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6──雛本一族の問題【実弟】

1 降りかかった災難と欲情【R】

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 優人は通話を切るとため息をついた。
「どうかしたのか?」
 同居人の平田彰浩ひらたあきひろがキッチンで紅茶を入れながら、優人に声をかける。
「いや、大丈夫。兄さんを起こしに行ってくる」
 平田は心配そうな顔をしていたが、食い下がることはなく軽く片手をあげただけだった。

 優人が部屋に向かうと兄は身体を起こしており……
「どうしたの⁈」
 ハラハラと頬を伝う涙に、優人は慌てる。
 彼の元へ駆け寄ると、近くにあったタオルを兄の頬にあてた。
「優人、俺……」
 彼は少し恥ずかしそうに布団をずらす。
 傍らには丸まったティッシュ。
「病気かもしれない。全然収まらないんだ」
 中学生じゃあるまいしと俯く兄が可愛い。
 
──平田は出かけるって言っていたっけ。

 優人は上着を脱ぐとソファーへかけ、シャツとズボンを取り払うと兄のベッドへもぐりこむ。
「優人?」
「ここ数日、してなかったし」
 兄がこの家に来てからは毎晩、愛の営みをしていたのだが、
『あんまり身体ばっか求めてると、フラれるぞ』
と平田に言われたので控えていたのだ。

「俺に飽きたのかと思った」
とぽつりと言う和宏。
 そんな彼に優人は、
「飽きるわけないでしょ」
と言って口づけるとベッドに押し倒す。
「毎日でもしたいくらいだけれど、身体辛いかなと思って」
 また泣きだしそうな顔をしている彼に覆いかぶさると、優しくその髪を撫でる。
「不安なの?」
「当たり前だろ、バカ……」
「俺の心が変わるとでも?」
 信頼されていないのは辛いが、不安から”したい”と言えない彼に萌えてしまっている自分がいるのは否めない。

「分からないだろ。そんなの……」
 そんなこと言わないでと言って再びその唇を塞ぐ。
 おずおずを舌を出し、ぎゅっと抱き着く彼が愛しい。
「不安になっちゃうくらい、俺のこと好き?」
 耳元で囁けば、彼の肌が色づく。
「なんでそんな意地悪な質問……」
 好きに決まってるだろと涙目で睨まれた。
 
──兄さんの感情が俺に向けられるたび、気が変になるそうなくらい嬉しい。

「んん……ッ」
 硬くなった彼のソコを舐めあげ、ジェルを蕾に塗りこめていく。
 指がゆっくりと出入りする度、気持ちよさそうな声をあげる和宏。
 兄と愛の行為を繰り返す度、彼に溺れていく自分がいた。

──中、熱い。

「ゆう……と……早く……中に欲しい」
「もっと慣らさないと」
「あ……やあ……ッ」
 後ろを指で犯しながら彼自身を強く扱きあげると、彼は甘い声と共に二度目の熱を放った。
 鈴口から放たれる愛液が彼の腹を汚す。
 とろりとしたそれを拭ってやると、
「俺ばっかり……やだ」
と言われてしまう。
 優人としては、兄の可愛い姿が見られるのは嬉しいのだが。

「そんな顔しないでよ」
「一緒に良くなりたいのに」
 濡れないそこを傷つけないように丁寧に前戯を施しているつもりだが、今日の彼は余裕がないようだ。
 潤んだ瞳、上気した頬に色づくその身体。
 全てがいとおしくなまめかしいが、それを上手く伝えることはできない。
 もどかしく思いながらも、優人は避妊具に手を伸ばす。
「繋がろうね、兄さん」
 あまり準備をしている姿は見られたくはない。
 彼の喉元に唇を寄せながら、手元を動かしていく。

 兄の欲情する姿は好きだが、自分がそうなるのはあまり好きではなかった。
 それはきっと罪の意識があるからだと思う。自分も阿貴と変わらないとは思いたくないのだ。
 避妊具の上からジェルを塗り込め、彼の両股りょうももに手をかける。
「好き」
 彼が優人の首に腕を絡めると、それを合図に彼の蕾に自分自身を押し当てる。
「愛してるよ、兄さん」
 ゆっくりと腰を進めながら、彼に口づけた。
「んんん……あ……ッ」
 くぷぷっと自分自身が彼の中に吸い込まれていく。
「感じて。俺のことだけを」
 兄の背中に腕を回し、その身体を優しく抱きしめる。密着した身体が熱を煽った。

『君に協力をして欲しいことがあるんだ』
 電話の男は先日の社長。遠江と名乗った。
 これから一族のもめ事に巻き込まれていくのだろう。
 そんなことを思いながらも優人は、兄との行為に夢中になっていったのだった。
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