26 / 39
『猟奇的、美形兄は』
23:兄、土産につき
しおりを挟む
車を出すというので、シートベルトを締める愛都。そこで後部座席に透明なビニールに入った何かを見つける。ビニール袋には今しがた兄がタピオカドリンクを購入した店の名前が印刷されていた。まさか、他にもドリンクを買ったのか、と兄に視線を移せば、
「どうかしたか?まな」
と、どうやら視線には気づいたらしい。
「ねえ、後ろの袋って」
と、愛都は恐る恐る尋ねる。
すると兄は、
「ああ、あの店ドーナツも売ってるんだ。あとでまなと食べようかなと思って」
と。
──ドーナツだと?
愛都はとてつもなく嫌な予感がした。
「お×××ん型ドーナツだよ、まな。キュートじゃない?」
「ぶッ」
あれだけ、お×××んを食べて、まだお×××んが食べ足りないというのか?
(言ってることはクレイジーだが、タピオカとドーナツである)
「お兄ちゃんは、ほんとにお×××んが大好きなんだね」
「一番好きなのは、まなのお×××んだよ」
(かなりトチ狂っている)
愛都はどんなものなのだろうかと、後部座席の袋に手を伸ばす。
ビニール袋の中に紙袋に入った物体が。そろっと開けると、中には予想を遥かに上回るブツが入っていた。
「お×××んがいっぱい」
とぎょっとする愛都。
ドーナツはカラフルで、一口サイズ。なんだかたくさん入っている。
「グラム売りだからね」
──グラム売りの一口サイズのカラフルな、お×××ん……。
もう、想像しただけでクレイジーこの上ない。
愛都は見なかったことにした。
「母にも少しやるか」
愛都には”母も少しヤルか”に聞こえ、兄を二度見してしまう。
とうとう人(愛都の)の親にまで手を出そうとしているのかと、頭の心配をしたが、愛都の聞き違いだったようだ。
「母もお×××ん大好きって言っていたしな」
(そんなことは一言も言っていない)
「いや、それは止めた方がいいと思うの」
と、愛都。
こんなモノを渡した日には大目玉を食らうに違いない。
「何故だ。幸せとは分け合うものだろう? まなよ」
言っていることは美しいが、分け合うのは百歩譲っても、お×××んである。
そんなもの分けられても嬉しくないだろう。
「まな。まなの素敵なお兄ちゃんはな」
自称素敵なお兄ちゃんの演説が始まった。
「美味しいものは分け合うべきだと思うんだ」
(形が問題である)
「母よ!土産だ」
兄は案の定、愛都が止めるのも聞かず、母に紙袋を渡す。
中を見た母は、
「ぎゃあああああ! なんなのこの気持ち悪い物体は!」
と、予想通り悲鳴を上げる。
「お×××んだ」
「は?」
「間違った。お×××ん型ドーナツだ」
(何故間違った?)
「いらないわよ!」
「何故だ、母よ」
いつも通り兄と母は玄関で揉めている。
「もう、ほんとバカなんだから」
「馬鹿とはなんだ。天才といえ。長男だぞ」
「長男だろうが次男だろうが、馬鹿だから馬鹿って言ってるんでしょ! もーどこで育て方間違ったのかしら」
(母に責任はない)
「どうかしたか?まな」
と、どうやら視線には気づいたらしい。
「ねえ、後ろの袋って」
と、愛都は恐る恐る尋ねる。
すると兄は、
「ああ、あの店ドーナツも売ってるんだ。あとでまなと食べようかなと思って」
と。
──ドーナツだと?
愛都はとてつもなく嫌な予感がした。
「お×××ん型ドーナツだよ、まな。キュートじゃない?」
「ぶッ」
あれだけ、お×××んを食べて、まだお×××んが食べ足りないというのか?
(言ってることはクレイジーだが、タピオカとドーナツである)
「お兄ちゃんは、ほんとにお×××んが大好きなんだね」
「一番好きなのは、まなのお×××んだよ」
(かなりトチ狂っている)
愛都はどんなものなのだろうかと、後部座席の袋に手を伸ばす。
ビニール袋の中に紙袋に入った物体が。そろっと開けると、中には予想を遥かに上回るブツが入っていた。
「お×××んがいっぱい」
とぎょっとする愛都。
ドーナツはカラフルで、一口サイズ。なんだかたくさん入っている。
「グラム売りだからね」
──グラム売りの一口サイズのカラフルな、お×××ん……。
もう、想像しただけでクレイジーこの上ない。
愛都は見なかったことにした。
「母にも少しやるか」
愛都には”母も少しヤルか”に聞こえ、兄を二度見してしまう。
とうとう人(愛都の)の親にまで手を出そうとしているのかと、頭の心配をしたが、愛都の聞き違いだったようだ。
「母もお×××ん大好きって言っていたしな」
(そんなことは一言も言っていない)
「いや、それは止めた方がいいと思うの」
と、愛都。
こんなモノを渡した日には大目玉を食らうに違いない。
「何故だ。幸せとは分け合うものだろう? まなよ」
言っていることは美しいが、分け合うのは百歩譲っても、お×××んである。
そんなもの分けられても嬉しくないだろう。
「まな。まなの素敵なお兄ちゃんはな」
自称素敵なお兄ちゃんの演説が始まった。
「美味しいものは分け合うべきだと思うんだ」
(形が問題である)
「母よ!土産だ」
兄は案の定、愛都が止めるのも聞かず、母に紙袋を渡す。
中を見た母は、
「ぎゃあああああ! なんなのこの気持ち悪い物体は!」
と、予想通り悲鳴を上げる。
「お×××んだ」
「は?」
「間違った。お×××ん型ドーナツだ」
(何故間違った?)
「いらないわよ!」
「何故だ、母よ」
いつも通り兄と母は玄関で揉めている。
「もう、ほんとバカなんだから」
「馬鹿とはなんだ。天才といえ。長男だぞ」
「長男だろうが次男だろうが、馬鹿だから馬鹿って言ってるんでしょ! もーどこで育て方間違ったのかしら」
(母に責任はない)
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる