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* 大川結奈
1 奏斗の噂
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大川結奈は先ほど会話を交わした彼のことを思い出していた。
白石奏斗と言えば、自分が大学入学当時から悪い噂しか聞かない人物。
だからたまにキャンパス内ですれちがっても見ないようにしていて。
カッコいい人だとは思っていた。だからモテるのは理解できる。
しかし、”女をとっかえひっかえ、ヤリ捨てする”という噂があって怖かった。
結菜は彼の手帳のことを思い出す。
──詩、書くんだ。
凄く繊細で、苦しくなるような詩だった。
好きな人でもいるのかなって思って。
彼の噂での人物像とはおおよそかけ離れた内容の詩に結奈は驚いたし、言葉選びの綺麗さに感動もした。
結菜自身も詩を書くため余計にそう感じ、続いてネコのペンに夢中になったのだ。
──わたしもこのシリーズ好きなんだよね。
これ、限定品で手に入らなくて、どこで買ったんだろう?
聞いたら教えてくれるかな?
そう思っていたのだ。
実際に話した奏斗は、噂の印象とは全く違っており、前評判が悪すぎたせいか笑顔が一際素敵に見えたのだ。
──仲良くなりたいなあ。詩の話とか。
どうしたら上手く書けるのか、コツとか教えて欲しい。
わたし、どうもだらだらになっちゃって偉く長くなっちゃうし。
「結奈」
「あ……」
考えごとをしていた結菜に声をかけてきたのは、高校の時からの友人の二人である。
「さっき白石くんと一緒にいなかった?」
「あ、うん。ちょっとね」
結奈は先ほどのことを言いたくなくて、言葉を濁す。
「白石はやめた方がいいよー。ポイ捨てされるから」
「彼はそんな人じゃないよ」
結奈は彼のことを自分の目の前で悪く言われたくなかった。
「まさか、惚れちゃったんじゃ?」
「そんなんじゃ……」
「白石ってあっちも巧いって噂だしね」
「あっち?」
「セックス」
友人の一人が人差し指と親指で輪を作ったところに、もう片方の指を差し込みながら。それを見つめ結奈は複雑な気持ちになったのだった。
結奈は午後の授業を終え、駅前を一人、本屋に向かい歩いていた。
周りにはよく意外だと言われるが、見た目に反して結奈は一人で行動するのが好きである。と言うのは建前で、のんびりした性格のため人に合わせるのが苦手。
「クレープ食べたいなあ」
本屋の途中にあるクレープ屋にふと目が行ってしまう。
立ち止まってメニューを見つめるが……。
──お一人様で歩きながら食べるって、なんだか寂しい気もするし。
誰かに見られたら嫌だな。
あ。あれ?
「白石くん」
「ん?」
クレープ屋の前をこれまたお一人様で颯爽と歩いていく彼に、思わず声をかけた。背が高く、歩き方がモデルのようでカッコいい。
「なんだ、一人?」
結奈が一人で居ることに、凄く意外そうな顔をした。
「なにお前、ハブられてんの?」
しかも失礼なことを言う。
「違うもん! お一人様行動の似合う出来る女なの!」
「は?」
彼は”あほ?”という反応をしたあと吹き出した。
ツボにはまったのか、いつまでも笑っている。とても失礼だ。
「ちょっと! 笑うとか酷いし」
「悪い、あまりにも……」
「なによ、わたしがギャルっぽいカッコしてるからってさあ、偏見なんだから!」
「どっちかというと甘ロリっぽいけどな」
「ピンクが好きなの! 女はピンクが精神的にも落ち着くって言われてるんだからねっ」
「ふーん」
彼はまだ口を歪ませ、笑いたいような表情をしていた。
「で、買うのか? 買わないのか?」
奏斗は顎でクレープ屋のほうを指して。
「本屋にも行きたいし、迷ってるんだ」
「雑誌?」
彼にとって結奈は、何処までもギャルっぽいイメージらしい。
「詩集買うの。今日ね、好きな作家さんの詩集の発売日で予約してたものを受け取りに行くんだ」
「へえ」
──へえってなによ!
バカにして。
おこなんだからね!
白石奏斗と言えば、自分が大学入学当時から悪い噂しか聞かない人物。
だからたまにキャンパス内ですれちがっても見ないようにしていて。
カッコいい人だとは思っていた。だからモテるのは理解できる。
しかし、”女をとっかえひっかえ、ヤリ捨てする”という噂があって怖かった。
結菜は彼の手帳のことを思い出す。
──詩、書くんだ。
凄く繊細で、苦しくなるような詩だった。
好きな人でもいるのかなって思って。
彼の噂での人物像とはおおよそかけ離れた内容の詩に結奈は驚いたし、言葉選びの綺麗さに感動もした。
結菜自身も詩を書くため余計にそう感じ、続いてネコのペンに夢中になったのだ。
──わたしもこのシリーズ好きなんだよね。
これ、限定品で手に入らなくて、どこで買ったんだろう?
聞いたら教えてくれるかな?
そう思っていたのだ。
実際に話した奏斗は、噂の印象とは全く違っており、前評判が悪すぎたせいか笑顔が一際素敵に見えたのだ。
──仲良くなりたいなあ。詩の話とか。
どうしたら上手く書けるのか、コツとか教えて欲しい。
わたし、どうもだらだらになっちゃって偉く長くなっちゃうし。
「結奈」
「あ……」
考えごとをしていた結菜に声をかけてきたのは、高校の時からの友人の二人である。
「さっき白石くんと一緒にいなかった?」
「あ、うん。ちょっとね」
結奈は先ほどのことを言いたくなくて、言葉を濁す。
「白石はやめた方がいいよー。ポイ捨てされるから」
「彼はそんな人じゃないよ」
結奈は彼のことを自分の目の前で悪く言われたくなかった。
「まさか、惚れちゃったんじゃ?」
「そんなんじゃ……」
「白石ってあっちも巧いって噂だしね」
「あっち?」
「セックス」
友人の一人が人差し指と親指で輪を作ったところに、もう片方の指を差し込みながら。それを見つめ結奈は複雑な気持ちになったのだった。
結奈は午後の授業を終え、駅前を一人、本屋に向かい歩いていた。
周りにはよく意外だと言われるが、見た目に反して結奈は一人で行動するのが好きである。と言うのは建前で、のんびりした性格のため人に合わせるのが苦手。
「クレープ食べたいなあ」
本屋の途中にあるクレープ屋にふと目が行ってしまう。
立ち止まってメニューを見つめるが……。
──お一人様で歩きながら食べるって、なんだか寂しい気もするし。
誰かに見られたら嫌だな。
あ。あれ?
「白石くん」
「ん?」
クレープ屋の前をこれまたお一人様で颯爽と歩いていく彼に、思わず声をかけた。背が高く、歩き方がモデルのようでカッコいい。
「なんだ、一人?」
結奈が一人で居ることに、凄く意外そうな顔をした。
「なにお前、ハブられてんの?」
しかも失礼なことを言う。
「違うもん! お一人様行動の似合う出来る女なの!」
「は?」
彼は”あほ?”という反応をしたあと吹き出した。
ツボにはまったのか、いつまでも笑っている。とても失礼だ。
「ちょっと! 笑うとか酷いし」
「悪い、あまりにも……」
「なによ、わたしがギャルっぽいカッコしてるからってさあ、偏見なんだから!」
「どっちかというと甘ロリっぽいけどな」
「ピンクが好きなの! 女はピンクが精神的にも落ち着くって言われてるんだからねっ」
「ふーん」
彼はまだ口を歪ませ、笑いたいような表情をしていた。
「で、買うのか? 買わないのか?」
奏斗は顎でクレープ屋のほうを指して。
「本屋にも行きたいし、迷ってるんだ」
「雑誌?」
彼にとって結奈は、何処までもギャルっぽいイメージらしい。
「詩集買うの。今日ね、好きな作家さんの詩集の発売日で予約してたものを受け取りに行くんだ」
「へえ」
──へえってなによ!
バカにして。
おこなんだからね!
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