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1話『出会い』
4 後悔はすぐそこに
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****♡Side・課長(修二)
『なあ、修二。これさ……』
料理は苦手、さっぱりした物しか食べない彼。修二は料理が得意だったから、彼の家に行ったときはいつも料理を担当していた。結婚したらこんな毎日なのだろうか、などと思いながら。
『また作って』
『分かった』
好きなモノがあると素直にまた食べたいといってくれる彼。
そんな小さなことがとても嬉しかった事を覚えている。初めて名前を呼んでくれた時も、
『なあ、プライベートでは課長はイヤだな』
と言ったら、
『ん。じゃあ、修二って呼ぶ』
と彼は笑ったのだ。
───笑うと凄く可愛いんだ。
てっきり苗字で呼ばれると思っていた修二は、驚く。
と、同時にとても嬉しかった。まさか、下の名前を覚えてくれているとは思わなかったから。
彼に逢いたいと思った。修二は時計を見上げる。時刻は二十三時半を回っていた。今から電車で逢いに行けば、午前をゆうに回るだろう。
───寝ているかもしれない。
今すぐ抱きしめたいのに。
しかし先ほどのことを思い出すと、心が曇る。悪いのは自分で、謝ることも出来なかった。望みすら、叶えることが出来なくて。どうして自分は塩田にだけ、こうなのだろうかと悲しくなる。
修二はどうしても彼に逢いたかった。上着を掴むとそっと家を出る。
月の綺麗な夜だ。明日は土曜で会社は休みだが、皇は明日、出社だと言っていた。まさかそんな日に、彼の元に行ったりはしないだろう。
自分が彼の家を出たのも、そこそこ良い時間であった。会社までは近いが、皇の家から塩田の家までは車で三十はかかる。修二は駅に着くと、定期を差し込む。歓迎されないかも知れないと思いながら。
そして後悔するとも知らずに。
塩田のマンションに着いた時、時刻は午前をゆうに回っていた。上階を見上げ、彼の部屋に明かりがついていることに気づく。嫌な予感しかしなかった。
ボタンを押し自動ドアが開くと、エントランスを抜けエレベーターに乗り込む。エレベーターの箱の中で、彼との電話のやり取りを思い出した。
既に電車に乗り込んでいた修二。
『どうした?』
あんなやり取りがあった直後だ。
別れようと言われるのかと覚悟を決めて電話口に出たのだ。
極めて冷静に。
『なあ、抱いてよ』
その言葉に修二は、息を呑んだ。
もしかしたらまだ、希望が持てるのかもしれないと。
『今、電車なんだ』
”次の駅で降りて、そっちに行くから待って欲しい”と言おうとした時だった。
『じゃあ、いい』
彼はそう言って通話を切ったのだ。
───どうして、すぐ折り返さなかったのだろうか。
バカな自分に嫌気が差す。
塩田の部屋の前に着くと深呼吸する。どうか自分の嫌な予感が、当たらないことを願って。
「神様、いるのなら……どうかもう一度だけ、俺にチャンスをくれよ」
チャイムを押す、指先が震える。
───塩田、俺……。
『なあ、修二。これさ……』
料理は苦手、さっぱりした物しか食べない彼。修二は料理が得意だったから、彼の家に行ったときはいつも料理を担当していた。結婚したらこんな毎日なのだろうか、などと思いながら。
『また作って』
『分かった』
好きなモノがあると素直にまた食べたいといってくれる彼。
そんな小さなことがとても嬉しかった事を覚えている。初めて名前を呼んでくれた時も、
『なあ、プライベートでは課長はイヤだな』
と言ったら、
『ん。じゃあ、修二って呼ぶ』
と彼は笑ったのだ。
───笑うと凄く可愛いんだ。
てっきり苗字で呼ばれると思っていた修二は、驚く。
と、同時にとても嬉しかった。まさか、下の名前を覚えてくれているとは思わなかったから。
彼に逢いたいと思った。修二は時計を見上げる。時刻は二十三時半を回っていた。今から電車で逢いに行けば、午前をゆうに回るだろう。
───寝ているかもしれない。
今すぐ抱きしめたいのに。
しかし先ほどのことを思い出すと、心が曇る。悪いのは自分で、謝ることも出来なかった。望みすら、叶えることが出来なくて。どうして自分は塩田にだけ、こうなのだろうかと悲しくなる。
修二はどうしても彼に逢いたかった。上着を掴むとそっと家を出る。
月の綺麗な夜だ。明日は土曜で会社は休みだが、皇は明日、出社だと言っていた。まさかそんな日に、彼の元に行ったりはしないだろう。
自分が彼の家を出たのも、そこそこ良い時間であった。会社までは近いが、皇の家から塩田の家までは車で三十はかかる。修二は駅に着くと、定期を差し込む。歓迎されないかも知れないと思いながら。
そして後悔するとも知らずに。
塩田のマンションに着いた時、時刻は午前をゆうに回っていた。上階を見上げ、彼の部屋に明かりがついていることに気づく。嫌な予感しかしなかった。
ボタンを押し自動ドアが開くと、エントランスを抜けエレベーターに乗り込む。エレベーターの箱の中で、彼との電話のやり取りを思い出した。
既に電車に乗り込んでいた修二。
『どうした?』
あんなやり取りがあった直後だ。
別れようと言われるのかと覚悟を決めて電話口に出たのだ。
極めて冷静に。
『なあ、抱いてよ』
その言葉に修二は、息を呑んだ。
もしかしたらまだ、希望が持てるのかもしれないと。
『今、電車なんだ』
”次の駅で降りて、そっちに行くから待って欲しい”と言おうとした時だった。
『じゃあ、いい』
彼はそう言って通話を切ったのだ。
───どうして、すぐ折り返さなかったのだろうか。
バカな自分に嫌気が差す。
塩田の部屋の前に着くと深呼吸する。どうか自分の嫌な予感が、当たらないことを願って。
「神様、いるのなら……どうかもう一度だけ、俺にチャンスをくれよ」
チャイムを押す、指先が震える。
───塩田、俺……。
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