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────2話*俺のものでしょ?
0・お前のモノなんだろ?
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****♡Side・電車
「ねえ、塩田」
電車は先ほどから、ポケットの中の小さなアクセサリー箱を指先で弄んでいた。塩田は、料理に口をつけない電車を怪訝そうに見つめている。その目は”せっかくの料理が冷めるよ”と抗議しているように見えた。
「ん?」
それでも不機嫌さを声に出さないのは、彼にしては珍しい。
──怒らせる前になんとかしないと。
でも、受け取ってくれなかったら?
彼が恋愛雑誌を眺めるのは、”恋人らしいことがしたい”という意思表示のように感じていたのだが、ここへきて何か違うと思い始めている。何がどう違うのか説明はできないが、違和感があるのだ。
「何故、そんな顔してるんだ?」
上手く言葉を発することが出来ない電車に、彼は手を伸ばし頬に触れる。電車は自分がどんな表情をしているのか、わからなかった。
「どんな顔?」
彼に問えば、
「今にも泣き出しそうな顔」
と言われる。確かに泣きたい気分だ。
「ごめんな、俺……」
そして、何故か彼が謝罪の言葉を述べる。
「せっかくお前が素敵な場所を用意してくれたのに、反応薄くて」
確かに彼は、大げさに喜ぶようなことはなかった。
『綺麗だな』
夜景を見つめ、呟くように溢した時の彼の表情は穏やかで。電車には十分すぎる反応だった。
「もっとリアクションが大げさくらいな人が、お前には合うのかもな」
彼の切なげな瞳。電車は”別れよう”と言われるのかと恐怖を感じ、思わず頬に触れている方の彼の腕を掴む。
「でも、ごめん。別れてなんてやらないから」
予想外の言葉に電車が目を見開くと、向かい側の彼は身を乗り出して口づけをくれた。
「塩田……」
「ありがとな。俺の為に」
礼を述べる彼に、再び違和感。
「冷めるから、食べよう? 楽しみにしてたんだろ?」
そこで違和感の正体に気づく。
──そっか……。
俺はなんて馬鹿なんだろう?
塩田は”恋人らしいことがしたい”んじゃない。
俺に”恋人らしいことをしてあげたい”って思ってるんだ。
「なんで、泣くんだよ」
彼を理解した時、涙が零れた。困惑している彼に一所懸命、笑顔になってみせる。
「感動して」
「は?」
”今のどこに感動する流れがあったんだ?”という表情をする彼に、思いっ切って渡したかったモノを差し出す。
「塩田、これつけて。俺のモノの証」
「なんだ、首輪か?」
と眉を寄せる彼。
”どういう発想だよ!”とツッコミを入れたくなったが、彼に向けてパカッとアクセサリー箱を開けてみせる。
「指輪?」
「そう、ペアリング」
「へえ」
必死な電車に彼は、優しい笑みを浮かべた。そしてこちらに向け、左手を差し出す。
「え? いいの?」
予想外の展開に戸惑うのは、電車のほうだ。
「だって、俺。お前のモノなんだろ?」
と何故か彼は、嬉しそうな顔をしたのだった。
「ねえ、塩田」
電車は先ほどから、ポケットの中の小さなアクセサリー箱を指先で弄んでいた。塩田は、料理に口をつけない電車を怪訝そうに見つめている。その目は”せっかくの料理が冷めるよ”と抗議しているように見えた。
「ん?」
それでも不機嫌さを声に出さないのは、彼にしては珍しい。
──怒らせる前になんとかしないと。
でも、受け取ってくれなかったら?
彼が恋愛雑誌を眺めるのは、”恋人らしいことがしたい”という意思表示のように感じていたのだが、ここへきて何か違うと思い始めている。何がどう違うのか説明はできないが、違和感があるのだ。
「何故、そんな顔してるんだ?」
上手く言葉を発することが出来ない電車に、彼は手を伸ばし頬に触れる。電車は自分がどんな表情をしているのか、わからなかった。
「どんな顔?」
彼に問えば、
「今にも泣き出しそうな顔」
と言われる。確かに泣きたい気分だ。
「ごめんな、俺……」
そして、何故か彼が謝罪の言葉を述べる。
「せっかくお前が素敵な場所を用意してくれたのに、反応薄くて」
確かに彼は、大げさに喜ぶようなことはなかった。
『綺麗だな』
夜景を見つめ、呟くように溢した時の彼の表情は穏やかで。電車には十分すぎる反応だった。
「もっとリアクションが大げさくらいな人が、お前には合うのかもな」
彼の切なげな瞳。電車は”別れよう”と言われるのかと恐怖を感じ、思わず頬に触れている方の彼の腕を掴む。
「でも、ごめん。別れてなんてやらないから」
予想外の言葉に電車が目を見開くと、向かい側の彼は身を乗り出して口づけをくれた。
「塩田……」
「ありがとな。俺の為に」
礼を述べる彼に、再び違和感。
「冷めるから、食べよう? 楽しみにしてたんだろ?」
そこで違和感の正体に気づく。
──そっか……。
俺はなんて馬鹿なんだろう?
塩田は”恋人らしいことがしたい”んじゃない。
俺に”恋人らしいことをしてあげたい”って思ってるんだ。
「なんで、泣くんだよ」
彼を理解した時、涙が零れた。困惑している彼に一所懸命、笑顔になってみせる。
「感動して」
「は?」
”今のどこに感動する流れがあったんだ?”という表情をする彼に、思いっ切って渡したかったモノを差し出す。
「塩田、これつけて。俺のモノの証」
「なんだ、首輪か?」
と眉を寄せる彼。
”どういう発想だよ!”とツッコミを入れたくなったが、彼に向けてパカッとアクセサリー箱を開けてみせる。
「指輪?」
「そう、ペアリング」
「へえ」
必死な電車に彼は、優しい笑みを浮かべた。そしてこちらに向け、左手を差し出す。
「え? いいの?」
予想外の展開に戸惑うのは、電車のほうだ。
「だって、俺。お前のモノなんだろ?」
と何故か彼は、嬉しそうな顔をしたのだった。
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