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21──彼と彼の義兄【平田】
2 それでも君は
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「優人」
「ん?」
阿貴と別れて二人は雑貨屋にいた。
隣に立つ優人はシルバーアクセサリーを眺めている。
「買うの、それ」
「じゃらじゃらすんのも悪くないだろ?」
車内で海外ミュージシャンのMVを見た後だ。感化されたのだろうと思う。
「それに似合ううちじゃないと」
じゃらじゃらしていて似合うのは主に細身の白色人種ないし黒色人種だ。アジアの中でも東洋人にはいまいち似合うものではない。こと日本人は背が高くても筋肉質とは程遠く、どうにもアンバランス。顔の造りもあるだろう。
それでも似合わないこともない年代もあるかもしれない。だが一歩間違えばただのホスト。
白色人種や黒色人種の細身は明らかに筋肉質。日本人の言うところの貧相とは違う。
「和宏さんがなんて言うかな」
「和宏は関係ないだろ」
優人はアクセサリーを選びながらムッとする。
「少なくとも今のファッションには似合わないぞ」
「俺にパーカーを諦めろと?」
「いや、じゃらじゃらすんのを諦めろと」
平田の言葉に過剰反応して眉を潜める彼が可愛い。
「さては、俺がモテるのがいけ好かないのか」
「いや、優人は今でも十分モテる」
優人と平田のやり取りを聴いていたのだろうか、近くの女子集団が笑っている。
「似合ううちにやらなくていつやるんだ」
「一生やらないという選択もある」
真顔で答えると優人がこちらを二度見した。何を言っているんだ、という表情をしている。
「いや、俺はやるぞ」
「やめておけって」
「腹筋くらいなら割れてる」
「その程度じゃ似合わないって」
若さとは馬鹿さだ。若者とは勘違いをして生きてる。それがいつか恥を知って黒歴史となるものだ。
「みただろ、あの筋肉を」
「俺が見ていたのはそこじゃない」
”筋肉質な身体”に注視していた平田と”ファッション”を眺めていた優人で意見が割れる。こんなことは日常茶飯事だ。和宏はきっと二人のこんな関係に憧れを抱いているのだろ思った。
──こんなやり取りはいつもの事。
和宏さんはツッコミを入れるようなタイプじゃないしな。
優人の全てを肯定してしまうような彼には土台無理な話なのだろう。一緒にいた間と言うよりは性格が一番関係しているような気がし始めている。
「いや、似合うってああいう恰好は」
「似合ったところで何か違うってなるんだよ」
平田の冷静な返しに再び不満そうな表情を浮かべる彼。ここで食い止めなければ和宏に恨まれてしまいそうだ。
──いや、あの人ならどんな優人でもいいのだろう。
贔屓も大概にすべきだ。そんなことを思いながらため息をついていると、いつの間にか優人は女子集団の一人に声をかけられている。
てっきり”これが似合うと”アドバイスでも受けているのかと思ったらそうではなかった。
「ああ、うん。ありがとう」
「おい」
優人の手元を見て額に手をやる平田。こんなことも日常茶飯事ではあるが。
「うちの先輩らしい」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
こういう時の優人は冷静なのか、離れていく女子集団にニコニコしながら手を振っている。その手の中にある名刺は一枚や二枚ではない。彼女たちは平田たちが通うK学園大学部の二年だと言う。
「こんなところで何モテてんだよ」
「ん?」
貰った名刺をしまい込む彼に平田は頭痛を覚えた。
「断るって選択肢はないのか? 連絡するのかよ、それ」
「いや?」
そう、優人はいつだってニコニコしながら連絡先を受け取っておきながら一度だって連絡を取ったことがない。ならばどうして断らないんだと怒りを感じてしまう平田。
「そうやって期待ばかり持たせるの良くないと思うぞ?」
「でもその辺でまたすれ違ったら気まずいしさ」
「断らなくても十分気まずいだろうが」
”そう?”と笑う彼に殴りたい気分に駆られる。自分としか行動を共にしない彼だが、こういう事が日常茶飯事だから放っておけないのである。
「ん?」
阿貴と別れて二人は雑貨屋にいた。
隣に立つ優人はシルバーアクセサリーを眺めている。
「買うの、それ」
「じゃらじゃらすんのも悪くないだろ?」
車内で海外ミュージシャンのMVを見た後だ。感化されたのだろうと思う。
「それに似合ううちじゃないと」
じゃらじゃらしていて似合うのは主に細身の白色人種ないし黒色人種だ。アジアの中でも東洋人にはいまいち似合うものではない。こと日本人は背が高くても筋肉質とは程遠く、どうにもアンバランス。顔の造りもあるだろう。
それでも似合わないこともない年代もあるかもしれない。だが一歩間違えばただのホスト。
白色人種や黒色人種の細身は明らかに筋肉質。日本人の言うところの貧相とは違う。
「和宏さんがなんて言うかな」
「和宏は関係ないだろ」
優人はアクセサリーを選びながらムッとする。
「少なくとも今のファッションには似合わないぞ」
「俺にパーカーを諦めろと?」
「いや、じゃらじゃらすんのを諦めろと」
平田の言葉に過剰反応して眉を潜める彼が可愛い。
「さては、俺がモテるのがいけ好かないのか」
「いや、優人は今でも十分モテる」
優人と平田のやり取りを聴いていたのだろうか、近くの女子集団が笑っている。
「似合ううちにやらなくていつやるんだ」
「一生やらないという選択もある」
真顔で答えると優人がこちらを二度見した。何を言っているんだ、という表情をしている。
「いや、俺はやるぞ」
「やめておけって」
「腹筋くらいなら割れてる」
「その程度じゃ似合わないって」
若さとは馬鹿さだ。若者とは勘違いをして生きてる。それがいつか恥を知って黒歴史となるものだ。
「みただろ、あの筋肉を」
「俺が見ていたのはそこじゃない」
”筋肉質な身体”に注視していた平田と”ファッション”を眺めていた優人で意見が割れる。こんなことは日常茶飯事だ。和宏はきっと二人のこんな関係に憧れを抱いているのだろ思った。
──こんなやり取りはいつもの事。
和宏さんはツッコミを入れるようなタイプじゃないしな。
優人の全てを肯定してしまうような彼には土台無理な話なのだろう。一緒にいた間と言うよりは性格が一番関係しているような気がし始めている。
「いや、似合うってああいう恰好は」
「似合ったところで何か違うってなるんだよ」
平田の冷静な返しに再び不満そうな表情を浮かべる彼。ここで食い止めなければ和宏に恨まれてしまいそうだ。
──いや、あの人ならどんな優人でもいいのだろう。
贔屓も大概にすべきだ。そんなことを思いながらため息をついていると、いつの間にか優人は女子集団の一人に声をかけられている。
てっきり”これが似合うと”アドバイスでも受けているのかと思ったらそうではなかった。
「ああ、うん。ありがとう」
「おい」
優人の手元を見て額に手をやる平田。こんなことも日常茶飯事ではあるが。
「うちの先輩らしい」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
こういう時の優人は冷静なのか、離れていく女子集団にニコニコしながら手を振っている。その手の中にある名刺は一枚や二枚ではない。彼女たちは平田たちが通うK学園大学部の二年だと言う。
「こんなところで何モテてんだよ」
「ん?」
貰った名刺をしまい込む彼に平田は頭痛を覚えた。
「断るって選択肢はないのか? 連絡するのかよ、それ」
「いや?」
そう、優人はいつだってニコニコしながら連絡先を受け取っておきながら一度だって連絡を取ったことがない。ならばどうして断らないんだと怒りを感じてしまう平田。
「そうやって期待ばかり持たせるの良くないと思うぞ?」
「でもその辺でまたすれ違ったら気まずいしさ」
「断らなくても十分気まずいだろうが」
”そう?”と笑う彼に殴りたい気分に駆られる。自分としか行動を共にしない彼だが、こういう事が日常茶飯事だから放っておけないのである。
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