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2章『二人で探る幸せの場所』

22:自業自得【微R】

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****♡Side・塩田

 正直、以前の自分なら『結婚』という言葉すら思い浮かばなかったはずだ。
 ”皇優一”という恋人ができて、いろんな変化があったと思う。
 そもそも他人の不安は他人のモノだという考え方の塩田にとって、その不安を拭い去りたいと思うこと自体が異例。
 その手段として『結婚』という結論に至ったのは、相手が彼だからなのだろうか?

──なんで不安になるのか、理解しがたいが。
 そんなに俺は信用がないのか?

 胸の突起に舌を這わせただけで、びくびくと身体を震わせる皇が可愛いと思う。
「これだけでイケちゃうんじゃないのか?」
 指先で転がしながらそんな風に言えば、
「そんなわけないだろ」
と潤んだ瞳をこちらに向ける皇。
 そんな彼の瞳をじっと見つめる。強気なところが可愛いのだ。
 疑っていると思われたのか、
「意地悪いやだって言ってるじゃないか」
と彼。
 そんなつもりはなかったのにそんなことを言われてしまい、困った塩田はその唇を自分の唇で塞いだ。
 
 柔らかい彼の唇の感触が心地よい。
 舌を絡め、指先を彼自身に伸ばす。十分に熱で形を持ったそれを握りこめば、ぎゅっと抱き着かれる。
「なあ、怒った? 意地悪するつもりはないんだが」
 耳元で囁く塩田に、
「怒った」
と彼。
「可愛い」
「バカにしてるんだろ」
 震える声。いつだって彼は”そう”だ。
 好きな人に大事にされたくて。
 その相手は塩田じゃないとダメなのだ。
「してないよ」
「嘘」
 なんでそんなことを言うかなと思いながら彼自身に指を絡め、上下する。
「んん……ッ」
「好きだよ」
 言って塩田は彼の首筋を吸い上げた。

「塩田」
「うん?」
「俺は塩田に優しくされたい。溺れるくらい」
「知ってる」
「だったら優しい奴とつき合えと言われても、塩田以外じゃ意味なんかない」
「わかってる」
 ”そんなことを言う気は更々ない”と告げて彼の耳たぶを噛む。
 自分の愛情表現はとても拙くて、彼を不安にさせてばかりなのだと再確認し泣きたくなった。

「それくらい塩田のことが好きなんだよ」
「うん」
 ”意地悪しないで。不安にさせないで”と彼は言う。
「泣くなよ、優一」
「だって」
 ぽろぽろと涙を零す彼に何度も口づける。
 小さなことで彼が不安に駆られるのは、自分の日ごろの行いのせいなのだ。それは自覚していることでもある。
 塩田が好きだと全身で告げる彼が可愛くて、愛しくて意地悪ばかりしてきた結果がここにあるのだ。反省したところで今更遅い。
「ごめん」
 何をしてあげたら彼は安心できるのだろう。
 なんの考えも浮かばず謝ることしかできない。

 少し年上の恋人にとっては、なかなか塩田が振り向いてくれなかったことが尾を引いている。いろんなことを理解し善処してきたつもりでいるが、払拭することなどできないのだと気づき塩田は落胆した。

 優しさとはなんだろう。
 きっと薄っぺらな言葉が欲しいわけではない。
 思いやりを持って欲しいのだろうと思う。

 普段は優雅な振る舞いをする彼。それもまた皇の一面。
 尊大で自信に満ち、周りからの信頼も厚い。だがそれは副社長としての彼なのだ。
 恋人として接する彼は繊細で脆く、ロマンチストだ。
 触れたら壊れてしまいそうな彼に自分は意地悪ばかりしてきた。
 皇はいつだって真っ直ぐに『好き』をぶつけてくれていたのに。

「塩田……ッ」
「うん?」
 切なげな声。
「あッ……んんッ」
 考え事をしながらも手を止めなかった塩田の腕に触れる彼の指先。それは絶頂が近いことを教えてくれているのだ。
ってもいいよ」
「やあッ……後ろ……して」
 切羽詰まったお願いになんだか嬉しくなってしまう。それは一緒にきたいという意味なのだろうから。
「ココ、辛くない?」
 今、自分にできる精一杯の優しさ。
「一緒がいいよ」
「うん」
「塩田が好きだから」
 可愛いことを言うなあと思いながらその頬を撫でる。

「優一」
「うん?」
「俺、努力するから。だからずっと傍に居てよ」
 ”俺だけの傍に”そう塩田が告げると、彼は驚いた顔をしたのち嬉しそうに笑ったのだった。
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