上 下
24 / 218
────0話*出会いと恋

20・気づくのが遅すぎた、本音【R】

しおりを挟む
****side■塩田

電車でんまって彼女いるみたいよ』
『は?』

 バカだから傷つくのだろうか?
 信じたから傷つくのだろうか?

『さっき廊下で電話してたよ』

 それとも、信じないから傷ついたのか?
 どうして自信を持って“嘘だ”って言えない?

『塩田、好きだよ』

──あの言葉に嘘なんて感じなかったのに。
 抱き締めるその腕に熱を感じたのに。
 何故自分に自信が持てないのだろう。

 塩田は他人から言われた言葉に翻弄され、自信喪失していた。
 いつもならば、誰に何を言われようとも我が道を行き、自分の目で確かめない限り簡単に他人を信用したりはしないのに。
 それほどまでに電車紀夫が自分の中で大きな存在になってしまっているとでも言うのだろうか?

 好きだと言われ、その言葉を信じ。
 彼に全てを開いた。
 これが初めての恋愛だというのなら、それもいいかもしれないとすら思った。だが今の自分は自信はおろか、彼のことが信じられなくなっている。
 本人に確かめてすらいないのに。

 項垂れているうちに連れ込まれた仮眠室で、抵抗むなしく組伏せられたのは、諦めが勝っていたからなのだろう。やめろと言っても意味はなかった。触られたくないのに、加えられて行く愛撫に吐き気がする。
 アイツ以外は嫌だ、初めてそう思った。
 
──泣きたい。
 どうしてアイツはここに居ないのだろう?
 俺はここに居るのに……。

 電車のことを考えていると、嫌な会話が耳に入ってくる。
「お前、舐めろよ」
「えー、立たなかったらどうすんのよ。プライド傷つくからイヤ」
 自分を仮眠室に連れ込んだ企画部の男女の会話に、塩田は青ざめた。
 しかもがっちり押さえられて、逃げられない。
「しょうがないな。手でするか」
「やめろ……っ」
「それとも後ろがいいのか?」
「どっちもイヤだ」
 強く拒否すると男は嬉しそうに笑った。そしてどこかへ電話をかけ始める。
「ああ、そうだ。持ってるだろ?」
 電話の相手も男性のようだ。塩田の背中を、嫌な汗が駆け抜けた。
「……は? 利点? ……お前にもヤらせてやるよ」
 ”なあ、塩田”と耳元で囁かれ、鳥肌が立つ。

──俺を輪姦する気なのか?
 正気か? こいつら。

「も……触るな」
「なんで、気持ちいいだろ?」
 塩田自身を握りこみ立たせようとする、彼の腕を掴む。
「やめ……」
「なんだよ、目に涙溜めて。可愛いところあるじゃん」
 逃れようとしたら体重をかけられる。
 諦めかけていたところに、仮眠室のドアが開いた。

──課長……?

 助けが来たのだと塩田は少しホッとする。
 それが更なる地獄の始まりだとは知らずに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン
ファンタジー
第一巻が発売されました! レンタル実装されました。 初めて読もうとしてくれている方、読み返そうとしてくれている方、大変お待たせ致しました。 書籍化にあたり、内容に一部齟齬が生じておりますことをご了承ください。 改題で〝で〟が取れたとお知らせしましたが、さらに改題となりました。 〝で〟は抜かれたまま、〝お詫びチートで〟と〝転生幼女は〟が入れ替わっております。 初期:【お詫びチートで転生幼女は異世界でごーいんぐまいうぇい】 ↓ 旧:【お詫びチートで転生幼女は異世界ごーいんぐまいうぇい】 ↓ 最新:【転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい】 読者の皆様、混乱させてしまい大変申し訳ありません。 ✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - - ――神様達の見栄の張り合いに巻き込まれて異世界へ  どっちが仕事出来るとかどうでもいい!  お詫びにいっぱいチートを貰ってオタクの夢溢れる異世界で楽しむことに。  グータラ三十路干物女から幼女へ転生。  だが目覚めた時状況がおかしい!。  神に会ったなんて記憶はないし、場所は……「森!?」  記憶を取り戻しチート使いつつ権力は拒否!(希望)  過保護な周りに見守られ、お世話されたりしてあげたり……  自ら面倒事に突っ込んでいったり、巻き込まれたり、流されたりといろいろやらかしつつも我が道をひた走る!  異世界で好きに生きていいと神様達から言質ももらい、冒険者を楽しみながらごーいんぐまいうぇい! ____________________ 1/6 hotに取り上げて頂きました! ありがとうございます! *お知らせは近況ボードにて。 *第一部完結済み。 異世界あるあるのよく有るチート物です。 携帯で書いていて、作者も携帯でヨコ読みで見ているため、改行など読みやすくするために頻繁に使っています。 逆に読みにくかったらごめんなさい。 ストーリーはゆっくりめです。 温かい目で見守っていただけると嬉しいです。

憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!

藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。 クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。 初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。 そして、勢いで体を重ねてしまう。 それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。 このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。 ※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。 ※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け ※毎日更新・午後8時投稿・全32話

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

夫に隠し子がいました〜彼が選んだのは私じゃなかった〜

白山さくら
恋愛
「ずっと黙っていたが、俺には子供が2人いるんだ。上の子が病気でどうしても支えてあげたいから君とは別れたい」

公開凌辱される話まとめ

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 ・性奴隷を飼う街 元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。 ・玩具でアナルを焦らされる話 猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。

ゲイ男優育成所

かば
BL
権田剛のゲイ男優育成物語 ただのエロオンリー

私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~

安奈
恋愛
「マリア、私との婚約はなかったことにしてくれ。私はお前の姉のユリカと婚約したのでな」 「マリア、そういうことだから。ごめんなさいね」 伯爵令嬢マリア・テオドアは婚約者のカンザス、姉のユリカの両方に裏切られた。突然の婚約破棄も含めて彼女は泣き崩れる。今後、屋敷でどんな顔をすればいいのかわからない……。 そこへ現れたのはなんと、王国の最高権力者であるヨハン・クラウド国王陛下であった。彼の救済を受け、マリアは元気づけられていく。そして、側室という話も出て来て……どうやらマリアの人生は幸せな方向へと進みそうだ。

処理中です...