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16話『独立国でのαの実態』
2 レンの理想の世界
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****♡Side・Ω(レン)
レンは用件だけクライスに話すと何食わぬ顔で席に戻り、苺に手を伸ばす。すると、執事が傍まで歩いてきた。
「レン様」
それは二人だけの秘密の合図。
「もしもの時は、クライスを守って欲しい」
彼が王宮に居た頃は、カイルの側近だったらしい。
カイルが誰よりも信頼している者だ。彼の忠誠は伊達ではない。カイルがレンを大切に思うからこそ、彼もレンを大切にしてくれる。
それはカイルが大事に思っているクライスも同様。
彼にとって、カイルに尽くすとはそう言う事なのだ。
「かしこまりました」
レンに礼をすると彼は綺麗な姿勢を保ったまま、またドアの前へ。
レンは背もたれに頭をつけると両手を握りこみ、頭の後ろへ。
行儀が悪いからそのカッコは辞めるようにとカイルにいつも怒られるのだが、考えるときの癖でどうにも抜けない。
レンにはとても気にあることがあった。
先ほどクライスから聞いた矛盾のことである。
───普通に考えたら証言が一つだけ違ったら、それを疑うものだけれど。
もしかしたら、その証言が嘘かも知れないんだよな。
見つかった手記はどう考えても捕まる前に書かれたものだ。
本当は助けなど求めていなかったとしたら。
自分には救えないと言った彼は、”救いを求められた”とはいっては居ない。クライスを絶望させる為の嘘という事もあり得る。
クライスへの性的暴行は幸いにも未遂に終わったが、もし手遅れだったなら、そこで初めて意味を成す。
きっとカイルに嫌われてしまうとクライスは思うはずだ。
その時クライスが助けをこう相手はカイルではなく、アイツらなのだ。
───そんなこと、させるものか。
αの統治国家ではΩがどんな目に合っていても、誰も助けてはくれない。
同じようにこの国ではαがどんな非人道的なことをされていても、みんな見て見ぬふり。
因果応報、自業自得。目には目を歯には歯を。
いろんな言葉を並べることが出来る。
しかし本当にそれでいいのだろうか、とレンは考える。
自分と同じ性別の者がαの統治国家で酷い目に合わされている、今この瞬間も。この国にやってくるαは確かに、自分の仲間を救ってはくれない。
やり返したからといって救われるものでもない。それだけが事実だ。
───こんなこと、互いにやっていても誰も救われはしない。
βとαはいつまでたっても、分かり合えることなどない。
ならばΩである自分が変えなければいけないのだ。
カイル、クライス、そしてΩの自分。自分たちは、Ω、β、αという性別を超えて仲良くなることが出来た。互いを大切に思い、守ろうとしている。
この出会いは運命なのだ。こんな混沌とした時代を終わらせるための。
───Ω、β、α。
ちゃんと分かり合える。
共存することが出来るんだ。
それが伝えられるのは、僕たちしかいない。
僕らが今、本気で動かなければ世界は変わらない。
レンはじっと料理を見つめながら、そんなことを考えていたのだった。
レンは用件だけクライスに話すと何食わぬ顔で席に戻り、苺に手を伸ばす。すると、執事が傍まで歩いてきた。
「レン様」
それは二人だけの秘密の合図。
「もしもの時は、クライスを守って欲しい」
彼が王宮に居た頃は、カイルの側近だったらしい。
カイルが誰よりも信頼している者だ。彼の忠誠は伊達ではない。カイルがレンを大切に思うからこそ、彼もレンを大切にしてくれる。
それはカイルが大事に思っているクライスも同様。
彼にとって、カイルに尽くすとはそう言う事なのだ。
「かしこまりました」
レンに礼をすると彼は綺麗な姿勢を保ったまま、またドアの前へ。
レンは背もたれに頭をつけると両手を握りこみ、頭の後ろへ。
行儀が悪いからそのカッコは辞めるようにとカイルにいつも怒られるのだが、考えるときの癖でどうにも抜けない。
レンにはとても気にあることがあった。
先ほどクライスから聞いた矛盾のことである。
───普通に考えたら証言が一つだけ違ったら、それを疑うものだけれど。
もしかしたら、その証言が嘘かも知れないんだよな。
見つかった手記はどう考えても捕まる前に書かれたものだ。
本当は助けなど求めていなかったとしたら。
自分には救えないと言った彼は、”救いを求められた”とはいっては居ない。クライスを絶望させる為の嘘という事もあり得る。
クライスへの性的暴行は幸いにも未遂に終わったが、もし手遅れだったなら、そこで初めて意味を成す。
きっとカイルに嫌われてしまうとクライスは思うはずだ。
その時クライスが助けをこう相手はカイルではなく、アイツらなのだ。
───そんなこと、させるものか。
αの統治国家ではΩがどんな目に合っていても、誰も助けてはくれない。
同じようにこの国ではαがどんな非人道的なことをされていても、みんな見て見ぬふり。
因果応報、自業自得。目には目を歯には歯を。
いろんな言葉を並べることが出来る。
しかし本当にそれでいいのだろうか、とレンは考える。
自分と同じ性別の者がαの統治国家で酷い目に合わされている、今この瞬間も。この国にやってくるαは確かに、自分の仲間を救ってはくれない。
やり返したからといって救われるものでもない。それだけが事実だ。
───こんなこと、互いにやっていても誰も救われはしない。
βとαはいつまでたっても、分かり合えることなどない。
ならばΩである自分が変えなければいけないのだ。
カイル、クライス、そしてΩの自分。自分たちは、Ω、β、αという性別を超えて仲良くなることが出来た。互いを大切に思い、守ろうとしている。
この出会いは運命なのだ。こんな混沌とした時代を終わらせるための。
───Ω、β、α。
ちゃんと分かり合える。
共存することが出来るんだ。
それが伝えられるのは、僕たちしかいない。
僕らが今、本気で動かなければ世界は変わらない。
レンはじっと料理を見つめながら、そんなことを考えていたのだった。
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