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6話『その先へ』
6 分岐点【微R】
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****♡side・塩田
『こうなる未来も君にはあったんだよ』
塩田は皇を組み伏せながら、社長呉崎に耳元でそう囁かれているような錯覚に陥った。今ならわかる。何故、呉崎が自分にこんなことを望んだのか。
「塩田……ッ」
人は勝手に他人に恋をする。塩田はそういうものだと思っていた。
例え、彼の気持ちを受け入れることが出来なくても否定するのは違うし、「他にもっといいヤツがいる」と他の人を押し付けるのも間違いだと思っている。それでもやはり、どこか他人事だった。
皇が気にかけてくれることを良しとして、平気で彼に甘えていた自分。そんな自分は全く彼に期待させなかったと言えるのだろうか?
手に入らないからと諦めて、好きでもない男とこんなことをしろと?
──俺にとって修二が大切なように、皇にとっては俺がそういう存在だっただけ。それなのに皇に不幸になる道を選ばせたらダメだ。
彼に望まれるままに口づけて、その身に自分自身を穿つ。満足するまで、何度でも。これが最初で最後なのと理解しているのか、彼の身体は素直に反応し、愛と快楽を求める。
『僕は皇くんが大切だ。だからこそ、投げやりではなくちゃんと納得して選んで欲しい』
やめろというのは簡単だ。しかし引きとめても自分に責任は持てない。なぜなら自分には”唯野修二”という恋人がいるのだから。
──これで本当に皇は自分が幸せになれる道を選択できるのか?
どこにも保証なんかない。
塩田は不安に駆ら、れじっと皇を見つめる。
「うん……?」
”どうしてそんな顔するんだ”というように、彼の手が塩田の頬を撫でた。その手を握り込む塩田。
誰よりも優しいこの男を自分はいたずらに傷つけているだけ。そんなことは分かり切っている。
「いい?」
塩田の言葉に彼が軽く数度頷く。そんな彼にちゅっと口づけ、再び見つめ合う。
「俺が望んだことだ。塩田は悪くない」
確かに何度も確認して事に及んだ。いくら社長からの頼みだからと言って彼の意思を無視して性交に及ぶ気はさらさらない。
「塩田は良かったのか? 初めてだったんだろ」
「ん……」
その初めてが一生初めてである自信ならあった。こんなことを修二にしたいかと言われたらNOと答えるだろう。
『皇くんはネコだからねえ……何の問題もないだろう?』
『ねこ』
塩田は社長、呉崎との会話を思い出す。
呉崎の言葉を復唱する塩田にくすりと笑う彼。無知な自分をバカにしているのかと思ったが、不思議と腹は立たなかった。
『ベッドでの立ち位置の話だよ。君は……未経験者なんだろう?』
呉崎の話の内容からなんとなく何のことなのか理解する。
『それならいい経験になるんじゃないかな』
塩田は何も答えなかった。
──これを”いい経験”と称するあの人の気持ちはわからない。
確かに快感は得られるし、皇の身体はとても良い。そして何故呉崎が皇に執着するのか理解できてしまった。それがどうにも塩田を複雑な心境にさせる。
「皇はどうするんだ?」
情事ののち、シャツに腕を通す皇を塩田はベッドに腰掛けて眺めていた。
「どうするとは?」
”帰るんだろう?”と不思議そうな表情をする彼。
「そういう意味じゃなくて」
「どういう意味だ?」
長袖のシャツの袖を掴み、引き揚げながら隣に腰かける皇に思わず塩田は見惚れてしまう。
「うん?」
「いや」
七分ほどに引き揚げられた袖。手首に腕時計を嵌めるその指先。塩田は彼のベージュに近い金の髪に手を伸ばす。ツルツルとした手触り。
「何してんだ」
「髪質がいいなと思って」
塩田の言葉に、腕時計を嵌め終わった彼が笑顔を向ける。
「現状維持でいいかなと思う。俺はお前の傍にいたいよ、塩田」
切なげで儚い笑顔。
「皇の人生なんだから、思うようにしたらいいと思う」
”俺たちと一緒に暮らす?”と塩田が問うと、彼は驚いた|表情《かお⦆をしたのだった。
『こうなる未来も君にはあったんだよ』
塩田は皇を組み伏せながら、社長呉崎に耳元でそう囁かれているような錯覚に陥った。今ならわかる。何故、呉崎が自分にこんなことを望んだのか。
「塩田……ッ」
人は勝手に他人に恋をする。塩田はそういうものだと思っていた。
例え、彼の気持ちを受け入れることが出来なくても否定するのは違うし、「他にもっといいヤツがいる」と他の人を押し付けるのも間違いだと思っている。それでもやはり、どこか他人事だった。
皇が気にかけてくれることを良しとして、平気で彼に甘えていた自分。そんな自分は全く彼に期待させなかったと言えるのだろうか?
手に入らないからと諦めて、好きでもない男とこんなことをしろと?
──俺にとって修二が大切なように、皇にとっては俺がそういう存在だっただけ。それなのに皇に不幸になる道を選ばせたらダメだ。
彼に望まれるままに口づけて、その身に自分自身を穿つ。満足するまで、何度でも。これが最初で最後なのと理解しているのか、彼の身体は素直に反応し、愛と快楽を求める。
『僕は皇くんが大切だ。だからこそ、投げやりではなくちゃんと納得して選んで欲しい』
やめろというのは簡単だ。しかし引きとめても自分に責任は持てない。なぜなら自分には”唯野修二”という恋人がいるのだから。
──これで本当に皇は自分が幸せになれる道を選択できるのか?
どこにも保証なんかない。
塩田は不安に駆ら、れじっと皇を見つめる。
「うん……?」
”どうしてそんな顔するんだ”というように、彼の手が塩田の頬を撫でた。その手を握り込む塩田。
誰よりも優しいこの男を自分はいたずらに傷つけているだけ。そんなことは分かり切っている。
「いい?」
塩田の言葉に彼が軽く数度頷く。そんな彼にちゅっと口づけ、再び見つめ合う。
「俺が望んだことだ。塩田は悪くない」
確かに何度も確認して事に及んだ。いくら社長からの頼みだからと言って彼の意思を無視して性交に及ぶ気はさらさらない。
「塩田は良かったのか? 初めてだったんだろ」
「ん……」
その初めてが一生初めてである自信ならあった。こんなことを修二にしたいかと言われたらNOと答えるだろう。
『皇くんはネコだからねえ……何の問題もないだろう?』
『ねこ』
塩田は社長、呉崎との会話を思い出す。
呉崎の言葉を復唱する塩田にくすりと笑う彼。無知な自分をバカにしているのかと思ったが、不思議と腹は立たなかった。
『ベッドでの立ち位置の話だよ。君は……未経験者なんだろう?』
呉崎の話の内容からなんとなく何のことなのか理解する。
『それならいい経験になるんじゃないかな』
塩田は何も答えなかった。
──これを”いい経験”と称するあの人の気持ちはわからない。
確かに快感は得られるし、皇の身体はとても良い。そして何故呉崎が皇に執着するのか理解できてしまった。それがどうにも塩田を複雑な心境にさせる。
「皇はどうするんだ?」
情事ののち、シャツに腕を通す皇を塩田はベッドに腰掛けて眺めていた。
「どうするとは?」
”帰るんだろう?”と不思議そうな表情をする彼。
「そういう意味じゃなくて」
「どういう意味だ?」
長袖のシャツの袖を掴み、引き揚げながら隣に腰かける皇に思わず塩田は見惚れてしまう。
「うん?」
「いや」
七分ほどに引き揚げられた袖。手首に腕時計を嵌めるその指先。塩田は彼のベージュに近い金の髪に手を伸ばす。ツルツルとした手触り。
「何してんだ」
「髪質がいいなと思って」
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「現状維持でいいかなと思う。俺はお前の傍にいたいよ、塩田」
切なげで儚い笑顔。
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