32 / 145
5話『動き出す、運命の輪』
1 レンの行きたいところ
しおりを挟む
****♡Side・Ω(レン)
いつだってカイルは、遠慮しなくて良いと言ってくれるけれど。Ω性の者を連れて外出することがどれだけ気を張らなきゃいけないことなのか、レンには分かっていた。
買いものならインターネットがあるし、外に出られなくても窓から外を眺めればいい。家に居ることが一番安全で、迷惑をかけないのだ。
────カイルはこんな僕でも、対等に扱ってくれる。
確かにβたちは、Ωを虐げたりはしない。だが、レンにとってカイルは、特別だった。何処に行くにも誘ってくれるし、いつだってレンを優先してくれる。そこまでしてくれる人の時間を、これ以上奪いたくはない。
────でも今回は、どうしても行きたいところがあるんだ。確かにネットでも買えないことはないけれど、なんだか怪しいし。
「レン」
何か言いかけた彼の言葉を遮り、
「だって、カイルには自由がないでしょ?」
と問う。
仕事で外出する以外はずっと傍にいて、相手をしようとするカイル。レンが退屈しないように、気にかけてくれるのは嬉しい。しかしそれが負担になってしまっているように感じ、不安になる。
「そんなことない。行きたいところがあればレンに、付き合ってもらっているじゃないか」
彼はそう反論するが、その行き先のチョイスだって、レン優先だ。レンが困った顔をしていると、
「俺は行きたいところにレンをつき合わせている。だから、レンの行きたいところに俺をつき合わせてよ」
”それなら対等で、平等でしょ?”と彼は言うが。
────僕優先で行き先を決めている時点で、平等には感じないのだけれど。
納得のいかないレンであったが、ふと、もし自分がちゃんと行きたいところを告げることができたなら。彼も自分の行きたいところを、主張し易くなるのではないかと思いなおす。
それに今回行きたいところは、率直に告げれば反対されそうである。そう考えれば好都合だ。
「カイルは優しすぎる」
レンがそう言ってニコッと微笑むと、彼は照れたように笑う。
「じゃあ、今回は甘えるね、行きたいところあるから」
「いつも甘えてよ」
と、彼。
「そんなこと言っていると、後悔すると思うけど」
レンの言葉に彼は”どういう意味?”と不思議そうな顔。しかし現地に着き、彼が悲鳴を上げることは間違いない。
「えええええええ!ちょっま……」
「何処でもいいって言ったし、ほら見て」
「いや、目のやり場に困るんだけど」
レンとカイルの目の前には、肌色が占める垂れ幕。
「十八歳になったら入るべしって書いてあるよ」
と、垂れ幕を指さしレンが言うと、
「いや、そんなことは何処にも書いてない。十八歳以下は禁止って書いてある」
「つまり、十八歳になったら来いって意味でしょ?」
二人はレンタル屋の大人のコーナー入口に居たのである。
いつだってカイルは、遠慮しなくて良いと言ってくれるけれど。Ω性の者を連れて外出することがどれだけ気を張らなきゃいけないことなのか、レンには分かっていた。
買いものならインターネットがあるし、外に出られなくても窓から外を眺めればいい。家に居ることが一番安全で、迷惑をかけないのだ。
────カイルはこんな僕でも、対等に扱ってくれる。
確かにβたちは、Ωを虐げたりはしない。だが、レンにとってカイルは、特別だった。何処に行くにも誘ってくれるし、いつだってレンを優先してくれる。そこまでしてくれる人の時間を、これ以上奪いたくはない。
────でも今回は、どうしても行きたいところがあるんだ。確かにネットでも買えないことはないけれど、なんだか怪しいし。
「レン」
何か言いかけた彼の言葉を遮り、
「だって、カイルには自由がないでしょ?」
と問う。
仕事で外出する以外はずっと傍にいて、相手をしようとするカイル。レンが退屈しないように、気にかけてくれるのは嬉しい。しかしそれが負担になってしまっているように感じ、不安になる。
「そんなことない。行きたいところがあればレンに、付き合ってもらっているじゃないか」
彼はそう反論するが、その行き先のチョイスだって、レン優先だ。レンが困った顔をしていると、
「俺は行きたいところにレンをつき合わせている。だから、レンの行きたいところに俺をつき合わせてよ」
”それなら対等で、平等でしょ?”と彼は言うが。
────僕優先で行き先を決めている時点で、平等には感じないのだけれど。
納得のいかないレンであったが、ふと、もし自分がちゃんと行きたいところを告げることができたなら。彼も自分の行きたいところを、主張し易くなるのではないかと思いなおす。
それに今回行きたいところは、率直に告げれば反対されそうである。そう考えれば好都合だ。
「カイルは優しすぎる」
レンがそう言ってニコッと微笑むと、彼は照れたように笑う。
「じゃあ、今回は甘えるね、行きたいところあるから」
「いつも甘えてよ」
と、彼。
「そんなこと言っていると、後悔すると思うけど」
レンの言葉に彼は”どういう意味?”と不思議そうな顔。しかし現地に着き、彼が悲鳴を上げることは間違いない。
「えええええええ!ちょっま……」
「何処でもいいって言ったし、ほら見て」
「いや、目のやり場に困るんだけど」
レンとカイルの目の前には、肌色が占める垂れ幕。
「十八歳になったら入るべしって書いてあるよ」
と、垂れ幕を指さしレンが言うと、
「いや、そんなことは何処にも書いてない。十八歳以下は禁止って書いてある」
「つまり、十八歳になったら来いって意味でしょ?」
二人はレンタル屋の大人のコーナー入口に居たのである。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる