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第2話
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「僕の名前は一。きみの名前は?」
力斗に声をかけた少年は一と名乗る。この時、一、7歳。後に炎の剣を武器に力斗と共に闘う事になる。
「僕は力斗…一くんはどうしてここにいるの?」
「きみと似ている。僕は家出をしたんだけどね」
「家出?どうして?」
「詳しい話は別の場所でしよう。雨も降ってきそうだし」
一は空を見ながら言う。空には雨雲が広がりつつあった。
「でもどこで?」
「こっちだ。ついてきて」
そう言って一が歩き出すので、力斗はついて行く。
数分後、到着したのは、5メートル四方の建物で、ドアを開けると、そこには地下へ通じる階段があった。
「こっちだよ」
力斗は階段を降りて行く一について行く。
「…真っ暗だね」
「ちょっと待ってて。すぐに火をつけるから」
一が言うと、すぐに火が灯った。
「一くん!指が!?」
力斗は驚く。灯った火は一の指先から出ていたからだ。まるで一の指がロウソクのようになっている。
「ああ、この事もあとで話すよ。まずは下に着いてからだ」
「う、うん…」
その後、階段を降りた場所は広そうな空間だった。広そう、というのは遠くが暗くて見えないからだ。近くにはロウソクが置かれており、火が灯っている。地面や壁、それに天井は力斗から見える範囲で言えば、コンクリートで舗装されている。
「ここはどこなの?」
「僕の住処だ。理由は知らないけど、何かの建設途中で止めた場所みたいだね」
一は知らない事だが、この場所は地下街の建設地だった場所。しかし途中で様々な理由により建設が中止されて放置されている。
「家出してからは、ここで住んでるんだ」
「そうなんだ…でも、どうして家出をしたの?」
「とりあえず、座ろうか」
一に勧められて力斗は置かれていた椅子に座る。その前で一も椅子に座った。この椅子は建設作業員が休憩中に使っていたものだ。この椅子も放置されている。
「さて、僕が家出をした理由だよね。学校に行ってる時、友達がイジメられてたんだ。それを僕の能力で助けたら、なぜか僕が怒られたんだ」
「能力って?」
「これだよ」
そう言って一は指先から火を出してみせた。
「僕の能力は体から火を出せる事。これでイジメてる奴らを火傷させちゃったんだ。そしたら父さんと母さんが呼ばれて僕が怒られた。それが嫌で家出をしたんだよ」
「うん。一くんは悪くないもんね。怒られるのはおかしいよ」
「良かった!力斗くんもそう思ってくれるんだね」
「うん!」
「力斗くんはどうして捨てられたの?」
「やっぱり、僕は捨てられたのかな?」
「たぶんね。心当たりはある?」
一の言葉に力斗は少し考えた。
「もしかして、これのせいかも」
そう言って力斗は近くに落ちていたコンクリートの破片を指で弾く。するとコンクリートの破片は粉々になった。それを見て一は驚く。
「これをお母さんの前でやったんだ」
「その能力が原因かもしれないね」
一の予想通り、力斗の両親は特殊な能力というものを気味悪がっていた。それが原因で力斗を捨てる事にしたのだ。
「これからどうしよう…」
「ここで一緒に住もう!」
「ここで?」
「そう。2人なら寂しくないし、一緒に色んな事もできると思うんだ!」
「…うん。そうだね!家にも帰れないし」
力斗の言葉に一は喜んだ。
一方。力斗を捨てた父親は自宅に帰っていた。
「ふぅ…」
「お帰りなさい」
「ただいま。あの子の事は忘れよう。俺達には、もう1人、息子がいるからな」
「そうね。あの子の事は残念だけど、仕方ないわ」
2人は力斗の名前すら言おうとしなかった。完全に忘れようとしているからだ。
その時、2人の傍に1人の少年がやって来た。
「お父さん、どこかに行ってたの?」
「ああ、知生か。ちょっと用事があったんだ」
両親に話しかけたのは力斗の兄である知生、8歳。
「そうなんだ。ねぇ、力斗は?一緒に車で出かけたよね?」
「…見ていたのか」
「うん」
知生は2階の自室から、力斗が父親に連れられて車で出かけた事を見ていたのだ。
「知らなくて良い。知生、あの子の事は忘れるんだ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「知生、もう寝なさい。明日も学校があるでしょ?」
「でも力斗が…」
「いいから忘れるんだ!」
父親が怒鳴ったので、知生は驚く。
「力斗を…捨てたの?特殊な能力があるから?」
「知っていたのか?!」
「うん」
「それなら分かるだろう。あんな子、俺達の家族には不釣り合いなんだ。もう生きていようが死んでいようが関係ない!」
「…じゃあ僕も要らないね」
知生がそう言うと、家の中に風が吹き荒れる。
「お前もか!」
「そんな!知生も?!」
「力斗をどこへ連れて行ったんだ!」
「誰が教えるか!お前も出て行け!」
「出て行くよ!でも、その前に、力斗を捨てた事………許さない!」
知生は玄関から出て行くと振り返って、両親に向かって言った。直後、大きな竜巻が発生、竜巻は家を飲み込んだ。
「…早く力斗を探さないと」
知生はそう言って宙に浮くと、どこかに飛んで行った。
数分後、竜巻が消えた場所には家だった瓦礫が残っていた。
力斗に声をかけた少年は一と名乗る。この時、一、7歳。後に炎の剣を武器に力斗と共に闘う事になる。
「僕は力斗…一くんはどうしてここにいるの?」
「きみと似ている。僕は家出をしたんだけどね」
「家出?どうして?」
「詳しい話は別の場所でしよう。雨も降ってきそうだし」
一は空を見ながら言う。空には雨雲が広がりつつあった。
「でもどこで?」
「こっちだ。ついてきて」
そう言って一が歩き出すので、力斗はついて行く。
数分後、到着したのは、5メートル四方の建物で、ドアを開けると、そこには地下へ通じる階段があった。
「こっちだよ」
力斗は階段を降りて行く一について行く。
「…真っ暗だね」
「ちょっと待ってて。すぐに火をつけるから」
一が言うと、すぐに火が灯った。
「一くん!指が!?」
力斗は驚く。灯った火は一の指先から出ていたからだ。まるで一の指がロウソクのようになっている。
「ああ、この事もあとで話すよ。まずは下に着いてからだ」
「う、うん…」
その後、階段を降りた場所は広そうな空間だった。広そう、というのは遠くが暗くて見えないからだ。近くにはロウソクが置かれており、火が灯っている。地面や壁、それに天井は力斗から見える範囲で言えば、コンクリートで舗装されている。
「ここはどこなの?」
「僕の住処だ。理由は知らないけど、何かの建設途中で止めた場所みたいだね」
一は知らない事だが、この場所は地下街の建設地だった場所。しかし途中で様々な理由により建設が中止されて放置されている。
「家出してからは、ここで住んでるんだ」
「そうなんだ…でも、どうして家出をしたの?」
「とりあえず、座ろうか」
一に勧められて力斗は置かれていた椅子に座る。その前で一も椅子に座った。この椅子は建設作業員が休憩中に使っていたものだ。この椅子も放置されている。
「さて、僕が家出をした理由だよね。学校に行ってる時、友達がイジメられてたんだ。それを僕の能力で助けたら、なぜか僕が怒られたんだ」
「能力って?」
「これだよ」
そう言って一は指先から火を出してみせた。
「僕の能力は体から火を出せる事。これでイジメてる奴らを火傷させちゃったんだ。そしたら父さんと母さんが呼ばれて僕が怒られた。それが嫌で家出をしたんだよ」
「うん。一くんは悪くないもんね。怒られるのはおかしいよ」
「良かった!力斗くんもそう思ってくれるんだね」
「うん!」
「力斗くんはどうして捨てられたの?」
「やっぱり、僕は捨てられたのかな?」
「たぶんね。心当たりはある?」
一の言葉に力斗は少し考えた。
「もしかして、これのせいかも」
そう言って力斗は近くに落ちていたコンクリートの破片を指で弾く。するとコンクリートの破片は粉々になった。それを見て一は驚く。
「これをお母さんの前でやったんだ」
「その能力が原因かもしれないね」
一の予想通り、力斗の両親は特殊な能力というものを気味悪がっていた。それが原因で力斗を捨てる事にしたのだ。
「これからどうしよう…」
「ここで一緒に住もう!」
「ここで?」
「そう。2人なら寂しくないし、一緒に色んな事もできると思うんだ!」
「…うん。そうだね!家にも帰れないし」
力斗の言葉に一は喜んだ。
一方。力斗を捨てた父親は自宅に帰っていた。
「ふぅ…」
「お帰りなさい」
「ただいま。あの子の事は忘れよう。俺達には、もう1人、息子がいるからな」
「そうね。あの子の事は残念だけど、仕方ないわ」
2人は力斗の名前すら言おうとしなかった。完全に忘れようとしているからだ。
その時、2人の傍に1人の少年がやって来た。
「お父さん、どこかに行ってたの?」
「ああ、知生か。ちょっと用事があったんだ」
両親に話しかけたのは力斗の兄である知生、8歳。
「そうなんだ。ねぇ、力斗は?一緒に車で出かけたよね?」
「…見ていたのか」
「うん」
知生は2階の自室から、力斗が父親に連れられて車で出かけた事を見ていたのだ。
「知らなくて良い。知生、あの子の事は忘れるんだ」
「どうして?」
「どうしてもだ」
「知生、もう寝なさい。明日も学校があるでしょ?」
「でも力斗が…」
「いいから忘れるんだ!」
父親が怒鳴ったので、知生は驚く。
「力斗を…捨てたの?特殊な能力があるから?」
「知っていたのか?!」
「うん」
「それなら分かるだろう。あんな子、俺達の家族には不釣り合いなんだ。もう生きていようが死んでいようが関係ない!」
「…じゃあ僕も要らないね」
知生がそう言うと、家の中に風が吹き荒れる。
「お前もか!」
「そんな!知生も?!」
「力斗をどこへ連れて行ったんだ!」
「誰が教えるか!お前も出て行け!」
「出て行くよ!でも、その前に、力斗を捨てた事………許さない!」
知生は玄関から出て行くと振り返って、両親に向かって言った。直後、大きな竜巻が発生、竜巻は家を飲み込んだ。
「…早く力斗を探さないと」
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