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4 手に入れたいもの【愛美】
1 裏切り行為
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『付き合っているわけじゃないし、俺こういうことは……』
奏斗が自分の部屋に来た日のことを愛美は思い出していた。
ベッドに座った奏斗に乗り上げると、愛美は彼のシャツをたくし上げその肌に直に触れる。
──だったらつきあえばいいだけ。
奏斗が躊躇うのは、この関係に問題があるから。
『じゃあ、彼女とはしてるの?』
愛美がそう問えば、
『してないよ』
と答える。
そんな彼を愛美は押し倒すとその胸に額を寄せた。
聞こえる鼓動と上昇する体温。少なくとも奏斗は愛美を意識しているのだと思えた。
『奏斗に触れたいだけ。奏斗が嫌なことはしないから』
逆らえるわけなどないのに。
最後まではしなかったものの、一線を越え彼に快感を促した。
一方的な奉仕を、彼はどう受け取ったのだろう。
罪悪感で顔を歪める奏斗に優しいキスを落とす。
──あの子が見た目とは違って純情な子なら、きっと奏斗の心は奪われてしまう。そうなる前に、わたしに繋がないと。
離れていくことは許さない。
奏斗が躊躇っている理由が『大川結菜が好き』というわけでないなら、なおさら。別れたいなんて、一度も思ったことがなかった。
いつか将来を誓い、契りを結んでその先へ向かうはずだった。
すれ違ったまま、終わりになんてしない。
愛美はスマホを手に取ると、メッセージアプリを起動する。
彼にメッセージを送るとすぐに返信が。
「そう。彼女と一緒なの」
”会いたかったのにな”と呟くと、ベランダに出る。
空には夕闇が間近に迫り、綺麗なコントラストを醸し出していた。
高校の時は一緒にいられる時間は少なかったが、塾の帰り道に手を繋いで駅まで歩く時間がなによりの宝物だった。春休みには泊りがけで何処かへ行こうと約束もした。
それを壊したのは自分。彼が悪いわけではない。
甘えてしまっていたのだ。彼が大人びていたから。
まだ自分と同じ高校生だったのに。
重い話を振ったところで、支えきれるわけがなく衝動的な別れだったのだと思う。大学に受かり塾の講師にお礼に行けば、奏斗が探しに来たと告げられた。連絡先を教えることができないのは理解するが、どうして講師から自分に伝言をくれなかったのだろうかと、その気の利かなさにいら立ちを感じた。
講師が悪いわけではない。逆恨みなことは分かっている。
だが伝えてくれていたなら、彼を手放すことはなかった。
まだ手に残る、熱い感触。
初めて触れたソコ。
こんなことがしたいと思える日が来るとは思わなかった。
止められない性衝動。
彼はそれを受け入れた。
それなのに、
『大川とは別れない。ごめん』
と彼は言う。
──だったらもう一度自分に向けるしかない。
どんな手段を使ってでも。
愛美は親指の爪を噛んだ。
悔しさと後悔が自分を支配する。邪魔な女を何とかしないといけない。
もちろん、穏便に。
単刀直入に言っても、彼女は聞き入れなかった。
『ごめんなさい。それは出来ません。わたしも奏斗くんが好きだから』
別れてくれたら、どんなに良かっただろう。
とは言え、簡単に別れるような子が相手だったなら、それはそれで腹を立てたに違いない。
遊んでいそうな見た目の彼は、実は純粋で一途。それを知っているのは自分だけで良いと思っていた。だが、愛美と別れた後の彼は酷い噂を流されてしまう。大学に入学し、奏斗の噂を耳にしたとき卒倒しそうになった。
──わたしだけは奏斗を信じたいって思ったの。
大川結菜が彼を弄んでいるなら許せないと思ったが、彼女も奏斗と同じなのだと思う。同じ境遇で気が合ったなら、二人を引き離すのは難しいだろう。
それも負けるわけにはいかないのだ。
──あの子なら、相手なんていくらだって見つかる。
わたしには彼しかいないの。
奏斗じゃないと無理なの。
愛美は痛いほど拳を握り締め、今頃奏斗と一緒にいるだろう結菜に嫉妬心を燃やしていたのだった。
奏斗が自分の部屋に来た日のことを愛美は思い出していた。
ベッドに座った奏斗に乗り上げると、愛美は彼のシャツをたくし上げその肌に直に触れる。
──だったらつきあえばいいだけ。
奏斗が躊躇うのは、この関係に問題があるから。
『じゃあ、彼女とはしてるの?』
愛美がそう問えば、
『してないよ』
と答える。
そんな彼を愛美は押し倒すとその胸に額を寄せた。
聞こえる鼓動と上昇する体温。少なくとも奏斗は愛美を意識しているのだと思えた。
『奏斗に触れたいだけ。奏斗が嫌なことはしないから』
逆らえるわけなどないのに。
最後まではしなかったものの、一線を越え彼に快感を促した。
一方的な奉仕を、彼はどう受け取ったのだろう。
罪悪感で顔を歪める奏斗に優しいキスを落とす。
──あの子が見た目とは違って純情な子なら、きっと奏斗の心は奪われてしまう。そうなる前に、わたしに繋がないと。
離れていくことは許さない。
奏斗が躊躇っている理由が『大川結菜が好き』というわけでないなら、なおさら。別れたいなんて、一度も思ったことがなかった。
いつか将来を誓い、契りを結んでその先へ向かうはずだった。
すれ違ったまま、終わりになんてしない。
愛美はスマホを手に取ると、メッセージアプリを起動する。
彼にメッセージを送るとすぐに返信が。
「そう。彼女と一緒なの」
”会いたかったのにな”と呟くと、ベランダに出る。
空には夕闇が間近に迫り、綺麗なコントラストを醸し出していた。
高校の時は一緒にいられる時間は少なかったが、塾の帰り道に手を繋いで駅まで歩く時間がなによりの宝物だった。春休みには泊りがけで何処かへ行こうと約束もした。
それを壊したのは自分。彼が悪いわけではない。
甘えてしまっていたのだ。彼が大人びていたから。
まだ自分と同じ高校生だったのに。
重い話を振ったところで、支えきれるわけがなく衝動的な別れだったのだと思う。大学に受かり塾の講師にお礼に行けば、奏斗が探しに来たと告げられた。連絡先を教えることができないのは理解するが、どうして講師から自分に伝言をくれなかったのだろうかと、その気の利かなさにいら立ちを感じた。
講師が悪いわけではない。逆恨みなことは分かっている。
だが伝えてくれていたなら、彼を手放すことはなかった。
まだ手に残る、熱い感触。
初めて触れたソコ。
こんなことがしたいと思える日が来るとは思わなかった。
止められない性衝動。
彼はそれを受け入れた。
それなのに、
『大川とは別れない。ごめん』
と彼は言う。
──だったらもう一度自分に向けるしかない。
どんな手段を使ってでも。
愛美は親指の爪を噛んだ。
悔しさと後悔が自分を支配する。邪魔な女を何とかしないといけない。
もちろん、穏便に。
単刀直入に言っても、彼女は聞き入れなかった。
『ごめんなさい。それは出来ません。わたしも奏斗くんが好きだから』
別れてくれたら、どんなに良かっただろう。
とは言え、簡単に別れるような子が相手だったなら、それはそれで腹を立てたに違いない。
遊んでいそうな見た目の彼は、実は純粋で一途。それを知っているのは自分だけで良いと思っていた。だが、愛美と別れた後の彼は酷い噂を流されてしまう。大学に入学し、奏斗の噂を耳にしたとき卒倒しそうになった。
──わたしだけは奏斗を信じたいって思ったの。
大川結菜が彼を弄んでいるなら許せないと思ったが、彼女も奏斗と同じなのだと思う。同じ境遇で気が合ったなら、二人を引き離すのは難しいだろう。
それも負けるわけにはいかないのだ。
──あの子なら、相手なんていくらだって見つかる。
わたしには彼しかいないの。
奏斗じゃないと無理なの。
愛美は痛いほど拳を握り締め、今頃奏斗と一緒にいるだろう結菜に嫉妬心を燃やしていたのだった。
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