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23.初依頼と新たな種族との出会い

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「どういう大会なんですか?」
「Gランクの冒険者だけが参加できる大会で、優勝すればEランクになります。2位と3位の人はFランクになれます」
「勝つだけでランクが上がるんですか。確か普通は依頼を規定数クリアしないと駄目なんですよね?」
「そうですね。これは冒険者の数と依頼の種類が問題になっています。低ランクの冒険者は多いですが、低ランクの依頼は少なく、高ランクの冒険者は少ないですが、高ランクの依頼は多いんです」

 ミオナさんの説明によると、低ランクの冒険者が受ける事のできる低ランクの依頼は薬草摘みなど、簡単なものが多い。中級ランクの依頼は魔物の討伐など、少し難しい依頼が多い。でも中級ランクの冒険者は少ない。それなら大会を開催して、優勝できるほど実力があるなら、低ランクに置いておかず、早くランクを上げていきたいとの事。
 ランクを早く上げたい冒険者なら喜んで参加するだろうな。俺もその中の1人だ。早くランクを上げたい。

「ミオナさん、俺もその大会に参加します」
「分かりました。では大会のルールを説明しますね」

 大会のルール。Gランクの冒険者のみが参加できる。参加人数が多い場合、まずは1ブロック10人ほどに分け、そのブロックを複数作る。1ブロック内で闘い、最後まで勝ち残った人が本戦に出場できる。本戦はトーナメント形式になっている。
 勝敗の決し方は、降参、気絶、戦闘続行不能状態、相手を殺すと負け。

「殺さなければ何でもアリ、みたいな感じですね」
「そうですね。でも執拗に攻撃したり、卑怯な手段を使うと、印象が悪くなり、冒険者としての仕事が減ります」
「誰からの印象ですか?」
「大会を開催するのはギルドなので、ギルド職員が大会を観戦します。それに一般人も観戦します。貴族も来られます。特に貴族は報酬の良い依頼を持ってきてくれますから、そういう人たちに悪い印象を与えてしまうと、優勝してランクが上がっても良い依頼は回ってこないかもしれないです」
「冒険者は信頼が大切、という事ですか。それなら安心ですね」
「どういう事ですか?」
「やっぱり卑怯な闘い方をされると嫌じゃないですか。実戦ならともかく、大会なら正々堂々と闘いたいですから」
「なるほど!私の中でラソマさんの印象はかなり上がっていますよ!」
「ハハ、ありがとうございます」

 ミオナさんが冗談半分で言っているのが分かったので、苦笑いで返す。

「それじゃあ大会まで、簡単な依頼をこなしてきます。依頼の受注、成功もしくは失敗の報告の方法も実際に経験しておきたいので」
「それが良いですね。基本すら知らないと」
「「冒険者の信頼が落ちる」」

 ミオナさんが言おうとした言葉に被せるようにして言う。思った通りの言葉だった。
 俺たちは笑い合う。

「簡単な依頼って、どういうものがありますか?」
「そうですね…やはり薬草摘みですね」
「ではそれでお願いします」
「はい。薬草は東の門を出て、すぐの森に生えているので、それを必要数取ってきてください」
「余分に取らない方が良いんですか?」
「はい。他の冒険者もいるので、独占はしないようにするのが暗黙の了解になってます」
「分かりました。それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてくださいね」

 おぉ、そんな風に見送ってくれるのか。これは嬉しいな。
 ギルドを出た俺は東の門に向かう。薬草は見たことがあるから大丈夫だ。王都は広いから門まで遠い。歩いて行くのは面倒だから瞬間移動で行く事にするか。まずは千里眼で東の門を確認、あとは人がいない場所に行って、東の門近辺の人がいない場所に向かって瞬間移動。…よし、無事に到着した。初めての依頼だし、さっさと済ませたいからな。帰りはギルドまで歩いて帰るか。

「すみません、通っても良いですか?」

 門を守る兵士に聞く。

「ああ、きみは王都は初めてかい?」
「はい」
「そうか。王都は出る際に我々に聞かなくても良いんだ。入る時には必要だがな。身分証明書は…あぁ、冒険者ならそのペンダントを見せてくれたら大丈夫だ」
「分かりました。ありがとうございます」

 兵士にお礼を言って門をくぐる。そうか、出る時は勝手に出て行っても良いのか。
 外に出て、少し道を歩くと、すぐに森になった。ここに薬草があるんだな。あとは見つけるだけだ。
 …あった。俺は地面に生えている薬草を念動力で採取し、マジックバッグに入れる…と見せかけて異空間に収納する。誰が見てるか分からないから、マジックバッグを使っているフリだ。
 この作業を規定数採取するまで続けるだけだ。楽勝だな。
 …前言撤回。半分ほど採取したところで飽きてきた。時間が経つと薬草と他の植物の色が一緒という事で同じに見えてくる。

『薬草、聞こえてるなら返事をして場所を教えて』

 生えている草に対してテレパシーを使ってみる。勿論、通じるとは思っていない。単なる気分転換だ。

『なに?私たちを探してるの?』
『だ、誰だ?!』

 突然、テレパシーに反応があったので驚いてしまう。

『呼んだでしょ?私たちに返事をしてって言ったじゃない』
『や、薬草なのか?』
『そうだよ。きみの前方3メートルほど歩いた場所に私はいるよ』

 言われた通りに歩いて行くと、そこには確かに薬草が生えていた。

『採っても良いのか?痛くないか?』
『さっきまで気にせずに採ってたでしょ?大丈夫、痛くないよ』
『そうなのか。それじゃあ遠慮なく。ありがとう』
『どういたしまして』

 俺は声の言う通りに薬草を採取する。

『本当に痛くないのか?』

 …俺の問いに返事はない。もしかして採取したらテレパシーが通じなくなるのだろうか。そうだとしたら少し寂しい。

「ありがとう」

 呟くようにお礼を言う。

「ふふふ、ありがとうだって!」
「大成功だな!」

 ふと声がしたので、そちらを見ると俺のすぐ近くに2人の何かが浮かんでいた。見た目は人、でも背中に羽が生えている。それに小さい。20センチくらいだろうか。

「君たちは?」
「私達?妖精よ」

 女の子っぽい方が答える。そうか、この人たちが妖精か。

「妖精を見る事ができるなんて幸運だな」

 普通、妖精を見る事は難しい。なぜなら妖精は気まぐれだと言われており、滅多に人の前に現れたりしないからだ。

「まったく…お前は変わった人間だな。薬草に話しかけるなんて」

 男の子っぽい妖精が笑いながら言う。でも俺を馬鹿にしている言い方ではない。

「いや、どうにも薬草を見つけるのが難しくてね。どうにかしたいと思ったのが、あの方法だったんだ……あれ?どうして薬草に声をかけた事を知ってるんだい?」

 あれはテレパシーだから誰にも聞こえていないはずだ。

「それは私たちがこの森の妖精だから。薬草も森の一種で、私はその薬草に話しかけている声が聞こえたの」
「森の妖精には、森で起きている事は全て分かるんだ」
「そうなのか。凄いな」

 俺が褒めると妖精たちは照れたように笑う。その仕草が可愛らしい。しかし次の瞬間、妖精たちの顔が曇った。

「どうしたんだ?」
「森に侵入者が入った」
「俺と同じ冒険者じゃないのかい?」
「ううん、この森は人間を侵入者だと思わないの」
「人間じゃないなら魔物…ってわけでもないか」

 それこそ魔物にとって森は家だろう。今さら侵入者と判断はしないだろうな。

「何が侵入してきたのかは分かる?」
「…たぶんだけど…でもあり得ない」
「最近は人間に関わってこないはずだし。でもこの感じは…魔族」

 なるほど、魔族か。それは珍しいな。
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