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9話『事件を追う者ども』
1 事件は暗礁に乗り上げて
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****♡Side・β(カイル)
「俺は断然スープカレーだな。具が無ければなお良い」
「そうれじゃあ、カイルは何食べてるか分からないじゃない。クライスは何カレーが好きなの?」
クライスがカイルの屋敷に滞在をはじめ一週間ほど経った頃、朝食の席では三人がいつも通り楽しく会話をしながら食事を取っていた。
「俺は、カツカレーが好きかな」
「えー。それもカレーには具が入ってないじゃない」
聞いておいて、不満そうな顔をするレン。ぷくっと頬を膨らませ、二人に恨みがましい視線を送るが相変わらず可愛らしい。
「そしてその肉は、筋肉になるんでしょ」
きいいいっとハンカチを噛みしめるフリをする彼の髪に、カイルはそっと触れる。クライスは恨みを向けられ、肩を竦めた。
以前は言葉さえ発しなかったレンは今や、ムードメーカー。カイルは、愛しい恋人の変化を嬉しく思っている。夜の営みの回数も増え、心が満たされ始めていた。
「ねえ、カイルも悔しくないの?」
「そんなこと言われたって」
カイルに同調を求めるレンに慌てる、クライス。クライスはレンが選んでくれた服をとても気に入ったようで着こなしも上手く、とてもお洒落に見えた。
特に体のラインが浮き彫りになるシャツは、彼の綺麗な体のラインにうっとりするほどである。
───以前だったら、αに興味なんかなかったけど。
自分の中で、日に日に特別感の増すα、クライス。
今までなら、αと言うだけで顔すら見なかったが、彼は見れば見るほど”いい男”というやつに感じた。
”二人とも邪道なモノばっかり”とレンがプンスカしながら、ローストビーフを頬張っていると、
「カイル様、来客です」
と、面通りを求める声が入口からかけられた。
「どちらさま?」
来客のほとんどはβであるため普段なら警戒することはないのだが、あの事件のあった後である。警戒してしまっても不思議はないだろう。
「担当の刑事さんです」
執事の返答に、
「お通して」
とカイルは極めて冷静に返答した。
「やあ、どうもお揃いで」
担当の刑事は執事のすぐ後ろにいたらしく、彼がすっと横にズレると、帽子をとって軽く会釈しながら中に入ってくる。テーブルの上には色とりどりの料理や果物。三人とも色の好みが違うので、致し方ない。
自分たちにとっては日常だが、彼は驚いたようで、
「ゴージャスですな」
と、思わず呟いたようだ。
「一緒にどうです?」
とカイルが食事に誘えばクライスが横にずれ、彼の為に隣を空ける。
「いいんですかい? では、お言葉に甘えて」
刑事は執事からおしぼりを受け取ると、念入りに手を拭きとった。
職業柄、何かに触れるときは手袋をつけるが、手袋は意外と菌が多い。テーブルの上には、手づかみで食べるような料理も置かれているため、そこを気にしたようだ。
「何か、判ったのですか?」
とクライス。
「いや、それが……事件が暗礁に乗り上げそうなんですわ。それで、皆さんに話を伺おうと、こちらを訪ねた次第で」
クライスが事件の調査中カイルの屋敷に滞在するという話は、すでにこの刑事の耳にも入れていた。
刑事は”いただきます”と手を合わせると、料理に手を伸ばす。執事は彼の前に飲み物を置くと、部屋から出て行く。
「防犯カメラから、犯人が特定できなかったということですか?」
カイルは具のないスープを一口含むと、刑事にそう問いかけたのだった。
「俺は断然スープカレーだな。具が無ければなお良い」
「そうれじゃあ、カイルは何食べてるか分からないじゃない。クライスは何カレーが好きなの?」
クライスがカイルの屋敷に滞在をはじめ一週間ほど経った頃、朝食の席では三人がいつも通り楽しく会話をしながら食事を取っていた。
「俺は、カツカレーが好きかな」
「えー。それもカレーには具が入ってないじゃない」
聞いておいて、不満そうな顔をするレン。ぷくっと頬を膨らませ、二人に恨みがましい視線を送るが相変わらず可愛らしい。
「そしてその肉は、筋肉になるんでしょ」
きいいいっとハンカチを噛みしめるフリをする彼の髪に、カイルはそっと触れる。クライスは恨みを向けられ、肩を竦めた。
以前は言葉さえ発しなかったレンは今や、ムードメーカー。カイルは、愛しい恋人の変化を嬉しく思っている。夜の営みの回数も増え、心が満たされ始めていた。
「ねえ、カイルも悔しくないの?」
「そんなこと言われたって」
カイルに同調を求めるレンに慌てる、クライス。クライスはレンが選んでくれた服をとても気に入ったようで着こなしも上手く、とてもお洒落に見えた。
特に体のラインが浮き彫りになるシャツは、彼の綺麗な体のラインにうっとりするほどである。
───以前だったら、αに興味なんかなかったけど。
自分の中で、日に日に特別感の増すα、クライス。
今までなら、αと言うだけで顔すら見なかったが、彼は見れば見るほど”いい男”というやつに感じた。
”二人とも邪道なモノばっかり”とレンがプンスカしながら、ローストビーフを頬張っていると、
「カイル様、来客です」
と、面通りを求める声が入口からかけられた。
「どちらさま?」
来客のほとんどはβであるため普段なら警戒することはないのだが、あの事件のあった後である。警戒してしまっても不思議はないだろう。
「担当の刑事さんです」
執事の返答に、
「お通して」
とカイルは極めて冷静に返答した。
「やあ、どうもお揃いで」
担当の刑事は執事のすぐ後ろにいたらしく、彼がすっと横にズレると、帽子をとって軽く会釈しながら中に入ってくる。テーブルの上には色とりどりの料理や果物。三人とも色の好みが違うので、致し方ない。
自分たちにとっては日常だが、彼は驚いたようで、
「ゴージャスですな」
と、思わず呟いたようだ。
「一緒にどうです?」
とカイルが食事に誘えばクライスが横にずれ、彼の為に隣を空ける。
「いいんですかい? では、お言葉に甘えて」
刑事は執事からおしぼりを受け取ると、念入りに手を拭きとった。
職業柄、何かに触れるときは手袋をつけるが、手袋は意外と菌が多い。テーブルの上には、手づかみで食べるような料理も置かれているため、そこを気にしたようだ。
「何か、判ったのですか?」
とクライス。
「いや、それが……事件が暗礁に乗り上げそうなんですわ。それで、皆さんに話を伺おうと、こちらを訪ねた次第で」
クライスが事件の調査中カイルの屋敷に滞在するという話は、すでにこの刑事の耳にも入れていた。
刑事は”いただきます”と手を合わせると、料理に手を伸ばす。執事は彼の前に飲み物を置くと、部屋から出て行く。
「防犯カメラから、犯人が特定できなかったということですか?」
カイルは具のないスープを一口含むと、刑事にそう問いかけたのだった。
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