29 / 114
6──雛本一族の問題【実弟】
2 変わりゆく想い【R】
しおりを挟む
「はあッ……んんッ」
卑猥な音を響かせながら、和宏は感じるままに声を漏らす。
それが優人を煽っているとも気づかずに。
「たまんない。気持ちいいの?」
問えばコクコクと頷く、兄。
彼の中に何度も穿ちながら、その体温を感じれば心が温まる。
「俺のがそんなにいいの?」
全てを独り占めして、その愛を感じていたいと願った。
「ちが……優人が良いの」
性交だけを求めているわけじゃない。
好きだから繋がりたいのだと伝えたい兄のその背中をぎゅっと抱きしめる。自分がどれほどまでに愛に飢えていたのか、訴えかけるように。
首に巻かれていたその腕。
彼の手は優人の後頭部を撫でる。愛しいというように。
自分を満たしてくれるのは、やはり兄だけなのだと思った。この先訪れるだろう一族内での争い。
きっと兄を巻き込んでしまうだろう。
正直伯父がどんな人なのか記憶になかった。容姿くらいは覚えているが。
何の問題もない、穏やかな家庭が世の中にどれくらいあるだろう。
小さな問題を乗り越えてどの家庭もやっているはずなのだ。例え妾の子であろうが、産まれてきた命に罪はない。
自分たちはそう思ったから阿貴を受け入れたのだ。
それが後悔だけ残したなどとは思いたくはない。
罪は伯父にある。
無責任なことをし、阿貴をあんな風にした罪が。
自分から兄を奪った阿貴は憎い。
しかしそうなった根源が伯父にあるなら、憎むべきは伯父だ。その罪は重い。兄を傷つけ、苦しめたその罪は。
「優人……ッ」
切なげに名を呼ぶ兄に口づける。深く深く。
舌を絡め、魂が溶け合うかのように。
「愛しているよ、兄さん」
「俺も」
──もう、何処へも行かせはしない。
この腕の中で、俺だけ見ていればいい。
彼自身に指を絡め上下すれば、兄はあっけなく熱を放った。
優人はその鈴口から愛液が迸るのを眺めながら、なんと愛しいのだろうと思っていたのだった。
遠江と言う男は、兄の意思を感じながらもその欲望に従わなかった。
そこに愛を感じなかったからだろう。
阿貴を愛人とは言っているが、身体の関係があるようには思えない。ならば彼が阿貴に協力する本当の狙いはなんなのだろうか?
優人は冷蔵庫の前で、そんなことを思った。
彼に協力するのは、約束だったから。
しかし今は、同じ敵がいるからだという考えに変わりつつある。
恐らく阿貴のことを調べれば、沸き起こるのは憎しみだけではないに違いない。
冷蔵庫の扉を開けると、水の入ったペットボトルを取り出した。
平田と言う友人はとても几帳面で綺麗好きだ。ライフスタイルも趣向もとても合うので一緒にいて楽。ルームシェアをして助かっていることはたくさんある。
優人は貯蔵庫となっている扉を開けると、一本取り出した代わりに冷えていないボトルを冷蔵庫に入れた。
思いやり。それは一緒に暮らすための暗黙のルール。
自室に戻ると、ベッドに半身を起こしている兄にペットボトルを手渡す。キャップを開けて。
「ありがとう。それと、ごめん」
「なんで謝るの?」
優人はベッドに腰かけると、手の中でキャップを転がす。
あれから二度、三度兄を達かせた。体力的なことなら問題はないが、ちゃんと食事をとらないと後で平田に怒られる。問題はそれだけだ。
「だって……あんな」
「俺もしたかったし、謝らないでよ」
兄、和宏の手が優人の背中に触れる。
まだ熱を持ったその手に、安らぎを感じながら自分の意思で物事を決めない自分にいら立ちを覚えた。
せめて兄に意思確認はすべきだったと。
平田はいつだって正しい。
けれど、万民に適応するとは限らない。
それなのに、嫌われるのが怖くて鵜呑みにし、兄を不安にさせた。助言を受けても、それをどう実行するのかは自己責任。
もちろん平田のせいなどとは思っていない。
──俺は、兄さんが好きすぎるんだ……。
卑猥な音を響かせながら、和宏は感じるままに声を漏らす。
それが優人を煽っているとも気づかずに。
「たまんない。気持ちいいの?」
問えばコクコクと頷く、兄。
彼の中に何度も穿ちながら、その体温を感じれば心が温まる。
「俺のがそんなにいいの?」
全てを独り占めして、その愛を感じていたいと願った。
「ちが……優人が良いの」
性交だけを求めているわけじゃない。
好きだから繋がりたいのだと伝えたい兄のその背中をぎゅっと抱きしめる。自分がどれほどまでに愛に飢えていたのか、訴えかけるように。
首に巻かれていたその腕。
彼の手は優人の後頭部を撫でる。愛しいというように。
自分を満たしてくれるのは、やはり兄だけなのだと思った。この先訪れるだろう一族内での争い。
きっと兄を巻き込んでしまうだろう。
正直伯父がどんな人なのか記憶になかった。容姿くらいは覚えているが。
何の問題もない、穏やかな家庭が世の中にどれくらいあるだろう。
小さな問題を乗り越えてどの家庭もやっているはずなのだ。例え妾の子であろうが、産まれてきた命に罪はない。
自分たちはそう思ったから阿貴を受け入れたのだ。
それが後悔だけ残したなどとは思いたくはない。
罪は伯父にある。
無責任なことをし、阿貴をあんな風にした罪が。
自分から兄を奪った阿貴は憎い。
しかしそうなった根源が伯父にあるなら、憎むべきは伯父だ。その罪は重い。兄を傷つけ、苦しめたその罪は。
「優人……ッ」
切なげに名を呼ぶ兄に口づける。深く深く。
舌を絡め、魂が溶け合うかのように。
「愛しているよ、兄さん」
「俺も」
──もう、何処へも行かせはしない。
この腕の中で、俺だけ見ていればいい。
彼自身に指を絡め上下すれば、兄はあっけなく熱を放った。
優人はその鈴口から愛液が迸るのを眺めながら、なんと愛しいのだろうと思っていたのだった。
遠江と言う男は、兄の意思を感じながらもその欲望に従わなかった。
そこに愛を感じなかったからだろう。
阿貴を愛人とは言っているが、身体の関係があるようには思えない。ならば彼が阿貴に協力する本当の狙いはなんなのだろうか?
優人は冷蔵庫の前で、そんなことを思った。
彼に協力するのは、約束だったから。
しかし今は、同じ敵がいるからだという考えに変わりつつある。
恐らく阿貴のことを調べれば、沸き起こるのは憎しみだけではないに違いない。
冷蔵庫の扉を開けると、水の入ったペットボトルを取り出した。
平田と言う友人はとても几帳面で綺麗好きだ。ライフスタイルも趣向もとても合うので一緒にいて楽。ルームシェアをして助かっていることはたくさんある。
優人は貯蔵庫となっている扉を開けると、一本取り出した代わりに冷えていないボトルを冷蔵庫に入れた。
思いやり。それは一緒に暮らすための暗黙のルール。
自室に戻ると、ベッドに半身を起こしている兄にペットボトルを手渡す。キャップを開けて。
「ありがとう。それと、ごめん」
「なんで謝るの?」
優人はベッドに腰かけると、手の中でキャップを転がす。
あれから二度、三度兄を達かせた。体力的なことなら問題はないが、ちゃんと食事をとらないと後で平田に怒られる。問題はそれだけだ。
「だって……あんな」
「俺もしたかったし、謝らないでよ」
兄、和宏の手が優人の背中に触れる。
まだ熱を持ったその手に、安らぎを感じながら自分の意思で物事を決めない自分にいら立ちを覚えた。
せめて兄に意思確認はすべきだったと。
平田はいつだって正しい。
けれど、万民に適応するとは限らない。
それなのに、嫌われるのが怖くて鵜呑みにし、兄を不安にさせた。助言を受けても、それをどう実行するのかは自己責任。
もちろん平田のせいなどとは思っていない。
──俺は、兄さんが好きすぎるんだ……。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる