21 / 48
3話『皇と修二』
2 真実を知った副社長
しおりを挟む
****♡Side・副社長(皇)
「またパワハラですか?」
夜、待ち合わせの場所に着いた皇は、社長を見るなり開口一番にそう言葉を漏らした。
「なんのことだね、皇くん」
「唯野課長のことです」
我慢には限界というものがある。休日にわざわざ呼びつけ、叱りつけるなど許してはおけなかった。自分は副社長。彼に意見出来る者がいない以上、自分が言うべきではないだろうか。
「まあ、ゆっくり話そうじゃないか」
彼は余裕の笑みを浮かべると、皇を促し店の中へ。社長の行きつけの店で、個室を予約してある。
「で?」
と席に着くと手を拭き両手の指先を合わせ、その指先に顎を乗せる社長。
皇は、その社長の態度を腹ただしく思った。
「真面目に聞いてください。なんの恨みがあって、唯野課長にそんな事ばかりするんです?」
すると彼は、とても意外そうな顔をして、
「恨みなんかないよ」
と、答える。
なんの恨みもないのに嫌がらせばかりするなんてイカレている、と感じた。そんな無意味なことをして、何になると言うのだろうか?
「唯野課長があなたに従うのは、単に社長だから。逆らえないからです。もう、こんなこと辞めて欲しい」
心からの言葉だった。しかし次の返事を聞いて、皇は驚愕する。
「唯野くんは、僕が社長だから逆らわないんじゃない。君を守りたいからだ」
社長は急に真面目な顔をして、じっと皇を見つめた。
「はい?」
言われている意味が分からない。
「君を僕から守りたいから」
───唯野さんがパワハラされているのは、俺のせい?
一体どういうことなのかと、逡巡する。仕事で重大なミスをした覚えはない。庇われるようなことはしていないはずだ。考えても言われている意味が分からない。何か、弱みでも握られていただろうか。
「本当にわからないの?」
と、社長。
分かるはずなどない。思い当たることがないのだから。
「皇くん」
「何でしょうか」
皇は抑揚のない声で返事をする。自分のせいで、尊敬する先輩がパワハラを受けていることが、とてもショックだった。しかも、理由が分からないなんて。唯野に、なんと謝罪すればいいのだろうか。
「僕と、お付き合いをしないかね?」
「は?」
こんな時に、何をフザケタことを言っているのかと思った。
「僕ね、君のことが好きなんだよ。本気で。考えてくれないかな」
「……交換条件でも出したおつもりですか?」
「そうだね。君が考えてくれるなら、唯野くんには今後一切、何もしないと誓うよ」
但し、と彼は続ける。
「彼は、なんと言うだろうね」
と意味深な言葉を付け加えて。
「またパワハラですか?」
夜、待ち合わせの場所に着いた皇は、社長を見るなり開口一番にそう言葉を漏らした。
「なんのことだね、皇くん」
「唯野課長のことです」
我慢には限界というものがある。休日にわざわざ呼びつけ、叱りつけるなど許してはおけなかった。自分は副社長。彼に意見出来る者がいない以上、自分が言うべきではないだろうか。
「まあ、ゆっくり話そうじゃないか」
彼は余裕の笑みを浮かべると、皇を促し店の中へ。社長の行きつけの店で、個室を予約してある。
「で?」
と席に着くと手を拭き両手の指先を合わせ、その指先に顎を乗せる社長。
皇は、その社長の態度を腹ただしく思った。
「真面目に聞いてください。なんの恨みがあって、唯野課長にそんな事ばかりするんです?」
すると彼は、とても意外そうな顔をして、
「恨みなんかないよ」
と、答える。
なんの恨みもないのに嫌がらせばかりするなんてイカレている、と感じた。そんな無意味なことをして、何になると言うのだろうか?
「唯野課長があなたに従うのは、単に社長だから。逆らえないからです。もう、こんなこと辞めて欲しい」
心からの言葉だった。しかし次の返事を聞いて、皇は驚愕する。
「唯野くんは、僕が社長だから逆らわないんじゃない。君を守りたいからだ」
社長は急に真面目な顔をして、じっと皇を見つめた。
「はい?」
言われている意味が分からない。
「君を僕から守りたいから」
───唯野さんがパワハラされているのは、俺のせい?
一体どういうことなのかと、逡巡する。仕事で重大なミスをした覚えはない。庇われるようなことはしていないはずだ。考えても言われている意味が分からない。何か、弱みでも握られていただろうか。
「本当にわからないの?」
と、社長。
分かるはずなどない。思い当たることがないのだから。
「皇くん」
「何でしょうか」
皇は抑揚のない声で返事をする。自分のせいで、尊敬する先輩がパワハラを受けていることが、とてもショックだった。しかも、理由が分からないなんて。唯野に、なんと謝罪すればいいのだろうか。
「僕と、お付き合いをしないかね?」
「は?」
こんな時に、何をフザケタことを言っているのかと思った。
「僕ね、君のことが好きなんだよ。本気で。考えてくれないかな」
「……交換条件でも出したおつもりですか?」
「そうだね。君が考えてくれるなら、唯野くんには今後一切、何もしないと誓うよ」
但し、と彼は続ける。
「彼は、なんと言うだろうね」
と意味深な言葉を付け加えて。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
R18 溺愛カレシと、甘い甘いエッチ♡ オトナの#秒恋 〜貴方と刻む、幸せなミライ〜
ReN
恋愛
♡R18 ラブラブな2人の激甘エッチ短篇集♡
愛溢れる幸せなエッチ短篇集♡
互いを思い合う、2人の気持ちが伝わりますように。
本編 #秒恋(学園ものラブコメ)もよろしくお願いします!
・第1章は、2人の初エッチ♡
前半は、2人で買い物をしたりお料理をしたりする、全年齢OKの甘々エピソード。
後半は、愛し合う2人の、初めてのエッチ♡
優しい言葉をかけられながら、たくさん愛される、R18エピソードです。
・第2章
初エッチから、2週間後の2人。
初めて、舌でイかされちゃったり、愛の証をつけられちゃうお話♡
・第3章
まだまだ初々しい悠里。
でも、だんだん剛士に慣らされて?
無意識に、いやらしく腰を振っちゃう可愛い悠里に、夢中になってしまう剛士のお話♡
・第4章
今回は、攻守交代。
クラスメイトと、彼の悦ばせ方の話をした悠里は、剛士に「教えて?」とおねだり。
剛士に優しく教えられながら、一生懸命に彼を手とお口で愛してあげる……
健気でエッチな悠里、必見♡
・第5章
学校帰り、初めて剛士の家にお呼ばれ♡
剛士の部屋で、剛士のベッドで組み敷かれて……
甘い甘い、制服エッチ♡
・第6章、11/18公開!
いわゆる、彼シャツなお話♡
自分の服を着た悠里に欲情しちゃう剛士をお楽しみください♡
★こちらは、 #秒恋シリーズの、少し未来のお話。
さまざまな試練を乗り越え、恋人になった後の甘々ストーリーになります♡
本編では、まだまだ恋人への道のりは遠い2人。
ただいま恋の障害を執筆中で、折れそうになる作者の心を奮い立たせるために書いた、エッチな番外編です(笑)
なので、更新は不定期です(笑)
お気に入りに登録していただきましたら、更新情報が通知されますので、ぜひ!
2人のなれそめに、ご興味を持ってくださったら、
本編#秒恋シリーズもよろしくお願いします!
#秒恋 タグで検索♡
★1
『私の恋はドキドキと、貴方への恋を刻む』
ストーカーに襲われた女子高の生徒を救う男子高のバスケ部イケメンの話
★2
『2人の日常を積み重ねて。恋のトラウマ、一緒に乗り越えましょう』
剛士と元彼女とのトラウマの話
★3
『友だち以上恋人未満の貴方に甘い甘いサプライズを』
2/14バレンタインデーは、剛士の誕生日だった!
親友たちとともに仕掛ける、甘い甘いバースデーサプライズの話
★4
『恋の試練は元カノじゃなく、元カノの親友だった件』
恋人秒読みと思われた悠里と剛士の間に立ち塞がる、元カノの親友という試練のお話
2人の心が試される、辛くて長い試練の始まりです…
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる