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22──二人だけの時間【実弟】
3 笑顔を望む夜
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「和宏、これ」
図書館で散々吟味し、本屋でも吟味した。
ソファーに腰かける和宏に差し出し、受け取ったのを確認してから隣に腰かける優人。
「えっと?」
「誕生日プレゼント」
不思議そうな顔をするのも無理はない。包装はされているものの、平たく四角いものだから。
「何にしようか色々考えたんだけど。高価なものよりも思い出に残るものがいいかなって思って」
誕生日や記念日だけに高価なプレゼントをする人はたくさんいるだろう。その為に何か月もかかってお金を貯めることもある。
そうではなく、値段にしては高いとは言えなくても特別なものを贈りたいと思った。
「ありがとう。優人が凄く考えて選んでくれたことが何よりも嬉しいよ」
ちゅっと軽いキス。
「開けても良い?」
「うん、もちろん」
兄の綺麗な指先が丁寧に包装を解いていく。
優人は以前知った米国と日本の包装の開け方の違いというのを思い出す。プレゼントの包装紙を丁寧に開けるのが日本。雑に破くのが米国だ。
日本は過剰包装などと言われているが、贈り物をする場合は包装も含めての贈り物という考え方なのだろうと思う。それに対し米国は包装はあくまでも包装でしかない。どちらが良い悪いではなく、あくまでも文化の違いなのだと思う。
「へえ。これは素敵だな」
プレゼントの正解が何かなんてわからない。
けれども、欲しいと感じていても自分では買わないものが良いのではないかと思った。
「俺、こういうの好きだな。優人、ありがとう」
一度膝の上に図鑑を置いてハグしてくれる兄。優人はそんな彼を優しく抱きしめ返す。きっと喜んでくれたことが自分にとっての正解なのだろう。
離れてゆく温もり。
じっと兄の顔を見つめ、
「喜んでくれて良かった」
と微笑む。
「どうしたの」
兄がじっとこちらを見つめているので、その顔を覗き込むが。
「あ、ごめ……見惚れてた」
ハッとしたように目を逸らす彼。
優人はその顎を捉えた。そして彼の手の中からゆっくりと本を取りあげ、ローテーブルの上に置く。
「可愛い」
本を取り上げられ、驚く彼。
「……んんッ」
優人はその腰に腕を回し、引き寄せてその唇を塞いだ。
「優人」
「外食は嫌だと言うから、どうしようかなって思っていたけれど」
”こういうのも悪くないね”と言えば、ぎゅっと抱き着かれた。
お洒落なレストランで食事も悪くない。けれども、兄は家でゆっくりしたいと言った。二人きりで、のんびりしたいと。
だから平田につき合ってもらい、食材の買い出しに出かけた。平田とルームシェアをしていた頃は一度も料理はしなかった優人。そんな自分が積極的に献立通りに買い物をしようとしている姿を見て、彼は驚いていた。
『優人って意外だよな』
『何が』
”恋人が全てになるようには見えない”と心底意外そうに言う平田。
優人はただくすりと笑っただけだった。
意外性の一つや二つ、誰でもある。もちろんそれは自分にもあるだろうし、平田にもあるはずだ。
少なくとも、自分にとってそれは気づこうが気づくまいが大したことではなかった。
それよりも今は、どうやって兄をその気にさせるかで頭がいっぱいだ。
背中をゆっくりと撫で上げ、首筋に唇を寄せる。
「これ以上したら……」
再び口づけようとすれば、ダメだというように人差し指で軽く優人の唇を塞ぐ彼。それは”ここでは”ダメだという意。
「わかった、向こういこうか」
確かに外に行くのも悪くない。
特別な演出をするのも悪くないだろう。
しかしそんなことよりも、自然の成り行きに任せられる家の中はそれなりに良いことを知っている。
──女性が相手なら、愛されてないと思われそうだけれどね。
ベッドに兄を押し倒し、見つめ合いながら優人はそんなことを思った。
「いいよね?」
優人の言葉に彼はこくこくと頷く。世の中では同意がどうのと問題視されているが、それはそもそも恋人でもない相手と性交を望むのが間違いなのだと思う。そして、恋人だからと言って性交ありきと考えるからダメなのだとも思った。求め合えるような関係には、少なくとも相手を愛しいと想う気持ちがあるはずだから。
図書館で散々吟味し、本屋でも吟味した。
ソファーに腰かける和宏に差し出し、受け取ったのを確認してから隣に腰かける優人。
「えっと?」
「誕生日プレゼント」
不思議そうな顔をするのも無理はない。包装はされているものの、平たく四角いものだから。
「何にしようか色々考えたんだけど。高価なものよりも思い出に残るものがいいかなって思って」
誕生日や記念日だけに高価なプレゼントをする人はたくさんいるだろう。その為に何か月もかかってお金を貯めることもある。
そうではなく、値段にしては高いとは言えなくても特別なものを贈りたいと思った。
「ありがとう。優人が凄く考えて選んでくれたことが何よりも嬉しいよ」
ちゅっと軽いキス。
「開けても良い?」
「うん、もちろん」
兄の綺麗な指先が丁寧に包装を解いていく。
優人は以前知った米国と日本の包装の開け方の違いというのを思い出す。プレゼントの包装紙を丁寧に開けるのが日本。雑に破くのが米国だ。
日本は過剰包装などと言われているが、贈り物をする場合は包装も含めての贈り物という考え方なのだろうと思う。それに対し米国は包装はあくまでも包装でしかない。どちらが良い悪いではなく、あくまでも文化の違いなのだと思う。
「へえ。これは素敵だな」
プレゼントの正解が何かなんてわからない。
けれども、欲しいと感じていても自分では買わないものが良いのではないかと思った。
「俺、こういうの好きだな。優人、ありがとう」
一度膝の上に図鑑を置いてハグしてくれる兄。優人はそんな彼を優しく抱きしめ返す。きっと喜んでくれたことが自分にとっての正解なのだろう。
離れてゆく温もり。
じっと兄の顔を見つめ、
「喜んでくれて良かった」
と微笑む。
「どうしたの」
兄がじっとこちらを見つめているので、その顔を覗き込むが。
「あ、ごめ……見惚れてた」
ハッとしたように目を逸らす彼。
優人はその顎を捉えた。そして彼の手の中からゆっくりと本を取りあげ、ローテーブルの上に置く。
「可愛い」
本を取り上げられ、驚く彼。
「……んんッ」
優人はその腰に腕を回し、引き寄せてその唇を塞いだ。
「優人」
「外食は嫌だと言うから、どうしようかなって思っていたけれど」
”こういうのも悪くないね”と言えば、ぎゅっと抱き着かれた。
お洒落なレストランで食事も悪くない。けれども、兄は家でゆっくりしたいと言った。二人きりで、のんびりしたいと。
だから平田につき合ってもらい、食材の買い出しに出かけた。平田とルームシェアをしていた頃は一度も料理はしなかった優人。そんな自分が積極的に献立通りに買い物をしようとしている姿を見て、彼は驚いていた。
『優人って意外だよな』
『何が』
”恋人が全てになるようには見えない”と心底意外そうに言う平田。
優人はただくすりと笑っただけだった。
意外性の一つや二つ、誰でもある。もちろんそれは自分にもあるだろうし、平田にもあるはずだ。
少なくとも、自分にとってそれは気づこうが気づくまいが大したことではなかった。
それよりも今は、どうやって兄をその気にさせるかで頭がいっぱいだ。
背中をゆっくりと撫で上げ、首筋に唇を寄せる。
「これ以上したら……」
再び口づけようとすれば、ダメだというように人差し指で軽く優人の唇を塞ぐ彼。それは”ここでは”ダメだという意。
「わかった、向こういこうか」
確かに外に行くのも悪くない。
特別な演出をするのも悪くないだろう。
しかしそんなことよりも、自然の成り行きに任せられる家の中はそれなりに良いことを知っている。
──女性が相手なら、愛されてないと思われそうだけれどね。
ベッドに兄を押し倒し、見つめ合いながら優人はそんなことを思った。
「いいよね?」
優人の言葉に彼はこくこくと頷く。世の中では同意がどうのと問題視されているが、それはそもそも恋人でもない相手と性交を望むのが間違いなのだと思う。そして、恋人だからと言って性交ありきと考えるからダメなのだとも思った。求め合えるような関係には、少なくとも相手を愛しいと想う気持ちがあるはずだから。
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