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『猟奇的、美形兄は』

21:兄、衝撃につき

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────駐車場にて。

「んんんーッ! おパンティ!」
 兄は車を降りると、伸びをする。
(どんな伸びの仕方だそれは)

 (株)原始人が経営する【ステーキ ”厚切り原始人”】は休日のお昼時と言うこともあり盛況だ。
 切るところは明らかにおかしいが。
「さあ、まな。美味しいお尻……おおっと! お肉を食べようじゃないか」
(なんで言い間違えた?)
 確かに盛り方はお尻型ではあるが。
 愛都は余計なことを言わないよう、細心の注意を払い車か降りると、何故か兄が股間に飛び込んできた。
「ぎゃっ!」
「あああああ! まなのお×××んが飛び込んできたあ!」
 どう考えても飛び込んできたのは兄である。
「突然のラッキースケベは心臓に悪いね」
 勝手に飛び込んできて、ラッキーも糞もない。
「あああ、まるでエアバックのようだ」
 兄は愛都の股間にスリスリしながら。
 一体何を言ってるんだ、兄はと思っていると、
「んんんッ。でも小さくて感しょ……ぐはっ」
 相も変わらず失礼な発言をする兄を、容赦なく蹴り上げる愛都であった。

────店内にて。

「二名様でよろしいでしょうか」
 店内に入ると原始人のコスプレをした案内係がニコニコしながら問いかけてくる。
「イエス! おパンティ」
 兄は満面の笑みを浮かべ親指を立てるが、案内係は”え?”というような表情をした。
「おっと、間違えたようだ。イエス、二名で」
(どんな間違いだ、一体)
「に、二名様ですね。かしこまりました」
「もし仮に我々がおパンティ……もとい、三名に見えるなら眼科を紹介するよ」
(おパンティに見えたなら、薬中を疑った方がいい)
「は、はあ」
 兄は白い歯をキラリンと輝かせウインクをしたが、逆に脳のお医者さんを紹介されそうである。
「お席に案内いたします」
 気を取り直し、席に案内してくれたのだが、相変わらずどの席にもクレイジーな料理が並んでいた。
「ご注文、お決まりになりましたらボタンでお呼びくださいね」
 ここの店のチャイムは変わっている。呼びボタンを押すとマンモスと思われる鳴き声がするのだ。
 マンモスには遭遇したことがないので、マンモスかどうかは定かではない。

「まな! 見よ」
 案内係が席から離れるなり、兄は新作メニューに食い入るように見入る。
「プルンプルン桃尻ゼリーが美味しそうだぞ」
 愛都が兄の指さすメニューを覗き込むと、黄桃の周りにピンク色のゼリーがコーティングされており、割れ目の部分に棒状のお菓子が突き刺さっていた。安定のアダルトデコレーション。

 先日、愛都はふと……(株)原始人って一体何の会社なんだろうと思い調べてみた。
 会社のホームページには、
『大人のための空間』
と、デカデカと書かれている。
 恐らく、イメージ的にはクラシック、アンティークなど大人のお洒落さを追求するはずだったのだが、どこをどう間違えたのかアダルト路線に行ってしまったようだ。
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