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────変わりゆく僕らの日常▼前編▼
■9「願う、進展」
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****♡side・葵
「あーんッ」
葵は、恋人みたいだなぁと思いながら、カウンター席で咲夜とイチャイチャしていた。彼は優しい。彼自身は甘いものはそんなに好きではないのに、葵が食べたいと言うから付き合ってくれるのだ。
『ねぇ?恋人になってよ』
そんなことを思わず言ってしまいそうになる。
───初めての相手は絶対、霧島がいいなぁ。男同士ってどうやってエッチするんだろう?
咲夜に卑猥なことばかり言うクセに、葵は無知だった。数年後にはヤりまくっているなんて、この時の葵には想像もしていないことである。ましてや、3pにハマってしまうなんてこと。さっきからチラチラこちらを見ている、お姉さま方の視線が煩い。きっと目当ては咲夜なんだ、と葵は嫌な気分になる。
───そういえば、去年の学園祭でも色んな人に声かけられていたなぁ。こんな美人じゃ仕方ないよね。
170ちょいでは高い方とは言えないだろうが、成長途中の中学生女子からしたら十分なのかも知れない。
───早く霧島のものになってしまいたい。彼を俺だけのものにしてしまいたい。
「この後、どこ行く?」
優しい微笑みと共に、咲夜の指先が葵の頬に触れた。
「確か地下にシアターあったよね」
「何観る?」
葵はSNSで話題になっていた、男の子同士の純愛物のことを思い出す。同性婚が深く浸透した昨今、同性同士の恋愛物語が人気を博している。それは、異性同士の恋愛に、純愛を感じなくなったことが原因の一つでもあった。当たり前のことではあるが、同性婚が可能になろうとも、性犯罪が減るわけではない。所詮、男が女に向ける愛は、イコール性欲に対する言い訳に過ぎない。そう考える女性たちから、絶大な支持を受けるのが“同性同士の純愛物語”なのだ。市場の経済を動かすのは、いつの世も女性だと言わざるを得ない。女性は男性と違って好きになると、関連物全般に手をつける傾向があるからだ。しかもそれは刹那的ではない。
「これがいいなぁ!」
「あ、これ良いってクラスの人たちも言ってたね」
二人はスマホで検索した上映時間の表を、覗き込む。葵にはこの時、ある思惑があった。この映画を咲夜に見せ、自分のことを意識して貰おうとしていたのである。
───上手くいけば、キスくらいいけるかなあ?
葵はそんなことを思う。咲夜が自分に恋愛感情をいだいていなかったとしても、自分が一番有利な位置にいることは、一目瞭然だったからである。
**
「片倉、大丈夫?」
思った以上に映画に感動してしまって、シアターから出た葵は号泣してしまった。よくあるストーリーなのだが、感情移入し過ぎた。
ある学校を舞台にしたストーリーで、仲の良い二人の恋物語。一人は恋愛感情を自覚していて、もう一人は無自覚。自覚をしている方は、何年もずっと相手のことを好きなのだが、両親に無理矢理上司の娘と、婚約させられてしまう。そこでやっと、もう一人の方が自分の気持ちに気づく、と言うもの。大学を卒業と同時に婚姻をすることになり、結婚式の前日初めてお互いの気持ちを吐露し合う。最終的には二人は、全てを捨てて遠い地でひっそりと暮らすのだ。それから何十年も経って、婚約者のいた方の子が病気で亡くなり、残された方が彼の両親に会いに行き和解する。そして主人公は愛しい彼との思い出と共に彼らと暮らしていくというストーリー。
「やっぱり、公認がいいよね」
と葵がいうと、
「そうだね」
と同意してくれる。葵は咲夜にむぎゅっと抱きつく。彼はその背中を撫でてくれていた。
「霧島は、あんな風になったらどうする?諦める?」
「俺もやっぱり、好きな人と一緒に逃げると思う」
───非現実的でもやっぱり、好きな人とずっと一緒にいたいなぁ。
「そろそろライブハウスに向かおう?」
「うんッ」
───もし、霧島と一緒に居られるのなら、どんな犠牲を払ってもいい。彼とつき合いたい、恋人になりたい。
葵は一層強く思う。手を繋いで歩きながら、彼の横顔を見上げると、
「どうしたの?」
と、問われる。
「霧島が好きだなぁって思って」
「ッ」
珍しく咲夜が紅くなった。いつもならスルーなのに。
「ありがと」
そうこうしている間にライブハウスに到着する。しかしライブの間中、葵は別のことばかり考えていた。どんなに好きだと言っても進展しない。さて、どうしたものか。
───霧島だって満更じゃない気がするんだけどなぁ。抱きついても、手を繋いでも嫌がらないし。それが妹さんへの延長な気がするのが、ネックなんだよね。ゴールデンウィーク明けには交流会がある。一緒の部屋に二人きり。勝負するなら交流会かなぁ?恋人関係になれたら一番いいけれど。旅館て書いてあったし、浴衣でどっきり作戦とかどうかなぁ?俺のセクシーな浴衣姿に霧島がムラムラする。いいかも?ふふふ、楽しみだなぁ。
自分の妄想に没頭していた葵は、咲夜が自分を愛しそうに見ていることには気づかないのだった。
「あーんッ」
葵は、恋人みたいだなぁと思いながら、カウンター席で咲夜とイチャイチャしていた。彼は優しい。彼自身は甘いものはそんなに好きではないのに、葵が食べたいと言うから付き合ってくれるのだ。
『ねぇ?恋人になってよ』
そんなことを思わず言ってしまいそうになる。
───初めての相手は絶対、霧島がいいなぁ。男同士ってどうやってエッチするんだろう?
咲夜に卑猥なことばかり言うクセに、葵は無知だった。数年後にはヤりまくっているなんて、この時の葵には想像もしていないことである。ましてや、3pにハマってしまうなんてこと。さっきからチラチラこちらを見ている、お姉さま方の視線が煩い。きっと目当ては咲夜なんだ、と葵は嫌な気分になる。
───そういえば、去年の学園祭でも色んな人に声かけられていたなぁ。こんな美人じゃ仕方ないよね。
170ちょいでは高い方とは言えないだろうが、成長途中の中学生女子からしたら十分なのかも知れない。
───早く霧島のものになってしまいたい。彼を俺だけのものにしてしまいたい。
「この後、どこ行く?」
優しい微笑みと共に、咲夜の指先が葵の頬に触れた。
「確か地下にシアターあったよね」
「何観る?」
葵はSNSで話題になっていた、男の子同士の純愛物のことを思い出す。同性婚が深く浸透した昨今、同性同士の恋愛物語が人気を博している。それは、異性同士の恋愛に、純愛を感じなくなったことが原因の一つでもあった。当たり前のことではあるが、同性婚が可能になろうとも、性犯罪が減るわけではない。所詮、男が女に向ける愛は、イコール性欲に対する言い訳に過ぎない。そう考える女性たちから、絶大な支持を受けるのが“同性同士の純愛物語”なのだ。市場の経済を動かすのは、いつの世も女性だと言わざるを得ない。女性は男性と違って好きになると、関連物全般に手をつける傾向があるからだ。しかもそれは刹那的ではない。
「これがいいなぁ!」
「あ、これ良いってクラスの人たちも言ってたね」
二人はスマホで検索した上映時間の表を、覗き込む。葵にはこの時、ある思惑があった。この映画を咲夜に見せ、自分のことを意識して貰おうとしていたのである。
───上手くいけば、キスくらいいけるかなあ?
葵はそんなことを思う。咲夜が自分に恋愛感情をいだいていなかったとしても、自分が一番有利な位置にいることは、一目瞭然だったからである。
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「片倉、大丈夫?」
思った以上に映画に感動してしまって、シアターから出た葵は号泣してしまった。よくあるストーリーなのだが、感情移入し過ぎた。
ある学校を舞台にしたストーリーで、仲の良い二人の恋物語。一人は恋愛感情を自覚していて、もう一人は無自覚。自覚をしている方は、何年もずっと相手のことを好きなのだが、両親に無理矢理上司の娘と、婚約させられてしまう。そこでやっと、もう一人の方が自分の気持ちに気づく、と言うもの。大学を卒業と同時に婚姻をすることになり、結婚式の前日初めてお互いの気持ちを吐露し合う。最終的には二人は、全てを捨てて遠い地でひっそりと暮らすのだ。それから何十年も経って、婚約者のいた方の子が病気で亡くなり、残された方が彼の両親に会いに行き和解する。そして主人公は愛しい彼との思い出と共に彼らと暮らしていくというストーリー。
「やっぱり、公認がいいよね」
と葵がいうと、
「そうだね」
と同意してくれる。葵は咲夜にむぎゅっと抱きつく。彼はその背中を撫でてくれていた。
「霧島は、あんな風になったらどうする?諦める?」
「俺もやっぱり、好きな人と一緒に逃げると思う」
───非現実的でもやっぱり、好きな人とずっと一緒にいたいなぁ。
「そろそろライブハウスに向かおう?」
「うんッ」
───もし、霧島と一緒に居られるのなら、どんな犠牲を払ってもいい。彼とつき合いたい、恋人になりたい。
葵は一層強く思う。手を繋いで歩きながら、彼の横顔を見上げると、
「どうしたの?」
と、問われる。
「霧島が好きだなぁって思って」
「ッ」
珍しく咲夜が紅くなった。いつもならスルーなのに。
「ありがと」
そうこうしている間にライブハウスに到着する。しかしライブの間中、葵は別のことばかり考えていた。どんなに好きだと言っても進展しない。さて、どうしたものか。
───霧島だって満更じゃない気がするんだけどなぁ。抱きついても、手を繋いでも嫌がらないし。それが妹さんへの延長な気がするのが、ネックなんだよね。ゴールデンウィーク明けには交流会がある。一緒の部屋に二人きり。勝負するなら交流会かなぁ?恋人関係になれたら一番いいけれど。旅館て書いてあったし、浴衣でどっきり作戦とかどうかなぁ?俺のセクシーな浴衣姿に霧島がムラムラする。いいかも?ふふふ、楽しみだなぁ。
自分の妄想に没頭していた葵は、咲夜が自分を愛しそうに見ていることには気づかないのだった。
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