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────2話*俺のものでしょ?
19・馬鹿な自分が怒らせたのは
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****♡Side・塩田
────翌日、苦情係にて。
──はあ……。
喧嘩なんてしたくなかったのに。
『塩田。機嫌、直してよ』
彼は折れてくれたのに意地を張ったのは自分。拗ねて先にベットに潜り込み、そっと彼のほうに目を向けると、涙を拭う姿が目に入りとても後悔した。すぐに謝れば良かったのに、何も言えないまま。
いつもだったら傍で会話の機会を作ってくれる彼は、PCのモニターに向かったままこちらを見ようともしない。どうしていいのかわからず、塩田は再び雑誌に目を落とした。
「どうした?」
いつの間にか傍にいた皇が心配そうに話しかけてくる。今ばかりは、天使に見えた。
自分は人づきあいが苦手だが、副社長ともなれば人づきあいも多いだろう。婚約者がいるのだから、喧嘩の一度や二度経験あるはずだ。すがるように見上げると、皇は驚いたように目を見開いた。
「おいで」
皇には頼りたくない。いや、頼ってはいけないと分かっているのに、自分は彼に腕を引かれるままついて行ってしまったのだ。
──俺は、なんて馬鹿なんだろう。
****♡Side・電車
「!」
塩田にどう話しかけて良いのかわからないまま、仕事に没頭していて。
気づいたら、苦情係に彼はいなかった。頬杖をつき、何故か呆れ顔でこちらをじっと見ている唯野と目が合う。
「塩田は?」
「副社長と、どっか行ったよ」
と、唯野。
何故かため息交じりに。
──なんで?
だって塩田は……。
『塩田、おはよ』
『……』
挨拶は返してくれなかったけれど、怒っているようには見えなかった。彼から返事がなかったのは、何か言いたかったのを言わせてあげることが出来なかったからだと。普通に振舞ってしまったのが、いけなかったのだろうと思っていた。
仲直りしたいのに、何をしてあげたらいいのかわからないまま。
──俺は、どうしたら理解してあげられるんだろう。
どうしてあげたら良かったの?
電車は唇を噛みしめ俯く。塩田はあんなに頑張ってくれているのに、自分は一体何をしてあげられていたのだろう、と泣きたくなった。
『副社長とのほうが恋人っぽいって』
塩田はきっとすごく傷ついていたはずだ。
『お前のノリが悪いからいけないんだ』
俺は……。
答えが出かかった時、スマホの着信が鳴る。塩田の名前が出ているが、嫌な予感しかしない。慌てて椅子から立ち上がると苦情係を出、商品部を通り廊下に出た。
「はい」
相手が塩田じゃないことくらい勘づいている。
『嫌だッ……やめろ』
最初に聞こえて来たのは、塩田の声。
『お前、ほんとムカつくんだよ』
続いて皇の声だった。それは、自分に向かってかけられている言葉。
『紀夫、紀夫って。塩田のことわかってやれないくせに! それでもお前のことが好きでたまらないんだってよ。馬鹿じゃないのか』
皇が何故、怒っているのか見当もつかない。
『だったら、力づくで奪ってやるから』
「は?」
電車が何か言い返す前に通話が切れる。
──全然展開が読めないんですけど⁈
何がどうなってこうなっているのかわからず、パニックだ。しかし、塩田が危険なことは理解した。
「くそっ」
電車は自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしつつも、彼らを探すことにしたのだった。
────翌日、苦情係にて。
──はあ……。
喧嘩なんてしたくなかったのに。
『塩田。機嫌、直してよ』
彼は折れてくれたのに意地を張ったのは自分。拗ねて先にベットに潜り込み、そっと彼のほうに目を向けると、涙を拭う姿が目に入りとても後悔した。すぐに謝れば良かったのに、何も言えないまま。
いつもだったら傍で会話の機会を作ってくれる彼は、PCのモニターに向かったままこちらを見ようともしない。どうしていいのかわからず、塩田は再び雑誌に目を落とした。
「どうした?」
いつの間にか傍にいた皇が心配そうに話しかけてくる。今ばかりは、天使に見えた。
自分は人づきあいが苦手だが、副社長ともなれば人づきあいも多いだろう。婚約者がいるのだから、喧嘩の一度や二度経験あるはずだ。すがるように見上げると、皇は驚いたように目を見開いた。
「おいで」
皇には頼りたくない。いや、頼ってはいけないと分かっているのに、自分は彼に腕を引かれるままついて行ってしまったのだ。
──俺は、なんて馬鹿なんだろう。
****♡Side・電車
「!」
塩田にどう話しかけて良いのかわからないまま、仕事に没頭していて。
気づいたら、苦情係に彼はいなかった。頬杖をつき、何故か呆れ顔でこちらをじっと見ている唯野と目が合う。
「塩田は?」
「副社長と、どっか行ったよ」
と、唯野。
何故かため息交じりに。
──なんで?
だって塩田は……。
『塩田、おはよ』
『……』
挨拶は返してくれなかったけれど、怒っているようには見えなかった。彼から返事がなかったのは、何か言いたかったのを言わせてあげることが出来なかったからだと。普通に振舞ってしまったのが、いけなかったのだろうと思っていた。
仲直りしたいのに、何をしてあげたらいいのかわからないまま。
──俺は、どうしたら理解してあげられるんだろう。
どうしてあげたら良かったの?
電車は唇を噛みしめ俯く。塩田はあんなに頑張ってくれているのに、自分は一体何をしてあげられていたのだろう、と泣きたくなった。
『副社長とのほうが恋人っぽいって』
塩田はきっとすごく傷ついていたはずだ。
『お前のノリが悪いからいけないんだ』
俺は……。
答えが出かかった時、スマホの着信が鳴る。塩田の名前が出ているが、嫌な予感しかしない。慌てて椅子から立ち上がると苦情係を出、商品部を通り廊下に出た。
「はい」
相手が塩田じゃないことくらい勘づいている。
『嫌だッ……やめろ』
最初に聞こえて来たのは、塩田の声。
『お前、ほんとムカつくんだよ』
続いて皇の声だった。それは、自分に向かってかけられている言葉。
『紀夫、紀夫って。塩田のことわかってやれないくせに! それでもお前のことが好きでたまらないんだってよ。馬鹿じゃないのか』
皇が何故、怒っているのか見当もつかない。
『だったら、力づくで奪ってやるから』
「は?」
電車が何か言い返す前に通話が切れる。
──全然展開が読めないんですけど⁈
何がどうなってこうなっているのかわからず、パニックだ。しかし、塩田が危険なことは理解した。
「くそっ」
電車は自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしつつも、彼らを探すことにしたのだった。
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