転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

第三話:闇の中で輝く光

第3話：闇の中で輝く光

カシム・アーケン・ベルナス。帝国アーケン王国の第6皇子として転生した俺は、今も冷遇の中で過ごしていた。しかし、転生してからというもの、俺は少しずつ変わり始めていた。あのとき、俺の中に宿った力。それはただの魔法ではなく、何かもっと深い、秘められた力のようなものだった。そして、その力を使いこなすために、毎日訓練を続けていた。

だが、訓練は単なる力を強化するだけではなかった。帝国での生活は、常に俺に無関心で冷たく、まるで空気のような存在として過ごさなければならなかった。兄たち、父、母、すべての人々が俺のことをどうでもいいと思っていることに変わりはなかった。だが、俺はもうそれに慣れてきた。自分が無視されることに痛みを感じなくなったのは、ある意味で自分を強くするための過程だったのかもしれない。

「カシム様、今日もお訓練を続けておられるのですね。」

その声が、訓練を終えた帰り道で響いた。振り返ると、見覚えのある人物が立っていた。ロイドだ。俺の侍従であり、ほとんど無関心に過ごしているが、時折こうして声をかけてくれることがある。だが、彼の目はいつも冷たく、俺に対して感情を表すことは少ない。

「はい、ロイド。今日は少しだけ成果を感じました。」

俺は少し誇らしげに答えたが、ロイドは無表情で俺を見つめていた。その瞳の奥に何かを感じることはできたが、それを言葉にすることはなかった。

「成果、ですか。」

ロイドの口調は淡々としているが、その一言には少しだけ興味が感じられる。彼もまた、俺がどこまでやれるのかを見守っているのかもしれない。

「ええ。少しずつですが、力を使えるようになってきました。多分、以前よりも少し強くなったと思います。」

俺がそう言うと、ロイドは少しだけ眉をひそめた。そして、何も言わずに歩き始めた。

「皇帝陛下からの伝言です。明日の夜、再びお召しがかかるそうです。」

その言葉に、俺は一瞬息を呑んだ。再び皇帝が俺を呼んだというのだ。先日、あの冷徹な父から言われた言葉が脳裏をよぎる。

「お前は帝国にとって何の役にも立たない」

その言葉が、今でも痛い。しかし、それでも俺には何かを成し遂げなければならないという思いがあった。冷遇されることに慣れてきたとしても、それを覆す何かを成し遂げなければならない。皇帝が再び俺を呼ぶということは、何か重要な意味があるのだろう。

「分かった。明日、すぐに向かう。」

俺は無理に冷静を装い、ロイドに返事をした。そして、その晩、再び皇帝の元へ向かう準備を始めた。

――翌日の夜。

宮殿の中はいつも以上に静まり返っていた。皇帝が俺を呼ぶこと自体、通常では考えられないことだ。王国の未来を担う兄たちがすべて任務をこなしている中、俺のような存在が呼ばれることなど考えられなかった。だが、今回ばかりは何かが違う気がした。

俺は深呼吸をして、ロイドと共に皇帝の部屋へ向かう。途中、数回の廊下の曲がり角を越えて、ようやくその部屋の前に到着した。ロイドがドアを開けると、冷たい空気が部屋から漂ってきた。

「カシム…来たか。」

その一言と共に、皇帝が椅子に座ったまま俺を見つめていた。彼の顔は厳しく、無表情のままだった。だが、その眼差しの中には、少しだけ違和感を感じた。何か、これまでとは違う気配があった。

「父上、何のご用でしょうか。」

俺が問いかけると、皇帝は一瞬だけ黙った後、ようやく口を開いた。

「お前に与える仕事がある。」

その言葉に、俺は驚きと興奮を感じた。仕事？ 俺に与えられる仕事があるのか？ それは、まさに予想外だった。

「…仕事ですか？」

俺が驚きの声を上げると、皇帝はやや冷たい視線を送った。

「お前が何かできるとは思っていない。ただ、お前がこれからするべきことがある。俺は、今後の帝国の運命を左右する大きな決断をするつもりだ。そして、それにお前が関わる。」

その言葉に、俺はさらに驚いた。俺が何を？ まさか、冷遇された皇子である俺が帝国の運命に関わるような役割を果たすことになるとは、夢にも思わなかった。

「帝国にとって重要な役割を果たすとは、いったいどういうことですか？」

俺がその場で質問すると、皇帝は少し黙った後、重い言葉を口にした。

「実は、帝国の北方にある辺境の地に、謎の勢力が現れた。奴らは、我々の帝国に対して明らかな敵意を示している。だが、どこから来たのか、何を目的としているのか、全くわからない。」

その言葉に、俺の胸が高鳴った。帝国を脅かす謎の勢力？ それは、まさに危機的状況ではないか。しかし、俺がその危機に関わることができるとは、正直なところ全く考えたことがなかった。

「その謎の勢力に、対抗するための準備が必要だ。だが、俺の元に直接兵を送るわけにはいかない。そのため、お前に協力を頼む。お前が持っている力を活かし、この危機を乗り越える手助けをしてほしい。」

皇帝の言葉に、俺は再び驚きと戸惑いを感じた。俺にそんな役目が本当にできるのか。だが、心の中で沸き起こる感情は、拒絶ではなく、むしろ決意に近かった。

「分かりました。俺にできることを全力でやります。」

その瞬間、俺は自分の中で決意を固めた。この危機を乗り越えるためには、ただ力を強化するだけでは足りない。俺には、もっと広い視野を持ち、帝国を守るために必要なことを考える力が求められているのだ。

「お前の決意を見て、少しは安心した。」

皇帝の言葉は冷徹ではあったが、どこかに信頼を込めたようにも聞こえた。もしかしたら、これは新たなチャンスなのかもしれない。俺にとって、帝国を守るために何かできるということが、どれほど大きな意味を持つのかを、これから実感することになるだろう。

「では、準備が整い次第、お前には北方へ向かってもらう。」

その言葉を最後に、皇帝は俺に背を向けた。俺はしばらくその場で立ち尽くし、深く息を吸った。この先、どんな困難が待ち受けているのかは分からない。しかし、俺には今、明確な目標ができた。それは、帝国を守り、俺自身の力を証明することだ。

「これが、俺に与えられた最初の使命だ。」

そう心に誓い、俺は再び歩み始めた。冷遇されてきた皇子が、今、初めて自分の力を試す時が来たのだ。