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2章『二人で探る幸せの場所』
20:なんだよ?
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****♡Side・塩田
優しく微笑んだつもりであったが、皇が予想以上に動揺するので塩田は怪訝そうに眉を潜めた。
間違った選択をしたつもりはない。
喜んでくれるんじゃないかと思ったのに、この展開は想定外。
「なんだよ、嫌なのか?」
流石の塩田も不安になってくる。
「嫌じゃない。嬉しくて死にそう」
両手で顔を覆い、真っ赤になっている彼。
「いや、死ぬなよ」
「夢じゃないよね? やっぱり嘘とか言わない?」
「言わない」
眉を寄せていた塩田は真顔で彼を見つめる。
「好き」
皇が抱きしめてというように両腕を伸ばす。塩田は望まれるままに彼を抱きしめた。
彼に逢うまで恋などしたことがなかった。
好きだと言われても初めは冗談だと思っていたのだ。そもそも自分には他人から好かれるような要素はないのだから。
けれどあの日、心は動いた。
そしていつの間にか色の無かった日常をカラフルに彩っていったのだ、彼は。
恋をした。
愛を知った。
嫉妬もした。
独占欲が湧いた。
そして幸せが何かを理解した。
この先もずっと一緒に居られたらきっと幸せだろうと思う。もちろん苦労もするだろうが。
それでもいいと思う自分がいる。
恋愛も結婚も縁遠かった自分に恋人ができてプロポーズすることになるなんて想像もしなかったが。
「愛してるよ」
皇の耳元で囁いて再び腰を進める。
この腕の中の彼が幸せならいいなと思いながら。
声にならない声を漏らしながら皇がぎゅっと塩田に抱き着く。
その夜はただ心に従い互いを求め続けた。
ぐったりとベッドに突っ伏す皇の背中を撫でながら塩田はベッドのわきに置かれているテーブルに手を伸ばす。
成人すれば婚姻に親の許可は要らない。そんなことは塩田も知ってはいる。しかし報告はすべきだと思った。
今まで何をしようとも賛成をしたことのない両親だ。こんな報告したら反対されるに決まっている。だが反対されたところで自分の意思は変わらない。
「邪魔させるつもりはないが、な」
塩田は小さく呟いて実家に連絡を入れる。
時計を見上げると結構な時間ではあったが、きっと起きているに違いない。
メッセージで済ませても良いが後が面倒になりそうだ。
こうなることを見越して先日、おつき合いをしていることだけは言ってある。
案の定うるさかったが、相手が母のお気に入りの副社長ということでなんとか丸く収まったのだ。
数コールして電話口に出た母は塩田の簡単な報告を受け、いつものごとく反対するのかと思っていた。
しかし意外なことに、
『そうなの』
と穏やかな声で一言。
「反対しないのか?」
あまりにいつもと反応が違うため驚いていると、
『この間言っていたじゃない。皇さんは以往ちゃんじゃなきゃダメなんだって。安心させてあげたいって』
今まで人の話なんか聞かなかった母がそんなことを言うなんて、と複雑な心境になる。
「そうだけど」
そこで母に、『変わったわね』と言われた。
変わったのはお互いさまではないのだろうか?
そんな風に思っていると、
『あの時、以往ちゃんが真剣なおつきあいしているってこと凄く伝わってきたの。もう反対はしないわ』
”けれど”と母は続ける。
『一度うちに帰って来なさいね、皇さんを連れて』
「わかった」
いつだって両親は塩田を子供扱いしてきた。なんだか拍子抜けしながら通話を切った塩田は、いつの間にか起きていた皇と目が合う。
「悪い。うるさかった?」
起こしてしまったのかと思い、謝罪の言葉を述べるが彼はニコッと微笑んだ。
「ううん」
身体を反転させ状態を起こす皇。塩田はそんな彼に上着を渡す。
それを受け取った彼は袖に腕を通しながら、
「お母さん?」
と問う。
塩田はその問に軽く頷く。途端に実感が湧いてドキリとした。
誰かと共に生きる未来。それはこれまでと違うのだろうか?
「一度帰って来いって」
「そっか。緊張するな」
違っても違わなくても。
塩田は彼の笑顔を守りたいと思ったのだった。
優しく微笑んだつもりであったが、皇が予想以上に動揺するので塩田は怪訝そうに眉を潜めた。
間違った選択をしたつもりはない。
喜んでくれるんじゃないかと思ったのに、この展開は想定外。
「なんだよ、嫌なのか?」
流石の塩田も不安になってくる。
「嫌じゃない。嬉しくて死にそう」
両手で顔を覆い、真っ赤になっている彼。
「いや、死ぬなよ」
「夢じゃないよね? やっぱり嘘とか言わない?」
「言わない」
眉を寄せていた塩田は真顔で彼を見つめる。
「好き」
皇が抱きしめてというように両腕を伸ばす。塩田は望まれるままに彼を抱きしめた。
彼に逢うまで恋などしたことがなかった。
好きだと言われても初めは冗談だと思っていたのだ。そもそも自分には他人から好かれるような要素はないのだから。
けれどあの日、心は動いた。
そしていつの間にか色の無かった日常をカラフルに彩っていったのだ、彼は。
恋をした。
愛を知った。
嫉妬もした。
独占欲が湧いた。
そして幸せが何かを理解した。
この先もずっと一緒に居られたらきっと幸せだろうと思う。もちろん苦労もするだろうが。
それでもいいと思う自分がいる。
恋愛も結婚も縁遠かった自分に恋人ができてプロポーズすることになるなんて想像もしなかったが。
「愛してるよ」
皇の耳元で囁いて再び腰を進める。
この腕の中の彼が幸せならいいなと思いながら。
声にならない声を漏らしながら皇がぎゅっと塩田に抱き着く。
その夜はただ心に従い互いを求め続けた。
ぐったりとベッドに突っ伏す皇の背中を撫でながら塩田はベッドのわきに置かれているテーブルに手を伸ばす。
成人すれば婚姻に親の許可は要らない。そんなことは塩田も知ってはいる。しかし報告はすべきだと思った。
今まで何をしようとも賛成をしたことのない両親だ。こんな報告したら反対されるに決まっている。だが反対されたところで自分の意思は変わらない。
「邪魔させるつもりはないが、な」
塩田は小さく呟いて実家に連絡を入れる。
時計を見上げると結構な時間ではあったが、きっと起きているに違いない。
メッセージで済ませても良いが後が面倒になりそうだ。
こうなることを見越して先日、おつき合いをしていることだけは言ってある。
案の定うるさかったが、相手が母のお気に入りの副社長ということでなんとか丸く収まったのだ。
数コールして電話口に出た母は塩田の簡単な報告を受け、いつものごとく反対するのかと思っていた。
しかし意外なことに、
『そうなの』
と穏やかな声で一言。
「反対しないのか?」
あまりにいつもと反応が違うため驚いていると、
『この間言っていたじゃない。皇さんは以往ちゃんじゃなきゃダメなんだって。安心させてあげたいって』
今まで人の話なんか聞かなかった母がそんなことを言うなんて、と複雑な心境になる。
「そうだけど」
そこで母に、『変わったわね』と言われた。
変わったのはお互いさまではないのだろうか?
そんな風に思っていると、
『あの時、以往ちゃんが真剣なおつきあいしているってこと凄く伝わってきたの。もう反対はしないわ』
”けれど”と母は続ける。
『一度うちに帰って来なさいね、皇さんを連れて』
「わかった」
いつだって両親は塩田を子供扱いしてきた。なんだか拍子抜けしながら通話を切った塩田は、いつの間にか起きていた皇と目が合う。
「悪い。うるさかった?」
起こしてしまったのかと思い、謝罪の言葉を述べるが彼はニコッと微笑んだ。
「ううん」
身体を反転させ状態を起こす皇。塩田はそんな彼に上着を渡す。
それを受け取った彼は袖に腕を通しながら、
「お母さん?」
と問う。
塩田はその問に軽く頷く。途端に実感が湧いてドキリとした。
誰かと共に生きる未来。それはこれまでと違うのだろうか?
「一度帰って来いって」
「そっか。緊張するな」
違っても違わなくても。
塩田は彼の笑顔を守りたいと思ったのだった。
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