラがあるだけだけど。
でも僕には見えるのだ。だからきっとこの作品を観る人にも見えるはず。ゆかりちゃん、美咲ちゃん、そして犬で形成される三角形が。
僕は本来のこの作品の趣旨を忘れてしまっているのだろうか。この作品の趣旨、つまり煽情! エロスだ。男たちを欲情させて、獣に落とす。そのための作品。
それなのに人の心の美しさ、友情とかを、カメラで捉えようとしている。
でもそれも間違いではないはずで、心の美しさとか友情が見事に捉えられている作品として楽しんでくれるファンだっている。それくらいに日本のイメージビデオ市場は成熟しているはずだ。多分、きっと。
もちろん、本来の趣旨も忘れはしないけど。僕が作りたいのは煽情的な作品。それだって今、ちゃんと撮影出来ている。
制服姿の美少女が座った姿勢で、体重を右に移したり左に移したりして、太ももやスカートの中の下着(実は水着だけど)をチラつかせて、我々の理性をかき乱しに乱している。
友情になど興味がないという人は、そこだけを観察してくれればいい。
しかしどうだろうか、この女子二人は友情に激しく心を動かされる主体であるという事実、それが更にこの光景をエロく見せはしないだろうか。
イメージビデオにありきたりな風景に、何か特別なものを付け加えているってこととなって。
さて、僕がこの作品に手応えをビンビンと感じて、とても良い仕事が出来ていると悦に入っていたら、突然、ゆかりちゃんのマネージャーさんが声を上げた。
「ゆかり、あなたはずっと足を閉じてなさい。そんなことする必要はないわ。契約にないもの」
冷たい声。それでいて確信に満ちた指令。
そんな言葉が、それほど静かなわけでもない公演に、鋭く響き渡った。
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