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1『変化する想いと日常』
1 全ての始まりは
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****side■唯野(課長)
────その日、唯野 修二は社長室に呼ばれた。
(株)原始人。大人の空間をコンセプトに自社ブランドの家具や雑貨からスタートした会社である。
現在は下着や外食産業など手広く展開しており、”大人の空間”をテーマにしていたはずが”アダルト”な方向へ進んでしまい、現在も独走中の変わった会社だ。厭らしさよりも、笑い路線なのがまだ救いだろうか?
「社長、お呼びですか?」
当時唯野はまだ、営業部にいた。
後輩である皇は入社一年で副社長に就任し、同期の黒岩は総括まで出世。
パワハラにより、しょっちゅう社長室に呼ばれていた唯野は”またか”と思いながら社長室へ向かったのだ。
「帰社する度に呼びつけるなんて、そんなに俺が好きなんですか?」
皮肉を込めて問いかけると社長呉崎は肩を竦め、秘書の神流川はそんな社長に軽蔑の眼差しを向ける。
「随分なご挨拶だねえ」
と社長。
「素朴な疑問ですよ」
唯野はにこやかな笑みを浮かべて。
そこへ、
「社長、お呼びですか? 話なら手短に……」
と副社長の皇が社長室へ入って来た。
「きたね、皇くん。」
皇は社長室に唯野が呼ばれていることに気づき、
「またパワハラですか?」
と嫌な顔をする。
それをみた神流川が噴き出した。
「皇くん、今回は辞令だよ。何を笑っているんだね、神流川君」
「いえ、社長は信用されていないのだなと思いまして」
──辞令? 嫌な予感しかしないが。
「神流川君、君は相変わらず毒舌だねえ」
「お褒めにあずかりまして光栄です」
と神流川。
皮肉や嫌味が飛び交うのはいつものことである。
「褒めてはいないんだけれどね。さっそくだけれど、唯野君にはしばらく色んな部署に回って勉強をして欲しい」
「はい?」
それは想定外のことであった。瞬時に皇の顔色が変わる。”唯野にまた無茶なことをさせようというのか?”と言いたげである。
「まだ事情は話せないが、各部署のことをざっと学んでほしいんだよ」
社長は当時、大学の学園祭にて優秀な人材を見つけたのだった。そのことについて知らされていたのは社長第一秘書の神流川のみ。
唯野は一年間本社で色んな部署に関わることとなる。
その意味を知るのはその年の冬。
わが社でも事業の拡大に伴い、カスタマーサービスセンターが設けられていた。寄せられる相談、苦情の内容は多岐に渡る。苦情を受け商品の改善を行うのはもちろん当然のことではある。大切な情報源ともいえよう。
しかしこの部門で以前から悩まされる事態が発生していたのである。
憲法の改正に伴い悪意のあるクレイマーは減りつつはあった。
しかし本当の悪質クレーマーというのは”自分が悪いことをしている自覚”のない者を指すのだと思う。
そしてわが社はこの悪質クレーマーに悩まされていたのである。
翌年、苦情係という課が発足され、唯野はそこの課長として据えられた。
三人の新人を部下につけられて。
────その日、唯野 修二は社長室に呼ばれた。
(株)原始人。大人の空間をコンセプトに自社ブランドの家具や雑貨からスタートした会社である。
現在は下着や外食産業など手広く展開しており、”大人の空間”をテーマにしていたはずが”アダルト”な方向へ進んでしまい、現在も独走中の変わった会社だ。厭らしさよりも、笑い路線なのがまだ救いだろうか?
「社長、お呼びですか?」
当時唯野はまだ、営業部にいた。
後輩である皇は入社一年で副社長に就任し、同期の黒岩は総括まで出世。
パワハラにより、しょっちゅう社長室に呼ばれていた唯野は”またか”と思いながら社長室へ向かったのだ。
「帰社する度に呼びつけるなんて、そんなに俺が好きなんですか?」
皮肉を込めて問いかけると社長呉崎は肩を竦め、秘書の神流川はそんな社長に軽蔑の眼差しを向ける。
「随分なご挨拶だねえ」
と社長。
「素朴な疑問ですよ」
唯野はにこやかな笑みを浮かべて。
そこへ、
「社長、お呼びですか? 話なら手短に……」
と副社長の皇が社長室へ入って来た。
「きたね、皇くん。」
皇は社長室に唯野が呼ばれていることに気づき、
「またパワハラですか?」
と嫌な顔をする。
それをみた神流川が噴き出した。
「皇くん、今回は辞令だよ。何を笑っているんだね、神流川君」
「いえ、社長は信用されていないのだなと思いまして」
──辞令? 嫌な予感しかしないが。
「神流川君、君は相変わらず毒舌だねえ」
「お褒めにあずかりまして光栄です」
と神流川。
皮肉や嫌味が飛び交うのはいつものことである。
「褒めてはいないんだけれどね。さっそくだけれど、唯野君にはしばらく色んな部署に回って勉強をして欲しい」
「はい?」
それは想定外のことであった。瞬時に皇の顔色が変わる。”唯野にまた無茶なことをさせようというのか?”と言いたげである。
「まだ事情は話せないが、各部署のことをざっと学んでほしいんだよ」
社長は当時、大学の学園祭にて優秀な人材を見つけたのだった。そのことについて知らされていたのは社長第一秘書の神流川のみ。
唯野は一年間本社で色んな部署に関わることとなる。
その意味を知るのはその年の冬。
わが社でも事業の拡大に伴い、カスタマーサービスセンターが設けられていた。寄せられる相談、苦情の内容は多岐に渡る。苦情を受け商品の改善を行うのはもちろん当然のことではある。大切な情報源ともいえよう。
しかしこの部門で以前から悩まされる事態が発生していたのである。
憲法の改正に伴い悪意のあるクレイマーは減りつつはあった。
しかし本当の悪質クレーマーというのは”自分が悪いことをしている自覚”のない者を指すのだと思う。
そしてわが社はこの悪質クレーマーに悩まされていたのである。
翌年、苦情係という課が発足され、唯野はそこの課長として据えられた。
三人の新人を部下につけられて。
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