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3 噂とは異なる彼【結菜】
2 待ち合わせで一波乱
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奏斗と恋人同士のフリをすることは継続となった。
彼が『美月愛美』に未練があるのであれば、ヨリを戻せばハッピーエンドな気もするのだが。
『先日愛美と話をしたんだが、恋人じゃないって否定できなくて』
ごめんと謝られたが、結菜からするとラッキー以外の何物でもない。
どうして否定できなかったのかも気になるが、奏斗の本音が知りたかった。
本当はヨリを戻したいと考えているなら、誤解された今の状況は不利。その上、お二人様会議で”とりあえず恋人らしくしよう”と決まったのである。
──恋人らしくと言われても、何したらいいかよくわからないし。
『具体的にどんな事すればいいの?』
と結菜が問うと、
『そんなこと俺に聞かれても……』
という返事。
『え? 奏斗くんってモテるよね? 女の子と遊びまくってたんじゃないの?』
思わずそう言ってしまい、
『それ、噂だけだからな』
と言われてしまう。
『そうだ! 世の若者はデートとかするじゃない?』
結菜は名案が浮かんだとばかりに切り出すが、
『若者って……お前も若者じゃないのか?』
とツッコまれた。
『わたしが若者かどうか、それは今論議すべきことではないのですよ。お分かりかな? 奏斗くん』
結菜は眼鏡をあげるポーズをし、ピンと背筋を伸ばして講釈を垂れる。
『要は我々が恋人らしくデートするということが大切なのですよ?』
『我々って……』
奏斗が笑っているので、結菜は殴るふりをして拳を作った。
その辺りの論議については昼食でも取りながら話そうということに一旦落ち着く。そんなわけで、現在午前中の講義が終わり、奏斗を待っているところであった。
周りからは遊んでいる風に見られる二人だが、恋愛初心者同然。
自分と境遇の似た人と過ごすことがこんなに楽なんだと気づく。
だから少し、浮かれていたのかも知れない。
──どっちから来るんだろう?
結菜は靴箱の辺りで周りを見回した。
いつもはお一人様行動が多いので、待ち合わせなどしたことがない。
そのため妙にそわそわしてしまっていた。
それがいけなかったのだと思う。
「あらー。彼氏と待ち合わせですの?」
K学園はお金持ちの家の子が多く通っている。
だがいわゆる内部生と呼ばれる、幼稚園からK学園に通っている者の中には表立っていじめをするような品の悪い者はいない。
つまり大学部から所属するような生徒にそのような品のない者が混ざっているということでもある。
結菜が絡まれたのは、恐らくそれだけが理由ではないだろう。
──そうだった。
わたしの彼氏は有名人。
ここで負けたら、彼の名にも傷がついてしまう。
やるのよ! 結菜。
殺られるまえに殺れって言うじゃない!
相手を殺す気なのか?
結菜は物騒なことを固く誓い、相手に向き直る。
「ええ。そうですの。何かわたくしに用でもございまして?」
結菜は優雅に微笑んで見せた。
普段は何処か抜けた女子ではあるが、結菜は実のところ良家のお嬢様なのである。知る人ぞ知るなのは、隠しているから。
「大川さんの彼氏って、あの有名な『白石奏斗』でしょう? お父様は了承なさっておられるのかしら?」
嫌味を含んだ刺々しい言葉を浴びせる相手の女子学生は、舐めるように結菜を上から下まで見下ろした。
そして、
「まあ、そんな緩い恰好を許してくれるお父様なのですから。男性関係も緩いのかしらねえ?」
と更に嫌味を浴びせる。
──何よ。奏斗くんのこと何も知らないくせに。
あまりに失礼な物言いに、さすがの結菜も不快感を隠せない。
だが結菜が何か言い返そうとしていると、
「奏斗のこと何も知らないくせに、悪口を言うのはやめてくださる? それとも、奏斗にフラれた腹いせに彼女に嫌がらせをしてらっしゃるの?」
と背後から綺麗な声がした。
思わず振り返ると、そこには美月愛美が立っている。
彼女と一緒にいるのは理事長の息子と彼の友人だろう。
結菜に嫌味を言っていた女子は理事長の息子を見るなり、フンといって去っていったのだった。
彼が『美月愛美』に未練があるのであれば、ヨリを戻せばハッピーエンドな気もするのだが。
『先日愛美と話をしたんだが、恋人じゃないって否定できなくて』
ごめんと謝られたが、結菜からするとラッキー以外の何物でもない。
どうして否定できなかったのかも気になるが、奏斗の本音が知りたかった。
本当はヨリを戻したいと考えているなら、誤解された今の状況は不利。その上、お二人様会議で”とりあえず恋人らしくしよう”と決まったのである。
──恋人らしくと言われても、何したらいいかよくわからないし。
『具体的にどんな事すればいいの?』
と結菜が問うと、
『そんなこと俺に聞かれても……』
という返事。
『え? 奏斗くんってモテるよね? 女の子と遊びまくってたんじゃないの?』
思わずそう言ってしまい、
『それ、噂だけだからな』
と言われてしまう。
『そうだ! 世の若者はデートとかするじゃない?』
結菜は名案が浮かんだとばかりに切り出すが、
『若者って……お前も若者じゃないのか?』
とツッコまれた。
『わたしが若者かどうか、それは今論議すべきことではないのですよ。お分かりかな? 奏斗くん』
結菜は眼鏡をあげるポーズをし、ピンと背筋を伸ばして講釈を垂れる。
『要は我々が恋人らしくデートするということが大切なのですよ?』
『我々って……』
奏斗が笑っているので、結菜は殴るふりをして拳を作った。
その辺りの論議については昼食でも取りながら話そうということに一旦落ち着く。そんなわけで、現在午前中の講義が終わり、奏斗を待っているところであった。
周りからは遊んでいる風に見られる二人だが、恋愛初心者同然。
自分と境遇の似た人と過ごすことがこんなに楽なんだと気づく。
だから少し、浮かれていたのかも知れない。
──どっちから来るんだろう?
結菜は靴箱の辺りで周りを見回した。
いつもはお一人様行動が多いので、待ち合わせなどしたことがない。
そのため妙にそわそわしてしまっていた。
それがいけなかったのだと思う。
「あらー。彼氏と待ち合わせですの?」
K学園はお金持ちの家の子が多く通っている。
だがいわゆる内部生と呼ばれる、幼稚園からK学園に通っている者の中には表立っていじめをするような品の悪い者はいない。
つまり大学部から所属するような生徒にそのような品のない者が混ざっているということでもある。
結菜が絡まれたのは、恐らくそれだけが理由ではないだろう。
──そうだった。
わたしの彼氏は有名人。
ここで負けたら、彼の名にも傷がついてしまう。
やるのよ! 結菜。
殺られるまえに殺れって言うじゃない!
相手を殺す気なのか?
結菜は物騒なことを固く誓い、相手に向き直る。
「ええ。そうですの。何かわたくしに用でもございまして?」
結菜は優雅に微笑んで見せた。
普段は何処か抜けた女子ではあるが、結菜は実のところ良家のお嬢様なのである。知る人ぞ知るなのは、隠しているから。
「大川さんの彼氏って、あの有名な『白石奏斗』でしょう? お父様は了承なさっておられるのかしら?」
嫌味を含んだ刺々しい言葉を浴びせる相手の女子学生は、舐めるように結菜を上から下まで見下ろした。
そして、
「まあ、そんな緩い恰好を許してくれるお父様なのですから。男性関係も緩いのかしらねえ?」
と更に嫌味を浴びせる。
──何よ。奏斗くんのこと何も知らないくせに。
あまりに失礼な物言いに、さすがの結菜も不快感を隠せない。
だが結菜が何か言い返そうとしていると、
「奏斗のこと何も知らないくせに、悪口を言うのはやめてくださる? それとも、奏斗にフラれた腹いせに彼女に嫌がらせをしてらっしゃるの?」
と背後から綺麗な声がした。
思わず振り返ると、そこには美月愛美が立っている。
彼女と一緒にいるのは理事長の息子と彼の友人だろう。
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