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3 新聞社の女
12・消し去られた過去
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結城は隣の駅で人ごみに押し流されるように降りると、流れに乗って改札へ。スマホをかざし改札を抜ける。
スマホの地図アプリを展開させてつつ、バス乗り場の横を通り抜けた。確か近くにビジネスホテルが数件建っていたはずだ。
そこ中でTVが設置されているところを選ぶ、空き部屋状況を確認する。当日OKのところを見つけ予約を入れた。
「すみません、予約を入れた者ですが」
予約してすぐにホテルに駆けこむ。
一刻も早く状況を把握したい。
フロントのカウンターでカードキーを受け取り、部屋に向かった。
キャリーケースを入り口に置くと同時にぱたんと入り口のドアが締まる。オートロックとあったのでそのまま奥のベッドへ向かった。ベッドの近くにはTVがあった。
上着を脱ぐのももどかしく、TVリモコンのスイッチを押す。
緊急速報から緊急TV番組に切り替わるところであった。
TVではひっきりなしに、先ほどの事件の状況が繰り返されている。TVリポーターは興奮状態なのか、同じ言葉ばかりを繰り返していた。
白昼堂々と行われた事件。
日本の安全神話などは何千年も昔に崩壊していたが、やはり武器を持たない国として事件が起こるたびに蜂の巣をつついたような状況になるのは否めない。しかし結城は極めて冷静にそれを観察していた。
先ほどの事件に巻き込まれた議員は病院に運ばれたらしい。
だが事件のショックが大きいのか、多くの人が現場に留まっていると言った状況だ。
「え……?」
字幕をじっと見ていた結城はあることに気づき、驚愕する。
病院へは母が向かっているという。妻は入院中なのだから向かえないのは仕方ないと思えた。だが、字幕にはその議員が単身であることが書かれているのだ。
それを見た結城は、放送事故か勘違いなのかと思った。
慌ててチャンネルを変えるがどこもこの事件を扱っている。そしてどこの放送局も彼が単身であり、母が病院に向かっていると告げているのだ。
「嘘でしょ? どういうことなの?」
ここ最近、離婚したとでもいうのだろうか?
だが彼の情報については一応目を通していたはず。
結城はキャリーケースからノートパソコンを取り出すと、電源を入れ立ち上げた。その間に彼について、プロフィールを検索する。
「なにこれ!」
彼について調べ始めた時、確かに婚姻の事実はあったはずだ。
しかし現在ではそのことが削除されていた。
立ち上げたノートパソコンで彼についていろいろ知らべてみるも、どこにも婚姻の事実がなかったのである。
まるで自分だけが違う世界に来てしまったような、謎の現象が起きていた。
一体、いつ消されたのかも定かではない。
確かに自分は見たはずなのだ。そして雛本医院の前で彼と話し、妻がいることを確認している。
「そうだ。あの子なら」
結城は自分に情報をくれた友人にメッセージを送ってみた。
すぐには既読がつかなかった。
──こんなことってあり得るの?
数分後、友人から返信が。
彼女は”それは気のせいではないか”という返答。
まさか、世界中が口裏でも合わせているとでもいうのだろうか?
そう言えばと、雛本夫妻の様子を思い出す。
あの議員の妻は雛本一族の者。彼らにとってあの議員は身内のはず。
しかも和史は医院であっているはずなのだ。
それなのに見ず知らずのように見えた。
──もしかしたら、雛本家が一枚嚙んでいるのかもしれない。
後ずさる結城の目にはどこかへ連絡する妻の姿が映っていた。
二人にこの議員について話を聞くべきだ。
自宅は知っている。今行っても不在かも知れない。
「決行は明日」
もし一枚嚙んでいるとしたら、自分の身にも危険が及ぶかもしれない。
全ての記事から婚姻の事実を消し去ったなら、身内にハッカーがいる可能性もある。
結城は護身用にナイフを持っていくことににした。
その選択が最悪の結末を呼ぶとも知らずに。
スマホの地図アプリを展開させてつつ、バス乗り場の横を通り抜けた。確か近くにビジネスホテルが数件建っていたはずだ。
そこ中でTVが設置されているところを選ぶ、空き部屋状況を確認する。当日OKのところを見つけ予約を入れた。
「すみません、予約を入れた者ですが」
予約してすぐにホテルに駆けこむ。
一刻も早く状況を把握したい。
フロントのカウンターでカードキーを受け取り、部屋に向かった。
キャリーケースを入り口に置くと同時にぱたんと入り口のドアが締まる。オートロックとあったのでそのまま奥のベッドへ向かった。ベッドの近くにはTVがあった。
上着を脱ぐのももどかしく、TVリモコンのスイッチを押す。
緊急速報から緊急TV番組に切り替わるところであった。
TVではひっきりなしに、先ほどの事件の状況が繰り返されている。TVリポーターは興奮状態なのか、同じ言葉ばかりを繰り返していた。
白昼堂々と行われた事件。
日本の安全神話などは何千年も昔に崩壊していたが、やはり武器を持たない国として事件が起こるたびに蜂の巣をつついたような状況になるのは否めない。しかし結城は極めて冷静にそれを観察していた。
先ほどの事件に巻き込まれた議員は病院に運ばれたらしい。
だが事件のショックが大きいのか、多くの人が現場に留まっていると言った状況だ。
「え……?」
字幕をじっと見ていた結城はあることに気づき、驚愕する。
病院へは母が向かっているという。妻は入院中なのだから向かえないのは仕方ないと思えた。だが、字幕にはその議員が単身であることが書かれているのだ。
それを見た結城は、放送事故か勘違いなのかと思った。
慌ててチャンネルを変えるがどこもこの事件を扱っている。そしてどこの放送局も彼が単身であり、母が病院に向かっていると告げているのだ。
「嘘でしょ? どういうことなの?」
ここ最近、離婚したとでもいうのだろうか?
だが彼の情報については一応目を通していたはず。
結城はキャリーケースからノートパソコンを取り出すと、電源を入れ立ち上げた。その間に彼について、プロフィールを検索する。
「なにこれ!」
彼について調べ始めた時、確かに婚姻の事実はあったはずだ。
しかし現在ではそのことが削除されていた。
立ち上げたノートパソコンで彼についていろいろ知らべてみるも、どこにも婚姻の事実がなかったのである。
まるで自分だけが違う世界に来てしまったような、謎の現象が起きていた。
一体、いつ消されたのかも定かではない。
確かに自分は見たはずなのだ。そして雛本医院の前で彼と話し、妻がいることを確認している。
「そうだ。あの子なら」
結城は自分に情報をくれた友人にメッセージを送ってみた。
すぐには既読がつかなかった。
──こんなことってあり得るの?
数分後、友人から返信が。
彼女は”それは気のせいではないか”という返答。
まさか、世界中が口裏でも合わせているとでもいうのだろうか?
そう言えばと、雛本夫妻の様子を思い出す。
あの議員の妻は雛本一族の者。彼らにとってあの議員は身内のはず。
しかも和史は医院であっているはずなのだ。
それなのに見ず知らずのように見えた。
──もしかしたら、雛本家が一枚嚙んでいるのかもしれない。
後ずさる結城の目にはどこかへ連絡する妻の姿が映っていた。
二人にこの議員について話を聞くべきだ。
自宅は知っている。今行っても不在かも知れない。
「決行は明日」
もし一枚嚙んでいるとしたら、自分の身にも危険が及ぶかもしれない。
全ての記事から婚姻の事実を消し去ったなら、身内にハッカーがいる可能性もある。
結城は護身用にナイフを持っていくことににした。
その選択が最悪の結末を呼ぶとも知らずに。
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