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────1話*俺のものになってよ
7・君と一緒に居られるなら
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****side■塩田
電車の彼女と会うということは、つまり。品定めされるわけだ。
塩田はなんとも言えない気持ちになる。女に勝てる気はしなかった。
だが彼女を諦めさせることが出来たら、電車は自分のものになる。
葛藤がなかったわけではないが覚悟を決め、
「わかった」
と塩田は答えた。
でももし、彼の気持ちが変わってしまったら? 不安でしかない。
彼女から自分に心変わりしたのだから、あり得ない話ではない。
「塩田」
「っ」
電車に優しく抱き締められて、その腕に手を添える。はっきりと彼を失いたくないと感じた。
──俺、なんでこんなにコイツのこと好きなんだろう?
「まだ、怒ってる?」
「いや」
「じゃあ、イチャイチャしよ?」
返事をする前に唇を奪われ、シャツを捲し上げられる。彼の手が脇腹を這う。
「そんなこと言って、また……」
そこで昨夜のことが頭を過り、文句を言いそうになって黙る。
昨日一人で彼の手に擦り付けてイッた記憶がよみがえり、切なくなった。
──一緒にしたかった。
して欲しかったのに……お前、寝るし。
悪気があったわけじゃないのはわかっている。だから責めることはできない。でも、どうにもならない気持ちの行き場がない。
「また?」
と不思議そうに問う彼。
きっと覚えてなんていないのだ。
それがまた塩田を切なくさせる。
──寂しかった。悲しかった?
違う……恋しかったんだ。
「なんでもない」
記憶のない相手に何を言えというのだろう?
責めたとことで覚えていないというのに。
そう思うと、言うことが出来ないでいる。
だが電車は優しかった。
「言ってくれなきゃ、わからないよ。……ううん、塩田のこと解りたいからちゃんと、教えて」
何度も口づけをくれる。こんなことは、初めてだった。
「しよっていうから、その気で居たのに……お前途中で寝た」
言葉にすると、やはり恨み言だ。
「……ごめん」
と罰の悪そうな彼。
「期待、ばっかさせるなよ」
塩田は彼にぎゅっと抱きついて。
──コイツは俺のものだ。
誰にもやらねえ。
「期待、したんだ?」
と意外そうな表情をされ、
「そりゃ、するだろ」
と眉を寄せた塩田。
何故か可愛いといって、髪にキスをされる。
「エッチ、好きになっちゃったの?」
──そんなわけあるか!
しかも何故、不安そうなんだよ。
お前が俺にあんなこと覚えさせたくせに。
理不尽だなと思いながらも、
「違う……お前としたいだけ」
と塩田が否定すると、彼が凄く優しい顔をした。
とても嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべて。
──その顔は反則だろ。
電車の彼女と会うということは、つまり。品定めされるわけだ。
塩田はなんとも言えない気持ちになる。女に勝てる気はしなかった。
だが彼女を諦めさせることが出来たら、電車は自分のものになる。
葛藤がなかったわけではないが覚悟を決め、
「わかった」
と塩田は答えた。
でももし、彼の気持ちが変わってしまったら? 不安でしかない。
彼女から自分に心変わりしたのだから、あり得ない話ではない。
「塩田」
「っ」
電車に優しく抱き締められて、その腕に手を添える。はっきりと彼を失いたくないと感じた。
──俺、なんでこんなにコイツのこと好きなんだろう?
「まだ、怒ってる?」
「いや」
「じゃあ、イチャイチャしよ?」
返事をする前に唇を奪われ、シャツを捲し上げられる。彼の手が脇腹を這う。
「そんなこと言って、また……」
そこで昨夜のことが頭を過り、文句を言いそうになって黙る。
昨日一人で彼の手に擦り付けてイッた記憶がよみがえり、切なくなった。
──一緒にしたかった。
して欲しかったのに……お前、寝るし。
悪気があったわけじゃないのはわかっている。だから責めることはできない。でも、どうにもならない気持ちの行き場がない。
「また?」
と不思議そうに問う彼。
きっと覚えてなんていないのだ。
それがまた塩田を切なくさせる。
──寂しかった。悲しかった?
違う……恋しかったんだ。
「なんでもない」
記憶のない相手に何を言えというのだろう?
責めたとことで覚えていないというのに。
そう思うと、言うことが出来ないでいる。
だが電車は優しかった。
「言ってくれなきゃ、わからないよ。……ううん、塩田のこと解りたいからちゃんと、教えて」
何度も口づけをくれる。こんなことは、初めてだった。
「しよっていうから、その気で居たのに……お前途中で寝た」
言葉にすると、やはり恨み言だ。
「……ごめん」
と罰の悪そうな彼。
「期待、ばっかさせるなよ」
塩田は彼にぎゅっと抱きついて。
──コイツは俺のものだ。
誰にもやらねえ。
「期待、したんだ?」
と意外そうな表情をされ、
「そりゃ、するだろ」
と眉を寄せた塩田。
何故か可愛いといって、髪にキスをされる。
「エッチ、好きになっちゃったの?」
──そんなわけあるか!
しかも何故、不安そうなんだよ。
お前が俺にあんなこと覚えさせたくせに。
理不尽だなと思いながらも、
「違う……お前としたいだけ」
と塩田が否定すると、彼が凄く優しい顔をした。
とても嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべて。
──その顔は反則だろ。
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