上 下
10 / 24
1──勘違いとすれ違い

♡6『言えない願い』【R】

しおりを挟む
 ****side:久隆

「ふぅ……ッ」
 久隆は声が漏れそうになり口元を両手で押さえる。咲夜は膝まづき久隆自身に舌を這わせていた。他人からこんなことをされるのは初めてで、どうしたらいいのかわからない。
「はぁッ」
 鈴口に舌が這う。久隆はこのまま抱かれたいと思った。咲夜のものになってしまいたいと。
「んんッ」
 顔を背け、ぎゅっと目を閉じていると、彼は久隆自身を握り込み上下させながら久隆の口を塞いだ。

 ──ねえ、抱いてよ。
  そしたら無理矢理にでも恋人になれる。
  俺の心の迷いを取り払ってよ、咲夜。

「好きだよ」
 耳元で囁かれ、彼の首に腕を巻きつける。不安さえなければ、すぐにだって恋人になりたかった。
「さく……や」

 ──もっと欲しい
  俺を君のものにしてよ

 首筋に触れた唇が強く肌を吸う。痕がついたって構わないと思った。服の上から感じる互いの体温。彼の香。このまま一つになりたい、強く願った。
「ねえ、好き?」
「好きッ……好きだよ」
「久隆、いつか俺を恋人にしてくれる?」
 その質問に久隆は彼を見上げた。
「待ってるから」

 しかし、思う形にはならなかった。どうしてこうなってしまったのだろう? ホントに好きなのに。どうしてこの時ちゃんと話さなかったのだろう? 後悔ばかりがついて回る。出口がわからない。

「大好きだよ、久隆」

 ──咲夜が、好きなのに。

 ****

 ”ねえ、久隆。もっと気持ちいいことしてあげる”
 それは悪魔の囁きだったのだろうか?

「あッ……はぁッ」
 導かれるままベッドの上で厭らしく足を拡げる久隆。咲夜はジェルを久隆自身に垂らし、くちゅくちゅと鈴口を親指の腹で弄りながら、久隆の最奥の蕾に舌を這わせていた。
「んッ♡」
 前も後ろも弄られて絶えず声が洩れる。
「やッ……あんッ」
 初めての刺激的な愛撫に腰が揺れ、
「中、くちゅくちゅしてあげる」
 と、止める間もなく蕾に咲夜の指が挿入される。
「あああッ♡」

 くぷぷッと指が奥まで入ると良いところを求め出たり入ったり蠢いたりした。
「やあんッ……」
 まだ恋人でもないのに厭らしいところを全て晒し、恥ずかしいくらいにエッチな声を洩らす久隆を満足気に見つめる咲夜。
「まるでエッチしてるみたいだね、久隆」
「ふぇ?」
「可愛い。こんなにひくつかせて」
「やッ……そんなにしちゃ……やぁッ♡」
「イッてもいいよ。いっぱいしてあげるから」
 久隆は次第に咲夜のくれる愛撫に夢中になっていった。

 ──咲夜はいいの?
  抱いてもいいよ?
  ねえ……。

 いいたい言葉は何一つ言えないまま吐息に変わっていく。咲夜が欲情してくれたらいいのに……。そんなことを思いながら久隆は甘い声を漏らしていったのだった。

   **** 

 があああん。
 久隆は思いっきり落ち込んでいた。
「俺、魅力ないのかな?」
 ショックで涙が零れる。いっぱいキスをくれたものの咲夜は最後までしなかった。
「久隆?」
 くすんとしていると、電話をしに部屋の外に出ていた咲夜が戻ってくる。
「どうしたの?」
 ベッドの上で膝を抱えていると咲夜が隣に腰掛け久隆の髪に触れた。
「泊まるって連絡したよ」
 咲夜は再婚した両親が離婚した為、一人暮らしで隣には面倒を見てくれる亡き父方の祖父夫婦が住んでいた。複雑な境遇である。

 ──一緒のベッドで寝てくれるのかな?

 ちょっとだけ浮上する。久隆には兄が居たが社長である父の秘書を兼ねる大学生な為、忙しくていつも一人だ。
「さっきバスルーム覗いたんだけど広いね。一緒に入ろうよ」
 咲夜はまったく気にしていないようで。しかしワンチャンあるようだ。
 今度こそセクシーに誘えばその気になってくれるはず。久隆はそう自分自身を励ますことにする。
「先にご飯いこう」
 急に元気になる久隆に驚いた顔をし、
「お腹空いてたの?」
 お腹が空いて元気が無いのかと勘違いされた。

 ──ちがうのに!
 咲夜って天然なのかな?

「他所のお家でご飯って初めてだから楽しみだな」
 咲夜の綺麗な笑顔に見惚れる。もうずっとうちに居たらいいのにと思いながら。久隆は咲夜の手を取るとベッドから降りる。
「咲夜、行こう」
「う、うん」
 久隆はワクワクしていたが、自分の暮らしが一般的ではないことを理解してはいなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司と俺のSM関係

雫@更新不定期です
BL
タイトルの通りです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

23時のプール 2

貴船きよの
BL
あらすじ 『23時のプール』の続編。 高級マンションの最上階にあるプールでの、恋人同士になった市守和哉と蓮見涼介の甘い時間。

処理中です...