20 / 84
4 雛本一族の事情
18 あの日の動画
しおりを挟む
あの日のズレについて修正を行った二人は二手に分かれ、動画の検索を行った。十年近く前のものであるということもあり、閉鎖されたSNSやアカウントを削除した人々も多く、センシティブな内容としてSNSの管理側から消されたものあったようだ。
日本は戦争をしない国。
安全神話は等の昔に崩壊したが、原因を探りそれについて解決するというわけではなく、安易に隠すということが未だに行われていた。
何が正しいのかなんて誰にも分からないが、少なくとも”刺激的な”動画や画像は削除対象となる。
要人の殺害現場となれは、それは顕著。
残っていたのは、その事件の前後の動画や画像ばかりであった。
それでも二人にとっては収穫となる。
一通り検索が終わる頃にはとっぷりと日が暮れており、この漫画喫茶で三時間近く経過したことが分かった。
優人の友人である平田に優人の車で迎えに来て欲しいと連絡すると、しぶしぶと言った様子でOKをくれたらしい。
不満そうにしているのは、優人に良いように使われているからではなく、優人の彼女からかかって来た電話のせいだと言う。
それについては直接会って話すといい、一旦通話を切ったようだ。
「どう思う? 優人」
それは平田のことではない。
動画には確かに自分たちの両親と思しき人が映りこんでいた。
しかしそこに居て、事件を見ていたのは何も両親だけではない。かなり多くの人がいたところで、白昼堂々と事件は起こったようである。
「新聞の記事に関しては、こじつけかなとは思う」
優人の率直な意見を聞き和宏は、ネオンで賑やかになった街並みに目をやる。
「だが、確証もないのに新聞の記事として載せるかな?」
「それは俺も思うよ」
と同意する彼。
「どんな経緯で、あの記事が掲載されることになったのかわからないけれど。両親の事件と新聞記者の失踪、要人の事件は繋がっている気がする」
彼が見上げているモニター画面に目を向けると、相も変わらずユニーのCMが流れていた。
優人はCMの流されはじめた日にここへ来たことを印象付けるために、流行となる前に衣類を購入したと言ってはいたが。
ため息をついた彼が、ポケットからスマホを取り出しロックを解除する。
「街コンか……」
「ん? なんだって?」
彼のスマホの画面を覗き込むと、どうやら検索履歴を眺めているようだ。
「兄さん、合コンしない?」
「こんな時に何を言っているんだよ」
「平田も誘うから」
そういう問題じゃないだろうと思っていると、
「まだ、確率は何とも言えないけれどさ」
と彼はメッセージアプリを起動した。
まさか、今日連絡先を受け取った女性たちと合コンでもしようと言うのだろうか?
そう考えても、全員優人狙いだ。血の雨が降るに違いない。
「俺たちってさ、刑事でもなければ探偵でもない。だから、聞き込みをしたところで話して貰えるとは思えない」
「そうだな」
「でも、この新聞の記事が掲載された経緯について知らないと、なにも進まない気がするんだ」
優人の話を聞いていた和宏は”まさか”と思う。
「あの新聞社、この辺りだったよね」
それはきっと賭けでしかない。
四人の中にツテがあれば。それが優人の案。
合コンという口実で、新聞社の関係者と繋がろうとしているのだ。
本来なら片織に頼るのが確実。
だが、片織は自分たちを疑っている。下手に動いては危険だ。
「しかし、合コンなんかに行ったら、恋人が怒るんじゃないのか?」
「大丈夫。そこは良い口実を考えてあるから」
二人がどんな付き合い方をしているのかは、わからない。
余裕そうに見えるその姿を少し羨ましいと感じ、ふと横を見れば向かい側のショーウインドウに自分たちの姿が映りこんでいた。
「髪、染めようかな」
和宏が黒のストレートの前髪を一つまみして呟くように言うと、
「似合わないから、やめた方がいい」
と優人に断言されてしまったのだった。
日本は戦争をしない国。
安全神話は等の昔に崩壊したが、原因を探りそれについて解決するというわけではなく、安易に隠すということが未だに行われていた。
何が正しいのかなんて誰にも分からないが、少なくとも”刺激的な”動画や画像は削除対象となる。
要人の殺害現場となれは、それは顕著。
残っていたのは、その事件の前後の動画や画像ばかりであった。
それでも二人にとっては収穫となる。
一通り検索が終わる頃にはとっぷりと日が暮れており、この漫画喫茶で三時間近く経過したことが分かった。
優人の友人である平田に優人の車で迎えに来て欲しいと連絡すると、しぶしぶと言った様子でOKをくれたらしい。
不満そうにしているのは、優人に良いように使われているからではなく、優人の彼女からかかって来た電話のせいだと言う。
それについては直接会って話すといい、一旦通話を切ったようだ。
「どう思う? 優人」
それは平田のことではない。
動画には確かに自分たちの両親と思しき人が映りこんでいた。
しかしそこに居て、事件を見ていたのは何も両親だけではない。かなり多くの人がいたところで、白昼堂々と事件は起こったようである。
「新聞の記事に関しては、こじつけかなとは思う」
優人の率直な意見を聞き和宏は、ネオンで賑やかになった街並みに目をやる。
「だが、確証もないのに新聞の記事として載せるかな?」
「それは俺も思うよ」
と同意する彼。
「どんな経緯で、あの記事が掲載されることになったのかわからないけれど。両親の事件と新聞記者の失踪、要人の事件は繋がっている気がする」
彼が見上げているモニター画面に目を向けると、相も変わらずユニーのCMが流れていた。
優人はCMの流されはじめた日にここへ来たことを印象付けるために、流行となる前に衣類を購入したと言ってはいたが。
ため息をついた彼が、ポケットからスマホを取り出しロックを解除する。
「街コンか……」
「ん? なんだって?」
彼のスマホの画面を覗き込むと、どうやら検索履歴を眺めているようだ。
「兄さん、合コンしない?」
「こんな時に何を言っているんだよ」
「平田も誘うから」
そういう問題じゃないだろうと思っていると、
「まだ、確率は何とも言えないけれどさ」
と彼はメッセージアプリを起動した。
まさか、今日連絡先を受け取った女性たちと合コンでもしようと言うのだろうか?
そう考えても、全員優人狙いだ。血の雨が降るに違いない。
「俺たちってさ、刑事でもなければ探偵でもない。だから、聞き込みをしたところで話して貰えるとは思えない」
「そうだな」
「でも、この新聞の記事が掲載された経緯について知らないと、なにも進まない気がするんだ」
優人の話を聞いていた和宏は”まさか”と思う。
「あの新聞社、この辺りだったよね」
それはきっと賭けでしかない。
四人の中にツテがあれば。それが優人の案。
合コンという口実で、新聞社の関係者と繋がろうとしているのだ。
本来なら片織に頼るのが確実。
だが、片織は自分たちを疑っている。下手に動いては危険だ。
「しかし、合コンなんかに行ったら、恋人が怒るんじゃないのか?」
「大丈夫。そこは良い口実を考えてあるから」
二人がどんな付き合い方をしているのかは、わからない。
余裕そうに見えるその姿を少し羨ましいと感じ、ふと横を見れば向かい側のショーウインドウに自分たちの姿が映りこんでいた。
「髪、染めようかな」
和宏が黒のストレートの前髪を一つまみして呟くように言うと、
「似合わないから、やめた方がいい」
と優人に断言されてしまったのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
特殊捜査官・天城宿禰の事件簿~乙女の告発
斑鳩陽菜
ミステリー
K県警捜査一課特殊捜査室――、そこにたった一人だけ特殊捜査官の肩書をもつ男、天城宿禰が在籍している。
遺留品や現場にある物が残留思念を読み取り、犯人を導くという。
そんな県警管轄内で、美術評論家が何者かに殺害された。
遺体の周りには、大量のガラス片が飛散。
臨場した天城は、さっそく残留思念を読み取るのだが――。
月夜のさや
蓮恭
ミステリー
いじめられっ子で喘息持ちの妹の療養の為、父の実家がある田舎へと引っ越した主人公「天野桐人(あまのきりと)」。
夏休み前に引っ越してきた桐人は、ある夜父親と喧嘩をして家出をする。向かう先は近くにある祖母の家。
近道をしようと林の中を通った際に転んでしまった桐人を助けてくれたのは、髪の長い綺麗な顔をした女の子だった。
夏休み中、何度もその女の子に会う為に夜になると林を見張る桐人は、一度だけ女の子と話す機会が持てたのだった。話してみればお互いが孤独な子どもなのだと分かり、親近感を持った桐人は女の子に名前を尋ねた。
彼女の名前は「さや」。
夏休み明けに早速転校生として村の学校で紹介された桐人。さやをクラスで見つけて話しかけるが、桐人に対してまるで初対面のように接する。
さやには『さや』と『紗陽』二つの人格があるのだと気づく桐人。日によって性格も、桐人に対する態度も全く変わるのだった。
その後に起こる事件と、村のおかしな神事……。
さやと紗陽、二人の秘密とは……?
※ こちらは【イヤミス】ジャンルの要素があります。どんでん返し好きな方へ。
「小説家になろう」にも掲載中。
探偵たちに時間はない
探偵とホットケーキ
ミステリー
前作:https://www.alphapolis.co.jp/novel/888396203/60844775
読まなくても今作だけで充分にご理解いただける内容です。
「探偵社アネモネ」には三人の探偵がいる。
ツンデレ気質の水樹。紳士的な理人。そしてシャムネコのように気紛れな陽希。
彼らが様々な謎を解決していくミステリー。
今作は、有名時計作家の屋敷で行われたミステリー会に参加することに。其処で事件が発生し――
***
カクヨム版 https://kakuyomu.jp/works/16818093087826945149
小説家になろう版 https://ncode.syosetu.com/n2538js/
Rising Star掲載経験ありのシリーズです。https://estar.jp/selections/501
VIVACE
鞍馬 榊音(くらま しおん)
ミステリー
金髪碧眼そしてミニ薔薇のように色付いた唇、その姿を見たものは誰もが心を奪われるという。そんな御伽噺話の王子様が迎えに来るのは、宝石、絵画、美術品……!?
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。
事故現場・観光パンフレット
山口かずなり
ミステリー
事故現場・観光パンフレット。
こんにちわ 「あなた」
五十音順に名前を持つ子どもたちの死の舞台を観光する前に、パンフレットを贈ります。
約束の時代、時刻にお待ちしております。
(事故現場観光パンフレットは、不幸でしあわせな子どもたちという小説の続編です)
【完結】シリアルキラーの話です。基本、この国に入ってこない情報ですから、、、
つじんし
ミステリー
僕は因が見える。
因果関係や因果応報の因だ。
そう、因だけ...
この力から逃れるために日本に来たが、やはりこの国の警察に目をつけられて金のために...
いや、正直に言うとあの日本人の女に利用され、世界中のシリアルキラーを相手にすることになってしまった...
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる