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8『二人で歩む幸せの道』
4【R】言葉にして欲しい
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****side■板井
唯野が最奥の蕾に板井自身を深く受け入れるのを、板井はじっと見つめていた。大きく開かれた股に両手を添え。
繋がるたびに幸せを感じる。当たり前なんて何処にもないのだ。奇跡のようなチャンスを手にして、今ここで愛しい人と繋がっている。
「板井」
不安そうに両腕を伸ばす彼に覆いかぶされば、その腕は首に回り、交わる体温に彼が安堵のため息をつく。密着するのが好きなことを知った。
──上司だし、年上だから大人だし、いつも穏やかだけれど。
本当は甘えたいんだろうな。
会社に入れば先輩や上司がいて、性格にもよるだろうが多かれ少なかれ、甘える機会もあるだろう。もちろんそれは、子が親に甘えるような”甘え”ではなく、”頼る”という形の甘え。唯野はきっと、それを経験することのできない環境にいたのだろう。
同期で現在の総括こと、黒岩とは入社してすぐに営業成績の上位を争うような関係となる。先輩からいじめにあったという話は聞いたことがないが、出来た後輩が先輩に可愛がられるということはなかったと思う。
──せめて商品部の部長のような人が上司だったなら、違ったのかもしれない。
だが営業部の部長はどちらかというと、フレンドリーという感じではないらしい。花形の営業部だけあって、見た目は整った人という感じではあったが。
「ここ、良い?」
ゆっくりと腰を進めては引く板井。すっかり後ろでの良さを覚えてしまった彼は、コクコクと頷く。もっとしてというように、ぎゅっと抱き着かれ、愛しさが増す。
仕事では饒舌な彼は、二人きりになると物静か。初めはこちらがあまり喋らないせいかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
──おおかた、下手なことを言って嫌われるのが怖いとか、そんなことを考えているのだろうけれど。
何を言おうと嫌ったりなんてしないのに、彼は不安で仕方がないようだ。どんなに言葉で伝えても、その不安を拭うのは難しい。しかしその気持ちは理解できる。
──嫌われたくないくらい好きってことなんだろうか?
板井は思わず口元を抑えた。嬉しくてにやけてしまいそうだ。
「板井?」
「大好きですよ」
怪訝な表情をしていた彼が、照れたように笑う。
「俺も好き」
好きな人の笑顔はいつでも心を温かくする。いつまでも傍で笑っていて欲しい。
──いつか塩田と電車のように、なんでも言い合える仲になれたらいい。
再び腰を進めれば、彼は快感に仰け反る。
「んんッ……」
「いくらでもしてあげる。満足するまで」
身体の相性は凄く良いと思う。付き合い始めてそんなに経っていないのに、何度も互いの熱を求め、抱き合った。
唯野は、
『俺、そんなに性欲強くなかったのに』
と困った顔をしていたほど。
──もっと愛して愛されたい。
首筋を強く吸い上げると、
「痕ついちゃうよ」
と彼が眉を寄せる。
ダメとは言わないのが彼らしいと思った。
「俺のものの証をつけたい」
と言えば、
「板井は独占欲が強いんだな」
とクスリと笑う。
「ダメですか?」
ずるいのは分かっている。彼はダメなんて言わないことも。それでも問いたいのは、彼があまり気持ちを言葉にしてくれないから。聞きたいのだ、あえて言葉にして。
そんな板井の気持ちに気づいたのか唯野は、
「ダメなんて言わないこと、知ってるくせに」
と板井の瞳を覗き込む。
「知ってても、聞きたいんです」
すると彼は、
「馬鹿だなあ」
と微笑んで瞳を閉じた。
唯野が最奥の蕾に板井自身を深く受け入れるのを、板井はじっと見つめていた。大きく開かれた股に両手を添え。
繋がるたびに幸せを感じる。当たり前なんて何処にもないのだ。奇跡のようなチャンスを手にして、今ここで愛しい人と繋がっている。
「板井」
不安そうに両腕を伸ばす彼に覆いかぶされば、その腕は首に回り、交わる体温に彼が安堵のため息をつく。密着するのが好きなことを知った。
──上司だし、年上だから大人だし、いつも穏やかだけれど。
本当は甘えたいんだろうな。
会社に入れば先輩や上司がいて、性格にもよるだろうが多かれ少なかれ、甘える機会もあるだろう。もちろんそれは、子が親に甘えるような”甘え”ではなく、”頼る”という形の甘え。唯野はきっと、それを経験することのできない環境にいたのだろう。
同期で現在の総括こと、黒岩とは入社してすぐに営業成績の上位を争うような関係となる。先輩からいじめにあったという話は聞いたことがないが、出来た後輩が先輩に可愛がられるということはなかったと思う。
──せめて商品部の部長のような人が上司だったなら、違ったのかもしれない。
だが営業部の部長はどちらかというと、フレンドリーという感じではないらしい。花形の営業部だけあって、見た目は整った人という感じではあったが。
「ここ、良い?」
ゆっくりと腰を進めては引く板井。すっかり後ろでの良さを覚えてしまった彼は、コクコクと頷く。もっとしてというように、ぎゅっと抱き着かれ、愛しさが増す。
仕事では饒舌な彼は、二人きりになると物静か。初めはこちらがあまり喋らないせいかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
──おおかた、下手なことを言って嫌われるのが怖いとか、そんなことを考えているのだろうけれど。
何を言おうと嫌ったりなんてしないのに、彼は不安で仕方がないようだ。どんなに言葉で伝えても、その不安を拭うのは難しい。しかしその気持ちは理解できる。
──嫌われたくないくらい好きってことなんだろうか?
板井は思わず口元を抑えた。嬉しくてにやけてしまいそうだ。
「板井?」
「大好きですよ」
怪訝な表情をしていた彼が、照れたように笑う。
「俺も好き」
好きな人の笑顔はいつでも心を温かくする。いつまでも傍で笑っていて欲しい。
──いつか塩田と電車のように、なんでも言い合える仲になれたらいい。
再び腰を進めれば、彼は快感に仰け反る。
「んんッ……」
「いくらでもしてあげる。満足するまで」
身体の相性は凄く良いと思う。付き合い始めてそんなに経っていないのに、何度も互いの熱を求め、抱き合った。
唯野は、
『俺、そんなに性欲強くなかったのに』
と困った顔をしていたほど。
──もっと愛して愛されたい。
首筋を強く吸い上げると、
「痕ついちゃうよ」
と彼が眉を寄せる。
ダメとは言わないのが彼らしいと思った。
「俺のものの証をつけたい」
と言えば、
「板井は独占欲が強いんだな」
とクスリと笑う。
「ダメですか?」
ずるいのは分かっている。彼はダメなんて言わないことも。それでも問いたいのは、彼があまり気持ちを言葉にしてくれないから。聞きたいのだ、あえて言葉にして。
そんな板井の気持ちに気づいたのか唯野は、
「ダメなんて言わないこと、知ってるくせに」
と板井の瞳を覗き込む。
「知ってても、聞きたいんです」
すると彼は、
「馬鹿だなあ」
と微笑んで瞳を閉じた。
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