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1章『いじめてあげる』

31:いつかね

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****♡Side・塩田

「まだ、拗ねてるのかよ」
 可愛いなと思いながら髪を乾かしてやるが、まだ膨れている。
「しょうがないな」
 ドライヤーのコンセントを抜き、浴室へ。指定の場所へ戻すと、リビングの一角にあるbarスペースへ。
「こっちに来いよ。夜景が良く見える」
 ソファーでムッとしていた彼がその言葉を聞き、やっとこっちを向く。
 塩田は冷蔵庫からワイングラスを二つ取り出すと、ワインセラーからよく冷えた白ワインを。ガラスの器に華麗な柄の描かれたナプキンを敷いて、ナッツを装う。
 手元にあるリモコンでライトを操作し、barスペースにある間接照明だけにすれば、間の前には大パノラマの夜景が広がる。

「どうぞ」
と、カウンターに腰かける皇にワイングラスを差し出すと、
「塩田、隣来てよ」
と、甘えた声を出す。
 どうやら、機嫌は直ったようだ。
「乾杯」
といって、二人は軽くグラスを掲げた。
「さっき、もっとイチャイチャしたかった」
と、皇。
「風呂場で?」
 塩田は別段ワインが好きというわけではない。こんな夜景にはお洒落にワインが喜ぶだろうと思い、チョイスしたまでだ。ビールは好きだが炭酸モノは二人とも好きではなく、スパークリングワインもシャンパンも眼中にはなかった。

「違う。レストランで」
「あれは……皇が目立つからだろ」
 彼の艶めく髪に触れる。皇の髪はベージュ系の金色。暖色系の間接照明に反射して、とても綺麗だ。
「塩田は俺のって……自慢したかった」
 目立ちたくないのは、彼も同じだったはずなのに。
「酔ってるのか?」
 ツツツと指先で頬に触れれば、その手を彼は掴み塩田の指をペロリと舐める。赤い舌が官能的だ。
「誘ってるのかよ」
「いっぱい、愛してくれるんでしょ?」
 二個上の恋人は時々、とても積極的で甘えん坊だ。
「人をその気にさせておいて、途中で寝るのとか無しだぞ」
「うん」

 塩田は彼の腰をぐいっと引き寄せると、その唇を塞ぐ。柔らかくて、甘い。舌唇をなぞるように舐め上げ歯を割れば、チロと舌を出す。
「塩田」
 とろんとした目をし両腕を伸ばす彼を抱きしめてやると、彼の身体は熱かった。きっと、お酒と興奮によるものであろう。
「ん?」
「いつか俺と、結婚してくれる?」
と、彼。塩田は口元だけで笑う。
「俺はそのつもりで付き合っているんだが、皇は違うのか?」
「え?」
 驚いた顔をする彼が、愛しい。
「俺は、なかなか人を好きにはなれない。皇と別れたら、きっと死ぬまで一人なんだろうなって思ってる」
 再び彼が、むぎゅっと塩田に抱きつき、
「じゃあ、俺がずーっと……傍にいてやるよ」
と、言う。
「それは楽しみだな」
 塩田は彼の背中を撫でると、そのシャツの中に手を差し入れたのだった。
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