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────2話*俺のものでしょ?

12・アイツと自分との違いとは

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****♡Side・副社長(皇)

「塩田のどこが好きなんだ?」
 先程のことを忘れようと皇が運転に集中していると、黒岩が突然そんな質問をするのでむせそうになった。
 赤信号でブレーキを踏み、
「なんだよ、突然」
と抗議する。
 助手席の彼は、
「どこに惚れたんかなって、素朴な疑問」
と、ふざけているわけではなさそうだ。
 しかし、
「何故俺様が、お前と恋バナなんぞしなきゃならん。女子高生じゃあるまいし」
と皇は不満を漏らした。
 信号が青に変わり皇はアクセルを踏み込む、道路は空いていた。彼の自宅は会社から三つほど先の駅に近いとのこと。

「教えてくれたっていいだろ」
と何故か彼は食い下がった。
 なんなんだと思いながらも仕方なく、
「一途なとこ」
と答えると、
「嫌味か?」
と返ってくる。
 皇はため息を漏らした。子供っぽい考えに呆れて、である。
「塩田はアイツと付き合いはじめて変わっただろ。恋愛雑誌なんか読むようになったし」
「そりゃ、相手が電車でんまだからだろ」
 皇がどういう意味だ、と思っていると、
「アイツ、肉食系だが慎重派みたいだしな」
と彼は続ける。
「あれだけ塩田の家に居着いてんのに、手出さないんだからさ」

 確かに電車は、自分が塩田と無理矢理肉体関係になろうとしたから便乗したのであって、自分から塩田に迫ったわけではない。もし自分があの時、彼にチャンスを与えなければ、未だ付き合っていたのかさえわからない。
 ただ、アイツはしたたかで計算高い男だ。可愛い見た目に反して。
「それと、塩田が変わったのは相手が電車だからであって、皇と付き合っていたら変わらなかったと思うぞ」
「それはどういう意味だ」
 彼の言葉に、皇はムッとする。まるで、アイツだから塩田は一途なんだと言われているように感じたからだ。

「アイツは強引そうに見えて、塩田に対しては臆病で弱気だからだよ。皇なら、ぐいぐい引っ張っていくだろ?」
 そう説明されると皇も納得した。確かに、一理ある。
「誘ってくれないなら、自分からいくしかないだろ。塩田はそう考えたんじゃないのか?」
 先に身体の関係から始まったものの、なんだかんだで自然といつも一緒にいた二人。塩田は恋を知らなかったから、好きという気持ちに気づかなかっただけで、既に電車のことは好きだったのかもしれない。
 自分が与えてしまったきっかけで、彼らは恋人同士になってしまった。しかし皮肉なことに、そのことがあったから、皇もまた恋を知ったのだ。

 塩田が恋を知らないままだったら自分もまた、彼に恋することがなかった。なんて皮肉なことなんだろう。

「皇には、俺みたいなタイプの方が合うと思うがな」
「さりげなく、不倫を勧めるなッ」

──なんてやつだ! まったく。
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