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21──彼と彼の義兄【平田】
3 優人の不満
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「お前にはほとほと呆れたぞ」
「何を今更」
平田の言葉にやれやれと肩を竦める優人。二人は連れ立って店を出る。なんとか彼の暴挙を食い止め、購入したアクセサリーはブレスレット数点。それでも十分すぎると思っていた。
「しかし、優人はそれだけモテるのになんでK学のランキングに載ったことがないんだ?」
車に乗り込みながら彼に疑問を投げかける平田。マンションまではすぐそこだ。
K学園には中等部、高等部の生徒会と大学部の学生会で運営されているK学裏掲示板というのがある。一般的には匿名で悪口を言うようなところというイメージがあるが、K学の場合は違う。
ログインには学生番号を必要としており書き込みをするためには学生番号を利用して登録することが必要となってくる。
とは言え、表に表示されるのは通常のSNSと等しく任意のハンドルネームやプロフィールのみ。
紐づけされているのはトラブルがあった時の為。
誹謗中傷などは厳しく取り締まられている。
もっとも、K学はお金持ちの家庭が集まる学園。裏掲示板といえども品性を失うことは稀だ。
「さあ? 歴代の先輩たちが君臨しているからじゃないの?」
確かにモテランキングもイケメンランキングも不動の一位という者はいるが、優人を見ているとそこに食い込めないとは思えない。
「それに、俺はいわゆる外部生ってやつだし」
K学では幼稚園から所属しているものを内部生。それ以外の生徒を外部生と呼ぶ習慣がある。
「それは関係ないだろ。だってモテランキング一位に君臨している白石先輩は外部生だぞ?」
「ん? ああ、そうだったね」
あまり他人に興味がない優人でも彼のことは知っていた。もちろん一緒に掲示板を見たのがきっかけ。彼はOBであり、直接会ったことはないが写真を見ただけでも華やかな印象を持った。
容姿は優れているとは思うが、それ以外にも伝説の人である。
「このまま家来る?」
「行って良いなら」
優人の誘いに簡単に乗るのは、ダメな時は誘われないからだ。
「それは良かった」
「ん?」
普段はそんなこと言わない。彼があえてそんなことを言うのに平田は違和感を持つ。
「和宏がクソつまらない映画ばかり観ているから、平田からも何か言ってやってよ」
「何故またそんな苦行を?」
確か和宏と優人は映画の好みが似ていたはずだ。それなのにクソつまらないというなら何か理由があるに違いない。
「仕事関係。忖度するのも大変だな」
「ああ、なるほど。じゃあ片織さんの好み?」
「いや、社の方針だろ。あの人とはつき合い長いみたいだし、好みを知らないなんてことはないでしょ」
いつもはなんでもOKな彼が不満を漏らす。こと和宏に関しては特に反論しない彼が、だ。
「仕事なら仕方ないだろう?」
「つまらないものを想い白いと書くことが良いことだとは思わないよ」
優人のいうことはもっともだと思う。忖度から生まれるものなんて何もない。ともすれば信用を失い兼ねない。
とは言えわざわざつまらないという必要もないわけだから、それを選ばないという方向に持っていくべきだろう。
「でも珍しいな。和宏さんなら意見しそうなのに」
「あのクソ社長のせいで一回仕事辞めてるからな。長いものには巻かれろとでも思ってるんじゃないの?」
車を降りると、両手をポケットに入れ歩き出す彼。エンジンを止め鍵を車に向け車内に鍵がかかったのを音で確認すると、平田も優人に続いた。
自分の仕事に誇りを持っていた和宏。
例の一件ですっかり丸くなったということなのだろうか?
「再就職は肩身が狭いってことか」
「それもあるだろうけど、和宏には意欲というものを感じられない」
以前の和宏のことを知らない平田はそれに対して何と言っていいのか分からない。今の彼にとっては優人が全てのように感じる。
会社とは上司に従うもの。今の和宏の全てが良くないことのようには感じられなかった。
「何を今更」
平田の言葉にやれやれと肩を竦める優人。二人は連れ立って店を出る。なんとか彼の暴挙を食い止め、購入したアクセサリーはブレスレット数点。それでも十分すぎると思っていた。
「しかし、優人はそれだけモテるのになんでK学のランキングに載ったことがないんだ?」
車に乗り込みながら彼に疑問を投げかける平田。マンションまではすぐそこだ。
K学園には中等部、高等部の生徒会と大学部の学生会で運営されているK学裏掲示板というのがある。一般的には匿名で悪口を言うようなところというイメージがあるが、K学の場合は違う。
ログインには学生番号を必要としており書き込みをするためには学生番号を利用して登録することが必要となってくる。
とは言え、表に表示されるのは通常のSNSと等しく任意のハンドルネームやプロフィールのみ。
紐づけされているのはトラブルがあった時の為。
誹謗中傷などは厳しく取り締まられている。
もっとも、K学はお金持ちの家庭が集まる学園。裏掲示板といえども品性を失うことは稀だ。
「さあ? 歴代の先輩たちが君臨しているからじゃないの?」
確かにモテランキングもイケメンランキングも不動の一位という者はいるが、優人を見ているとそこに食い込めないとは思えない。
「それに、俺はいわゆる外部生ってやつだし」
K学では幼稚園から所属しているものを内部生。それ以外の生徒を外部生と呼ぶ習慣がある。
「それは関係ないだろ。だってモテランキング一位に君臨している白石先輩は外部生だぞ?」
「ん? ああ、そうだったね」
あまり他人に興味がない優人でも彼のことは知っていた。もちろん一緒に掲示板を見たのがきっかけ。彼はOBであり、直接会ったことはないが写真を見ただけでも華やかな印象を持った。
容姿は優れているとは思うが、それ以外にも伝説の人である。
「このまま家来る?」
「行って良いなら」
優人の誘いに簡単に乗るのは、ダメな時は誘われないからだ。
「それは良かった」
「ん?」
普段はそんなこと言わない。彼があえてそんなことを言うのに平田は違和感を持つ。
「和宏がクソつまらない映画ばかり観ているから、平田からも何か言ってやってよ」
「何故またそんな苦行を?」
確か和宏と優人は映画の好みが似ていたはずだ。それなのにクソつまらないというなら何か理由があるに違いない。
「仕事関係。忖度するのも大変だな」
「ああ、なるほど。じゃあ片織さんの好み?」
「いや、社の方針だろ。あの人とはつき合い長いみたいだし、好みを知らないなんてことはないでしょ」
いつもはなんでもOKな彼が不満を漏らす。こと和宏に関しては特に反論しない彼が、だ。
「仕事なら仕方ないだろう?」
「つまらないものを想い白いと書くことが良いことだとは思わないよ」
優人のいうことはもっともだと思う。忖度から生まれるものなんて何もない。ともすれば信用を失い兼ねない。
とは言えわざわざつまらないという必要もないわけだから、それを選ばないという方向に持っていくべきだろう。
「でも珍しいな。和宏さんなら意見しそうなのに」
「あのクソ社長のせいで一回仕事辞めてるからな。長いものには巻かれろとでも思ってるんじゃないの?」
車を降りると、両手をポケットに入れ歩き出す彼。エンジンを止め鍵を車に向け車内に鍵がかかったのを音で確認すると、平田も優人に続いた。
自分の仕事に誇りを持っていた和宏。
例の一件ですっかり丸くなったということなのだろうか?
「再就職は肩身が狭いってことか」
「それもあるだろうけど、和宏には意欲というものを感じられない」
以前の和宏のことを知らない平田はそれに対して何と言っていいのか分からない。今の彼にとっては優人が全てのように感じる。
会社とは上司に従うもの。今の和宏の全てが良くないことのようには感じられなかった。
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