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4 雛本一族の事情
26 気がかりなこと
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バスから窓の外を眺めながら、気になっていることについて考える。
さすがに優人もバスの中ではスマホを弄らず、静かに音楽を聴いているようだ。有線で音楽を聴いている姿を見て、自分たち以外に乗客が居なくても、良識を優先するのだなと思っていた。
頭を支配するのは特に『真ん中』について。
その事を優人に確かめようとしたが、それについての知識は確かではないので本家で確認した方が確実だと言われてしまった。
カナが中間子と言うのとは無関係なのだろう。彼女は実の妹ではない可能性があるのだから。
他にも謎に思うのは父が『甘党』というTシャツを着ていたこと。
あの年は確かに○○党Tシャツが流行った。
恐らく母がふざけて買ってきたに違いないが、有名どころでは『紅茶党、無党(無糖)』お菓子の名前やSNSの名前というのもあったのだ。
何故そんなに自己主張する必要があったのかは謎だが。
あえてマイナーな『甘党』にしたのは何故なのだろう?
──父は甘党だったか?
なぜこんなに父のことを覚えていないのか?
あまり家に居なかったからだと思われる。
和宏たちの父は医者だった。
医者家系だったと聞くが、今思えばそれは雛本一族の存続のためだと想像できる。なるべく他者と関わらず、ひっそりと生きなければならないであろう雛本本家の人々の為。
そうなると仮に不倫をしていても、相手は雛本一族の誰かと言うことになるが、その考えは突飛だと思いたい。
母は父のことが大好きだったと思うから。
むしろ父の方が母を溺愛していたように思う。
『いいって言っているのに、遅くなる日はお休みコールを入れて来るのよ。あの人ったら』
と母が以前カナに対し惚気ていたのを聞いたことがあるからだ。
そして先ほど流れていたニュース。
音声があればどんなニュースか詳しく知ることが出来るだろうが、文字で出ていた『○○区の公園近く、焼死体』だけではわからない。
とても気になるのだから、後で調べた方が良いのだと思う。
人生は偶然と思われることが必然だったりすることが多い。
平田が言いかけたことの内容については、先ほど解決した。
『ああ、それなら……』
と優人が説明してくれたから。
和宏の、
『そうだな。君の方がモテそうなのに』
に対し、彼は返答を言い淀んでいる。
言及したわけではないが、とても気になったのだ。
優人はそれに対し、
『それは単に、平田が兄さんから嫌われていると思っていたからでしょ?』
と。
別に嫌っていたわけではない。
紹介してくれないし、ちょっと仲良過ぎなんじゃないか? と思うだけで。
──それによく彼の家に泊まりに行くし……って、俺は娘を心配する父親か!
心の中でセルフツッコミを入れつつ、赤くなったり青くなったりしているうちに、目的のバス停へバスが滑り込む。
バスから降りると、
「一人で百面相してたけれど、大丈夫?」
と優人に心配されてしまう。
見てたのか⁈ と顔を赤らめつつ、
「大丈夫だ、問題ない」
と返答する。
その実、全然大丈夫ではない。
「そういえば、兄さん」
「なんだ?」
和宏は黒のスラックスに白の半そでのワイシャツに、落ち着いた柄のネクタイといういで立ちをしていた。胸ポケットにはスマホ。
スラックスのポケットには家の鍵。尻のポケットにはハンカチを入れている。
「今日の持ち物は?」
「スマホと鍵とハンカチだ」
「うん、よろしい」
さすがの和宏も前回学んだのだ。
靴は一見革靴に見えるスポーツシューズ。いつでも走れるように、荷物は最小限にすべきだということを。
「何かあっても、平田に迎えに来てもらえるように頼んであるから」
と彼。
無事でありたいなと思いながら、二人は雛本本家に向けて一歩を踏み出したのだった。
さすがに優人もバスの中ではスマホを弄らず、静かに音楽を聴いているようだ。有線で音楽を聴いている姿を見て、自分たち以外に乗客が居なくても、良識を優先するのだなと思っていた。
頭を支配するのは特に『真ん中』について。
その事を優人に確かめようとしたが、それについての知識は確かではないので本家で確認した方が確実だと言われてしまった。
カナが中間子と言うのとは無関係なのだろう。彼女は実の妹ではない可能性があるのだから。
他にも謎に思うのは父が『甘党』というTシャツを着ていたこと。
あの年は確かに○○党Tシャツが流行った。
恐らく母がふざけて買ってきたに違いないが、有名どころでは『紅茶党、無党(無糖)』お菓子の名前やSNSの名前というのもあったのだ。
何故そんなに自己主張する必要があったのかは謎だが。
あえてマイナーな『甘党』にしたのは何故なのだろう?
──父は甘党だったか?
なぜこんなに父のことを覚えていないのか?
あまり家に居なかったからだと思われる。
和宏たちの父は医者だった。
医者家系だったと聞くが、今思えばそれは雛本一族の存続のためだと想像できる。なるべく他者と関わらず、ひっそりと生きなければならないであろう雛本本家の人々の為。
そうなると仮に不倫をしていても、相手は雛本一族の誰かと言うことになるが、その考えは突飛だと思いたい。
母は父のことが大好きだったと思うから。
むしろ父の方が母を溺愛していたように思う。
『いいって言っているのに、遅くなる日はお休みコールを入れて来るのよ。あの人ったら』
と母が以前カナに対し惚気ていたのを聞いたことがあるからだ。
そして先ほど流れていたニュース。
音声があればどんなニュースか詳しく知ることが出来るだろうが、文字で出ていた『○○区の公園近く、焼死体』だけではわからない。
とても気になるのだから、後で調べた方が良いのだと思う。
人生は偶然と思われることが必然だったりすることが多い。
平田が言いかけたことの内容については、先ほど解決した。
『ああ、それなら……』
と優人が説明してくれたから。
和宏の、
『そうだな。君の方がモテそうなのに』
に対し、彼は返答を言い淀んでいる。
言及したわけではないが、とても気になったのだ。
優人はそれに対し、
『それは単に、平田が兄さんから嫌われていると思っていたからでしょ?』
と。
別に嫌っていたわけではない。
紹介してくれないし、ちょっと仲良過ぎなんじゃないか? と思うだけで。
──それによく彼の家に泊まりに行くし……って、俺は娘を心配する父親か!
心の中でセルフツッコミを入れつつ、赤くなったり青くなったりしているうちに、目的のバス停へバスが滑り込む。
バスから降りると、
「一人で百面相してたけれど、大丈夫?」
と優人に心配されてしまう。
見てたのか⁈ と顔を赤らめつつ、
「大丈夫だ、問題ない」
と返答する。
その実、全然大丈夫ではない。
「そういえば、兄さん」
「なんだ?」
和宏は黒のスラックスに白の半そでのワイシャツに、落ち着いた柄のネクタイといういで立ちをしていた。胸ポケットにはスマホ。
スラックスのポケットには家の鍵。尻のポケットにはハンカチを入れている。
「今日の持ち物は?」
「スマホと鍵とハンカチだ」
「うん、よろしい」
さすがの和宏も前回学んだのだ。
靴は一見革靴に見えるスポーツシューズ。いつでも走れるように、荷物は最小限にすべきだということを。
「何かあっても、平田に迎えに来てもらえるように頼んであるから」
と彼。
無事でありたいなと思いながら、二人は雛本本家に向けて一歩を踏み出したのだった。
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