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4 雛本一族の事情

18 あの日の動画

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 あの日のズレについて修正を行った二人は二手に分かれ、動画の検索を行った。十年近く前のものであるということもあり、閉鎖されたSNSやアカウントを削除した人々も多く、センシティブな内容としてSNSの管理側から消されたものあったようだ。

 日本は戦争をしない国。
 安全神話は等の昔に崩壊したが、原因を探りそれについて解決するというわけではなく、安易に隠すということが未だに行われていた。
 何が正しいのかなんて誰にも分からないが、少なくとも”刺激的な”動画や画像は削除対象となる。
 要人の殺害現場となれは、それは顕著。
 残っていたのは、その事件の前後の動画や画像ばかりであった。
 それでも二人にとっては収穫となる。

 一通り検索が終わる頃にはとっぷりと日が暮れており、この漫画喫茶で三時間近く経過したことが分かった。
 優人の友人である平田に優人の車で迎えに来て欲しいと連絡すると、しぶしぶと言った様子でOKをくれたらしい。
 不満そうにしているのは、優人に良いように使われているからではなく、優人の彼女からかかって来た電話のせいだと言う。
 それについては直接会って話すといい、一旦通話を切ったようだ。

「どう思う? 優人」
 それは平田のことではない。
 動画には確かに自分たちの両親と思しき人が映りこんでいた。
 しかしそこに居て、事件を見ていたのは何も両親だけではない。かなり多くの人がいたところで、白昼堂々と事件は起こったようである。
「新聞の記事に関しては、こじつけかなとは思う」
 優人の率直な意見を聞き和宏は、ネオンで賑やかになった街並みに目をやる。
「だが、確証もないのに新聞の記事として載せるかな?」
「それは俺も思うよ」
と同意する彼。

「どんな経緯で、あの記事が掲載されることになったのかわからないけれど。両親の事件と新聞記者の失踪、要人の事件は繋がっている気がする」
 彼が見上げているモニター画面に目を向けると、相も変わらずユニーのCMが流れていた。
 優人はCMの流されはじめた日にここへ来たことを印象付けるために、流行となる前に衣類を購入したと言ってはいたが。
 ため息をついた彼が、ポケットからスマホを取り出しロックを解除する。

「街コンか……」
「ん? なんだって?」
 彼のスマホの画面を覗き込むと、どうやら検索履歴を眺めているようだ。
「兄さん、合コンしない?」
「こんな時に何を言っているんだよ」
「平田も誘うから」
 そういう問題じゃないだろうと思っていると、
「まだ、確率は何とも言えないけれどさ」
と彼はメッセージアプリを起動した。
 まさか、今日連絡先を受け取った女性たちと合コンでもしようと言うのだろうか? 
 そう考えても、全員優人狙いだ。血の雨が降るに違いない。

「俺たちってさ、刑事でもなければ探偵でもない。だから、聞き込みをしたところで話して貰えるとは思えない」
「そうだな」
「でも、この新聞の記事が掲載された経緯について知らないと、なにも進まない気がするんだ」
 優人の話を聞いていた和宏は”まさか”と思う。
「あの新聞社、この辺りだったよね」
 それはきっと賭けでしかない。
 四人の中にツテがあれば。それが優人の案。
 合コンという口実で、新聞社の関係者と繋がろうとしているのだ。

 本来なら片織に頼るのが確実。
 だが、片織は自分たちを疑っている。下手に動いては危険だ。

「しかし、合コンなんかに行ったら、恋人が怒るんじゃないのか?」
「大丈夫。そこは良い口実を考えてあるから」
 二人がどんな付き合い方をしているのかは、わからない。
 余裕そうに見えるその姿を少し羨ましいと感じ、ふと横を見れば向かい側のショーウインドウに自分たちの姿が映りこんでいた。
「髪、染めようかな」
 和宏が黒のストレートの前髪を一つまみして呟くように言うと、
「似合わないから、やめた方がいい」
と優人に断言されてしまったのだった。
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